711 / 1,548
第十二部・パリ 編
俺はお前を一生許さない
しおりを挟む
――変わっていない。
――何も、反省していない。
十代の頃は感じのいい少女だと思っていたのに、心の底にある汚泥に気付けなかった。
表向き〝良家のお嬢様〟という完璧な仮面があったからこそ、隠し持っていた本性がさらに醜く感じる。
香澄のような純朴な女性に惹かれた佑には、エミリアの考えを理解する事ができない。
いっそ「すべてが嘘だったなら」と今になっても思う。
だがすべて現実だ。
佑は溜め息をつき、哀れなものを見る目でエミリアを見た。
『お前は自分が何をしたのか理解せず、己を女王だと思い込み、すべて望むままになると信じて一生を終えるのかもしれないな』
佑は涙を拭い、溜め息をつく。
『これから先、誰一人としてお前を救える者はいないだろう。諦めてガブリエルの貞淑な妻になれ。お前と縁談があったドイツの資産家も、〝結婚しなくて良かった〟と安堵していたよ』
〝結婚したくない地味な男〟にそう言われていたと知り、プライドを傷つけられたエミリアが、また激しく唸る。
『エミリア、お前は美しいよ。ただし、外見だけだ。そして自己中心的で、他者の痛みを理解しない、破滅的な愚か者だ。……どうして誰も、お前を矯正してやろうと思わなかったんだろうな。……それが哀れでならない』
「むごぉー……」
エミリアが哀れっぽい声を出す。
だが今さら同情する気持ちなどない。
ただ「たられば」の話をしただけだ。
『……俺はお前を一生許さない。万が一お前が改心しても、絶対に許さない。謝りに来ようなんて絶対に思うな。お前はこの屋敷から、二度と表に出るな』
最後にそう言って、佑は深く長い溜め息をつく。
『タスク、彼女の言い分でも聞くか?』
楽しそうなガブリエルの声に、佑は疲れ切った顔で首を横に振る。
ガブリエルは、妻が他者に責められているのを見るのが楽しいらしく、ニコニコしている。
彼はこれと決めた相手がとことん打ちのめされ、心を折られるさまを見るのが大好きだ。
ガブリエルは基本的に他者に無害だ。
その代わり、自分のパートナーには最も厳しい主となる。
今後エミリアがどうなるか知らないし、知ろうとも思わない。
ガブリエルに申し訳なさはあるが、他に手立てはない。
もっとエミリアをなじりたい気持ちはあるが、便器の中身に向かって「お前は汚い」と言っているようなものだ。
一人で熱くなるほど、空しさがこみ上げてくる。
佑は窓の外を見て、ゆっくり息を吸い、吐く。
『ここでエミリアの言葉が聞けたとしても、俺の怒りとやるせなさが増すだけです』
『残念だ。せっかく彼女の口の中を犯しているペニスギャグを見せてあげようと思ったのに』
マスクの中身は想像通りだったが、知るだけでも醜いと思った佑は、うんざりして首を左右に振る。
『正直、こんな気持ち悪いものは見たくありません。こんなグロテスクなものは、俺の美学に反します』
佑の言葉に怒ったのか、エミリアがまた唸る。
『そうか、残念だ。彼女は実の兄が好きなんだって? その人でも連れてきたら、彼女はもっと喜ぶのかな』
「むごぉおおっ!!」
ガブリエルの言葉を聞き、エミリアが渾身の力で暴れる。
『やめてください。この女のためではなく、彼が気の毒です。彼はこの女によってトラウマを負わされた。彼の友人として、この毒婦に二度と会わないでほしいと思っていますし、彼も望まないでしょう』
『ふぅん……。残念だな。まぁ、私は妻で遊べたらそれでいい。私たち夫婦に関係のない人を巻き込む事はないか』
ガブリエルは穏やかに微笑み、乗馬用の鞭を手に取った。
そしてエミリアの乳房に先端を当てたかと思うと、ピシッと鋭い音を立てて彼女を打った。
「むぅーっ!!」
エミリアがもがき、ガブリエルは爽やかに笑う。
『さて、ご褒美もあげたしまた客間に戻ろう。君には少し休憩が必要のようだし』
言われた通り、佑は疲れきっていた。
――何も、反省していない。
十代の頃は感じのいい少女だと思っていたのに、心の底にある汚泥に気付けなかった。
表向き〝良家のお嬢様〟という完璧な仮面があったからこそ、隠し持っていた本性がさらに醜く感じる。
香澄のような純朴な女性に惹かれた佑には、エミリアの考えを理解する事ができない。
いっそ「すべてが嘘だったなら」と今になっても思う。
だがすべて現実だ。
佑は溜め息をつき、哀れなものを見る目でエミリアを見た。
『お前は自分が何をしたのか理解せず、己を女王だと思い込み、すべて望むままになると信じて一生を終えるのかもしれないな』
佑は涙を拭い、溜め息をつく。
『これから先、誰一人としてお前を救える者はいないだろう。諦めてガブリエルの貞淑な妻になれ。お前と縁談があったドイツの資産家も、〝結婚しなくて良かった〟と安堵していたよ』
〝結婚したくない地味な男〟にそう言われていたと知り、プライドを傷つけられたエミリアが、また激しく唸る。
『エミリア、お前は美しいよ。ただし、外見だけだ。そして自己中心的で、他者の痛みを理解しない、破滅的な愚か者だ。……どうして誰も、お前を矯正してやろうと思わなかったんだろうな。……それが哀れでならない』
「むごぉー……」
エミリアが哀れっぽい声を出す。
だが今さら同情する気持ちなどない。
ただ「たられば」の話をしただけだ。
『……俺はお前を一生許さない。万が一お前が改心しても、絶対に許さない。謝りに来ようなんて絶対に思うな。お前はこの屋敷から、二度と表に出るな』
最後にそう言って、佑は深く長い溜め息をつく。
『タスク、彼女の言い分でも聞くか?』
楽しそうなガブリエルの声に、佑は疲れ切った顔で首を横に振る。
ガブリエルは、妻が他者に責められているのを見るのが楽しいらしく、ニコニコしている。
彼はこれと決めた相手がとことん打ちのめされ、心を折られるさまを見るのが大好きだ。
ガブリエルは基本的に他者に無害だ。
その代わり、自分のパートナーには最も厳しい主となる。
今後エミリアがどうなるか知らないし、知ろうとも思わない。
ガブリエルに申し訳なさはあるが、他に手立てはない。
もっとエミリアをなじりたい気持ちはあるが、便器の中身に向かって「お前は汚い」と言っているようなものだ。
一人で熱くなるほど、空しさがこみ上げてくる。
佑は窓の外を見て、ゆっくり息を吸い、吐く。
『ここでエミリアの言葉が聞けたとしても、俺の怒りとやるせなさが増すだけです』
『残念だ。せっかく彼女の口の中を犯しているペニスギャグを見せてあげようと思ったのに』
マスクの中身は想像通りだったが、知るだけでも醜いと思った佑は、うんざりして首を左右に振る。
『正直、こんな気持ち悪いものは見たくありません。こんなグロテスクなものは、俺の美学に反します』
佑の言葉に怒ったのか、エミリアがまた唸る。
『そうか、残念だ。彼女は実の兄が好きなんだって? その人でも連れてきたら、彼女はもっと喜ぶのかな』
「むごぉおおっ!!」
ガブリエルの言葉を聞き、エミリアが渾身の力で暴れる。
『やめてください。この女のためではなく、彼が気の毒です。彼はこの女によってトラウマを負わされた。彼の友人として、この毒婦に二度と会わないでほしいと思っていますし、彼も望まないでしょう』
『ふぅん……。残念だな。まぁ、私は妻で遊べたらそれでいい。私たち夫婦に関係のない人を巻き込む事はないか』
ガブリエルは穏やかに微笑み、乗馬用の鞭を手に取った。
そしてエミリアの乳房に先端を当てたかと思うと、ピシッと鋭い音を立てて彼女を打った。
「むぅーっ!!」
エミリアがもがき、ガブリエルは爽やかに笑う。
『さて、ご褒美もあげたしまた客間に戻ろう。君には少し休憩が必要のようだし』
言われた通り、佑は疲れきっていた。
22
お気に入りに追加
2,544
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる