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第十部・ニセコ 編
ルカの別荘へ
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佑の別荘に戻ったあと、彼が言っていたウォークインクローゼットを見せてもらった。
「わあ……」
白金台の豪邸には次々と新しいアイテムが入るので、店ではないかというほどのウォークインクローゼットになっている。
だがここも負けず劣らずで、秋冬物が綺麗に整頓されていた。
ニットやコーデュロイ生地に、ベロア調のアイテム。厚手の靴下は温かそうで、香澄の足のサイズに合ったブーツや冬用の靴も沢山ある。
「これで一緒に行けるだろう?」
「う……うん……」
呆けたまま頷く香澄の肩を、佑が優しく抱き寄せる。
「スペインで俺は仕事だけど、ホテルで待っていてくれるな? 護衛つきなら観光してもいいけど」
ちゅ、と頭にキスをされ、久しぶりの甘い囁きに胸の奥が疼く。
「はい。スペインは……革?」
「正解。良質な革製品が多くあるから、現地で品質を見て、今後のラインに生かせるか検討する。そのあとはフランスに寄って野暮用を済ませる。あとはイタリアにも行って挨拶しないと駄目だな」
「イタリア……。あ! ルカさん! ルカさんにはちゃんと挨拶しないと!」
パッと佑を見上げると、「そうだな」と頷かれた。
「せっかくだから着替えたら?」
「うん」
ここまで豊富にアイテムを用意してくれているのに、着ないのは勿体ない。
香澄が近くにあったハンガーに手を伸ばすと、佑が身を屈めて囁いてきた。
「Chief Everyの服をお買い上げ、ありがとうございます。お気に召して頂けましたか?」
突然よそ行きの声が耳元で聞こえ、香澄はビクッとして赤面する。
ぎこちなく彼を見上げると、佑は意味深に笑みを深めた。
その妖艶な表情を見て、ぶわわわっと熱が顔中に広がっていき、耳や首元まで熱くなっていく。
「な……っ、なぁっ」
バックバックと心臓が鳴り、香澄はびっくりした猫のように固まっている。
それを見て佑はクツクツと笑い、香澄の頭を撫でてからウォークインクローゼットを出て行った。
**
ルカの別荘のチャイムを鳴らすと、インターフォンからすぐに「Arrivo!」と声がした。
ドアが開き、ルカの笑顔が見える。
彼は香澄を見て驚き、「Wow……」とつま先から頭のてっぺんまでまじまじと見てくる。
香澄は黒いタートルネックニットに、フューシャピンクのタイトスカート、ライトグレーのチェスターコートを羽織っていた。
気合いの入ったお洒落のつもりではないが、今までカジュアルな服装しか見ていないルカには衝撃だったらしい。
『カスミって……知ってたけど、すっごく可愛いね!?』
『あ、ありがとうございます……』
ストレートに褒められ、香澄は照れ笑いをする。
それからルカは佑を見て、少し真面目な顔になった。
《ちゃんとケリはつけてきた?》
《勿論。改めて、香澄を守ってくれて感謝する》
イタリア語で会話をしている二人を見て、香澄はきょとんと目を瞬かせる。
『まぁ、寒いから中に入って』
別荘に入ると、すっかり私服に着替えて寛いだ五人がハッとして立ち上がった。
「ひゃ、ひゃひょう!」
呉代は口に何か咥えている。
何を食べていたのかテーブルを見て、香澄は「あー」と破顔する。
「スルメにマヨネーズつけて食べるの美味しいですよね。で、一味か七味か入れるの」
案の定周囲には缶ビールが転がっていて、佑は明後日の方向を見て溜め息をつく。
「ふみません、社長。お帰りがおひょかったもので……」
河野が真面目な顔で謝罪するが、その口にはスルメが入っている。
「……お前な」
疲れた様子で佑が突っ込もうとした時、香澄は堪らず笑いだした。
「んっふっふっふっふっふ……」
いつもビシッとしている人たちのオフショットが見られ、笑いのツボがぐりぐり刺激されている。
『カスミ、カプチーノ飲む?』
『飲みます!』
ルカに尋ねられ、香澄は笑いすぎて出た涙を拭って明るく返事をした。
「わあ……」
白金台の豪邸には次々と新しいアイテムが入るので、店ではないかというほどのウォークインクローゼットになっている。
だがここも負けず劣らずで、秋冬物が綺麗に整頓されていた。
ニットやコーデュロイ生地に、ベロア調のアイテム。厚手の靴下は温かそうで、香澄の足のサイズに合ったブーツや冬用の靴も沢山ある。
「これで一緒に行けるだろう?」
「う……うん……」
呆けたまま頷く香澄の肩を、佑が優しく抱き寄せる。
「スペインで俺は仕事だけど、ホテルで待っていてくれるな? 護衛つきなら観光してもいいけど」
ちゅ、と頭にキスをされ、久しぶりの甘い囁きに胸の奥が疼く。
「はい。スペインは……革?」
「正解。良質な革製品が多くあるから、現地で品質を見て、今後のラインに生かせるか検討する。そのあとはフランスに寄って野暮用を済ませる。あとはイタリアにも行って挨拶しないと駄目だな」
「イタリア……。あ! ルカさん! ルカさんにはちゃんと挨拶しないと!」
パッと佑を見上げると、「そうだな」と頷かれた。
「せっかくだから着替えたら?」
「うん」
ここまで豊富にアイテムを用意してくれているのに、着ないのは勿体ない。
香澄が近くにあったハンガーに手を伸ばすと、佑が身を屈めて囁いてきた。
「Chief Everyの服をお買い上げ、ありがとうございます。お気に召して頂けましたか?」
突然よそ行きの声が耳元で聞こえ、香澄はビクッとして赤面する。
ぎこちなく彼を見上げると、佑は意味深に笑みを深めた。
その妖艶な表情を見て、ぶわわわっと熱が顔中に広がっていき、耳や首元まで熱くなっていく。
「な……っ、なぁっ」
バックバックと心臓が鳴り、香澄はびっくりした猫のように固まっている。
それを見て佑はクツクツと笑い、香澄の頭を撫でてからウォークインクローゼットを出て行った。
**
ルカの別荘のチャイムを鳴らすと、インターフォンからすぐに「Arrivo!」と声がした。
ドアが開き、ルカの笑顔が見える。
彼は香澄を見て驚き、「Wow……」とつま先から頭のてっぺんまでまじまじと見てくる。
香澄は黒いタートルネックニットに、フューシャピンクのタイトスカート、ライトグレーのチェスターコートを羽織っていた。
気合いの入ったお洒落のつもりではないが、今までカジュアルな服装しか見ていないルカには衝撃だったらしい。
『カスミって……知ってたけど、すっごく可愛いね!?』
『あ、ありがとうございます……』
ストレートに褒められ、香澄は照れ笑いをする。
それからルカは佑を見て、少し真面目な顔になった。
《ちゃんとケリはつけてきた?》
《勿論。改めて、香澄を守ってくれて感謝する》
イタリア語で会話をしている二人を見て、香澄はきょとんと目を瞬かせる。
『まぁ、寒いから中に入って』
別荘に入ると、すっかり私服に着替えて寛いだ五人がハッとして立ち上がった。
「ひゃ、ひゃひょう!」
呉代は口に何か咥えている。
何を食べていたのかテーブルを見て、香澄は「あー」と破顔する。
「スルメにマヨネーズつけて食べるの美味しいですよね。で、一味か七味か入れるの」
案の定周囲には缶ビールが転がっていて、佑は明後日の方向を見て溜め息をつく。
「ふみません、社長。お帰りがおひょかったもので……」
河野が真面目な顔で謝罪するが、その口にはスルメが入っている。
「……お前な」
疲れた様子で佑が突っ込もうとした時、香澄は堪らず笑いだした。
「んっふっふっふっふっふ……」
いつもビシッとしている人たちのオフショットが見られ、笑いのツボがぐりぐり刺激されている。
『カスミ、カプチーノ飲む?』
『飲みます!』
ルカに尋ねられ、香澄は笑いすぎて出た涙を拭って明るく返事をした。
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