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第十一部・スペイン 編
二の舞を演じないように
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「ううん、今回すぐじゃなくてもいいよ。スペインでフラメンコを見られるなら、それでいい」
「そうか?」
その気になれば当日券も取れるが、香澄と見るのなら、いい席で楽しみたいという欲もある。言ってしまえば男の見栄だ。
(失敗したな……。フランスは〝あれ〟の様子を見る事しか頭になくて、香澄と楽しむ事を失念していた)
〝あれ〟の事を考えると気が滅入る。
知らずと佑は香澄を抱き締め、そのまっすぐな髪を撫で、スウェットの中に手を入れてスベスベとした肌を楽しんでいた。
「香澄を吸わせて」
「んふふ、なにそれ」
「疲れた時に犬や猫を吸うんだろ? 社員が言ってた」
「いいよ。私も佑さんのこと吸うもんね」
言いながら、佑は昔、白金台の家で飼っていたアレックスという犬を思いだした。
何より可愛がった愛犬だったが、仕事が忙しくて寂しい思いをさせてしまった。
だから……と言えば言い訳になるが、ドッグラン代わりに庭に離し、円山たちや斎藤にも可愛がってもらっていた。
改めて思うと、散歩を含めあらゆる世話をできていないのに、必要な時だけ癒やされたいと思っていた自分は、犬を飼う資格がない。
勿論、時間のある時は一緒に散歩を楽しんだし、シャンプーをして、動物病院にも連れて行って、沢山撫でて可愛がった。
しかしアレックスは、佑が敷地内で犬を放し飼いにして飼っているらしいと知った何者かによって、殺されてしまった。
防犯カメラにはジョギングスタイルの黒い上下の服を着た者が映っていて、外から塀の内側に何かを投げ込んだのが映っていた。
結果、アレックスは毒物の混じった肉を食べ、死んでしまった。
まだ五歳の、綺麗なゴールデンレトリバーだ。
二十歳の頃に飼い始め、美智瑠と別れて一番荒れている時にアレックスは逝ってしまった。
警察に届けても類似の事件が多発している訳ではなく、犯人の足取りを掴む事ができなかった。
どれだけ大切に思っている家族の一員でも、ペットの死は器物損壊、動物愛護法違反。それぞれ最高刑が三年と二年だ。
悲しさが限界を超えて空しさを感じ、それ以来佑は決して動物を飼うものかと決めている。
腕にしっかり抱いた香澄の柔らかさを感じ、芳しい香りを吸い込み――彼女だけは絶対に失わない、手放さないと自分自身に誓った。
ベッドの上で寝転んでくっついていると、温もりもありウトウトしてしまう。
「香澄」
「ん?」
けれど名前を呼ばれ、香澄は目を瞬かせて彼を見た。
「で? さっきは何をしてた途中だったんだ?」
「う……」
うまくごまかせたと思ったのに、佑は忘れてくれていなかった。
(ど、どうやってごまかそう……)
香澄は冷や汗を垂らし、一生懸命考える。
しかし何をどうしても、ブラジャーのホックを外してお腹を出し、ズボンを半脱ぎ……の言い訳が思いつかない。
先ほどは「暑かったから」と苦し紛れに言ったけれど、笑みを湛えて尋ねてくる彼の様子を見れば、何をしたか分かって言っている。
何をどう言っても、ドツボに嵌まる。
ふつふつと冷や汗を掻き焦りに焦った香澄は、強硬手段に出る事にした。
「き……」
「き?」
「記憶を失えーっ!」
ガバッと起き上がり、香澄は枕を掴んでぎゅうぎゅうと佑の顔に押しつける。
「あはははは! そうきたか!」
佑はポンと片手で枕を押しのけ、強引に香澄を抱いてまた寝転んだ。
「ホントは一人でエッチな事してたんだろ? してるうちに気持ち良くなって寝てしまったとか?」
抱き締められ、スウェット越しに胸を揉まれる。
下肢もやはり布地越しに秘部を揉まれ、体温がカァーッと上がっていく。
「も、黙秘権を行使します……っ」
じゃれついているうちに、あっという間にスウェットを脱がされ、ブラジャーのホックも外されてしまう。
「そうか?」
その気になれば当日券も取れるが、香澄と見るのなら、いい席で楽しみたいという欲もある。言ってしまえば男の見栄だ。
(失敗したな……。フランスは〝あれ〟の様子を見る事しか頭になくて、香澄と楽しむ事を失念していた)
〝あれ〟の事を考えると気が滅入る。
知らずと佑は香澄を抱き締め、そのまっすぐな髪を撫で、スウェットの中に手を入れてスベスベとした肌を楽しんでいた。
「香澄を吸わせて」
「んふふ、なにそれ」
「疲れた時に犬や猫を吸うんだろ? 社員が言ってた」
「いいよ。私も佑さんのこと吸うもんね」
言いながら、佑は昔、白金台の家で飼っていたアレックスという犬を思いだした。
何より可愛がった愛犬だったが、仕事が忙しくて寂しい思いをさせてしまった。
だから……と言えば言い訳になるが、ドッグラン代わりに庭に離し、円山たちや斎藤にも可愛がってもらっていた。
改めて思うと、散歩を含めあらゆる世話をできていないのに、必要な時だけ癒やされたいと思っていた自分は、犬を飼う資格がない。
勿論、時間のある時は一緒に散歩を楽しんだし、シャンプーをして、動物病院にも連れて行って、沢山撫でて可愛がった。
しかしアレックスは、佑が敷地内で犬を放し飼いにして飼っているらしいと知った何者かによって、殺されてしまった。
防犯カメラにはジョギングスタイルの黒い上下の服を着た者が映っていて、外から塀の内側に何かを投げ込んだのが映っていた。
結果、アレックスは毒物の混じった肉を食べ、死んでしまった。
まだ五歳の、綺麗なゴールデンレトリバーだ。
二十歳の頃に飼い始め、美智瑠と別れて一番荒れている時にアレックスは逝ってしまった。
警察に届けても類似の事件が多発している訳ではなく、犯人の足取りを掴む事ができなかった。
どれだけ大切に思っている家族の一員でも、ペットの死は器物損壊、動物愛護法違反。それぞれ最高刑が三年と二年だ。
悲しさが限界を超えて空しさを感じ、それ以来佑は決して動物を飼うものかと決めている。
腕にしっかり抱いた香澄の柔らかさを感じ、芳しい香りを吸い込み――彼女だけは絶対に失わない、手放さないと自分自身に誓った。
ベッドの上で寝転んでくっついていると、温もりもありウトウトしてしまう。
「香澄」
「ん?」
けれど名前を呼ばれ、香澄は目を瞬かせて彼を見た。
「で? さっきは何をしてた途中だったんだ?」
「う……」
うまくごまかせたと思ったのに、佑は忘れてくれていなかった。
(ど、どうやってごまかそう……)
香澄は冷や汗を垂らし、一生懸命考える。
しかし何をどうしても、ブラジャーのホックを外してお腹を出し、ズボンを半脱ぎ……の言い訳が思いつかない。
先ほどは「暑かったから」と苦し紛れに言ったけれど、笑みを湛えて尋ねてくる彼の様子を見れば、何をしたか分かって言っている。
何をどう言っても、ドツボに嵌まる。
ふつふつと冷や汗を掻き焦りに焦った香澄は、強硬手段に出る事にした。
「き……」
「き?」
「記憶を失えーっ!」
ガバッと起き上がり、香澄は枕を掴んでぎゅうぎゅうと佑の顔に押しつける。
「あはははは! そうきたか!」
佑はポンと片手で枕を押しのけ、強引に香澄を抱いてまた寝転んだ。
「ホントは一人でエッチな事してたんだろ? してるうちに気持ち良くなって寝てしまったとか?」
抱き締められ、スウェット越しに胸を揉まれる。
下肢もやはり布地越しに秘部を揉まれ、体温がカァーッと上がっていく。
「も、黙秘権を行使します……っ」
じゃれついているうちに、あっという間にスウェットを脱がされ、ブラジャーのホックも外されてしまう。
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