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第十二部・パリ 編
心を癒やすメッセージ
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『どこか観光した?』
『してないよ。引きこもり。アプリで麻衣と会話しようと思ったけど、今は日本は真夜中だから残念! 大人しく漫画読んでる』
『分かった(笑)』
そこで一旦会話が終わると、香澄からあまり意味のない、キャラクターがせわしなく動いているスタンプが送られてくる。
なんとはなしにそれを眺めて微笑んでから、佑は弱音を零した。
『香澄』
『なに?』
『帰ったら抱かせて』
今までポンポンと会話ができていたのに、そこで変な間が空いてしまった。
(……嫌なのかな)
不安になった頃、ポンと音がして返事がくる。
『いいよ』
ホ……と息をつき、佑はさらに言葉を続ける。
『多分ひどくすると思う。滅茶苦茶に抱くと思う』
また間が空く。
けれど、先ほどより時間が空かなかった。
『いいよ』
ふぅ……と溜め息をつき、佑は背もたれに体を預け脱力する。
香澄の返事を待つだけで、緊張していたようだ。
『ありがとう』
それから何となく、トークルームを見たまま無言になる。
次にメッセージを送ってきたのは、香澄だった。
『大丈夫?』
――あぁ。
何気ない一言に、フッと心が軽くなる。
何も言わなくても香澄には気持ちが伝わっているのかもしれない。
「抱かせて」なんて言えば、何かあったから慰めてほしいと言っているようなものだ。
構ってちゃんみたいだが、それでも彼女に心配してもらえて嬉しかった。
『大丈夫』
『嘘だったらお仕置きだからね。ペンペン!』
香澄からのメッセージに思わず破顔し、ささくれた心が落ち着いていく。
機内では客室乗務員が夕食を出す準備をしていた。
『佑さんはご飯食べたの?』
『これから。もう少し離れた所に行くから、機内にいる』
そう打つと、てっきり『機内食写して送って』と食いしん坊の面を見せてくるのかと思っていた。
だが、香澄は少し不安そうになメッセージを送ってきた。
『どこまで? 本当に大丈夫なの?』
(……ああ、不安にさせてしまったな)
飛行機に乗っているなんて言わなければ良かった、と後悔する。
『ドイツまで。隣の国だからすぐ戻るよ』
『ドイツか。……なら良かった』
どうやら香澄はドイツに無条件の信頼があるようで、それも何だかな……と思って苦笑いする。
『ご飯しっかり食べてね? 私の事は気にしなくていいから』
『分かった』
ちょうど目の前には前菜が置かれたところだ。
あまり食欲がないながらも、香澄にここまで言われたのなら、ちゃんと食べなくてはと思った。
戦うには、エネルギーが必要だ。
『愛してるよ。いい子で待ってて』
最後にストレートな気持ちを書くと、香澄は照れてたのかメッセージは返さずスタンプを送ってきた。
けれどそれも、キャラクターが投げキッスをしている動くスタンプなので、嬉しくなって思わず微笑む。
『じゃあ、また』
一旦の終わりを告げると、香澄がキャラクターがサムズアップしているスタンプを送ってきた。
佑はアプリを閉じてスマホを置き、食事を始めた。
夜になっての訪問になるが、敬意を払う相手ではない。
こちらも忙しい身の上で、あちこち移動しているのだ。
会って言いたい事を言って、きちんと清算してから前に進む。
香澄とのメッセージ会話で元気づけられた佑は、まずワインを一口飲んだ。
**
『してないよ。引きこもり。アプリで麻衣と会話しようと思ったけど、今は日本は真夜中だから残念! 大人しく漫画読んでる』
『分かった(笑)』
そこで一旦会話が終わると、香澄からあまり意味のない、キャラクターがせわしなく動いているスタンプが送られてくる。
なんとはなしにそれを眺めて微笑んでから、佑は弱音を零した。
『香澄』
『なに?』
『帰ったら抱かせて』
今までポンポンと会話ができていたのに、そこで変な間が空いてしまった。
(……嫌なのかな)
不安になった頃、ポンと音がして返事がくる。
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『いいよ』
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『ありがとう』
それから何となく、トークルームを見たまま無言になる。
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何も言わなくても香澄には気持ちが伝わっているのかもしれない。
「抱かせて」なんて言えば、何かあったから慰めてほしいと言っているようなものだ。
構ってちゃんみたいだが、それでも彼女に心配してもらえて嬉しかった。
『大丈夫』
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だが、香澄は少し不安そうになメッセージを送ってきた。
『どこまで? 本当に大丈夫なの?』
(……ああ、不安にさせてしまったな)
飛行機に乗っているなんて言わなければ良かった、と後悔する。
『ドイツまで。隣の国だからすぐ戻るよ』
『ドイツか。……なら良かった』
どうやら香澄はドイツに無条件の信頼があるようで、それも何だかな……と思って苦笑いする。
『ご飯しっかり食べてね? 私の事は気にしなくていいから』
『分かった』
ちょうど目の前には前菜が置かれたところだ。
あまり食欲がないながらも、香澄にここまで言われたのなら、ちゃんと食べなくてはと思った。
戦うには、エネルギーが必要だ。
『愛してるよ。いい子で待ってて』
最後にストレートな気持ちを書くと、香澄は照れてたのかメッセージは返さずスタンプを送ってきた。
けれどそれも、キャラクターが投げキッスをしている動くスタンプなので、嬉しくなって思わず微笑む。
『じゃあ、また』
一旦の終わりを告げると、香澄がキャラクターがサムズアップしているスタンプを送ってきた。
佑はアプリを閉じてスマホを置き、食事を始めた。
夜になっての訪問になるが、敬意を払う相手ではない。
こちらも忙しい身の上で、あちこち移動しているのだ。
会って言いたい事を言って、きちんと清算してから前に進む。
香澄とのメッセージ会話で元気づけられた佑は、まずワインを一口飲んだ。
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