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第十一部・スペイン 編

半脱ぎうさぎ

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 仕事を終えた佑は、十九時すぎにホテルに戻ってきた。

(ディナーは何にしようかな)

 そう思いながら、食いしん坊の香澄を満足させるプランを考える。

 だが明かりがついておらず、静まりかえった室内を見て猛烈に不安になった。

「香澄?」

 部屋の電気をつけて呼びかけたが、返事はない。

(もしかしてまた出掛けたか?)

 そう思ったが、久住や佐野からは何の連絡も受けていない。
 怒られたあとに、護衛に何も言わず出かけるほど、香澄は愚かではない。

(とにかく部屋の中を確認してから……)

 自分に言い聞かせて部屋中を見回り、ベッドルームに入った途端、笑みが漏れた。

 ベッドの上では、香澄が上下のスウェットを半脱ぎの状態で、くぅくぅと眠っているのだ。

 佑は安堵の息をつき、微笑みながらベッドに近づく。

(しかしこれは……)

 ブラジャーのホックも外れた状態で、明らかに自慰をした形跡がある。

 一気に興奮した佑は、一日の疲れも忘れて香澄の脚を広げた。
 彼女の脚は脱力したまま開かれ、日々のストレッチで股関節が柔らかくなっている事もあり、パタンと左右に倒れた。

 佑は悪びれもなくクロッチに触れ、確認するように指を動かす。

「ん……?」

 だが濡れた感触はなく、はたと目を瞬かせた。

(……一人じゃ達けなかったのかな)

 彼女の自慰を見たい気持ちはあるが、一人では達けなかったのだと思うと、それはそれでまた嬉しい。

(とりあえず、起きる前に……)

 佑はスマホを出し、シャッター音の鳴らないカメラアプリで、あらゆる角度から香澄の寝姿を激写する。

 する事を終えてから、ようやくジャケットを脱いでハンガーに掛けた。

(外は少し寒かったしな……。よし)

 佑は香澄の隣に寝転ぶと、にんまりと悪い笑みを浮かべ、ズボッと彼女の胸元に手を入れた。

「ひぁああぁっ!」

 効果てきめんで香澄は飛び起き、冷たい手に混乱した悲鳴を上げる。

「く……っ、は、はははは……っ」

 思わず笑うと、香澄は目をまん丸にしてこちらを見てきた。

「た……佑さん?」

 混乱した顔をしている彼女が可愛くて、佑はクツクツ笑いながら彼女の頬にキスをした。

「ただいま。暇だっただろ、待っていてくれてありがとう」

「おかえりなさい」

 ひとまず返事をするものの、寝ぼけた香澄は、自分がどうして胸を揉まれているか分かっていない。

「腹減ってないか?」

「んー……。お昼……? 食べたの十五時すぎだったから……いま何時? え……と十九時すぎか……。うん、まだ平気と言えば平気」

 香澄が答えている間も、佑は彼女の胸を揉み続けている。

「えーと……。これは……一体?」

「それは俺が聞きたい。一人で何してたんだ?」

「一人で何を……って……」

 香澄は不思議そうに言い、起き上がってから、ようやく自分が中途半端な格好で寝ていたのを思いだしたようだ。
 みるみる真っ赤になった彼女は、慌てて胸を揉む佑の手を押さえる。

「や! あのね!? これは……そ、そう! お風呂に入って、暑かったからつい!」

 香澄は慌ててズボンを引き上げ、横向きになってブラジャーのホックを留める。
 カップの中の胸を整えてお腹をしまった香澄は、誤魔化すように笑う。

(勿体なかった……。起こさずにやらしい事をしてれば良かったかな)

 心の中で不埒な事を考えながら、佑は優しく笑って彼女を抱き寄せた。

「お仕事は終わったの?」

「ああ、なかなか興味深い話が聞けた。テストデザインの革小物に、どれだけコストが掛かるか確認できたし、肝心の品質も確かめられた。契約するに当たっての条件のすりあわせもできた。今回の出張はなかなか有意義だったよ」

 言われて、昼間に出歩いた時、土産物屋らしき店で革小物が沢山置かれてあったのを思い出した。
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