555 / 1,544
第十部・ニセコ 編
真奈美の案内
しおりを挟む
「あなたがオーナーの言っていた姪御さんですか?」
「初めまして。赤松香澄です。短い間ですが、どうぞ宜しくお願い致します」
きちっと頭を下げると、彼女は「やだぁ」と可愛らしい声で笑う。
「赤松さん……えーと、オーナーと同じ苗字だな。香澄さんの方が年上なんですから、そんな畏まらないでください。私は安野真奈美って言います」
真奈美はショートボブの小柄な女性で、どこか小動物を思わせる雰囲気が愛らしい。
「でも私が何も知らない後輩なのは確かなので、どうぞ宜しくお願いします」
もう一度ペコッと頭を下げると、奥から叔母の聡子が顔を出した。
「香澄ちゃん、久しぶり」
「あ、聡子おばさんお久しぶりです」
聡子は父方の家が中小企業の社長をしているらしく、お嬢様っぽいおっとりとした性格をしている。
「色々分からない事もあるかと思うけど、田舎の叔父さんの家に来たと思って、ゆっくり羽を伸ばして」
「ゆっくりさせてもらいますが、ちゃんと働かせて頂きます。こう見えて料理は一通りできるつもりですし、各種お手伝いします。掃除も洗濯もなんだってします」
「ま、今日はペンションの雰囲気だけ感じておいて」
そう言われるものの、香澄の中ではもうすでに研修期間は始まっている。
皆が働いているのに、自分だけのんびりするのは落ち着かない。
「いまキッチンで何かしていますか? だったら手伝います」
「ああ、平気平気。洗い物してるだけだから」
「でも……」
そう言っていると、香澄のパーカーを真奈美がちょんちょんと引っ張ってきた。
「はい?」
「じゃあ、私がペンションを案内するっていうのはどうですか?」
「宜しくお願いします!」
ハキッと返事をした香澄に聡子と真奈美は笑い、それから彼女にペンションを案内してもらった。
まず、まっすぐ向かってキッチンの右奥へ行くと手洗いと大浴場がある。
「お風呂は一階に大浴場があります。各部屋にもユニットバスがついていて、ちゃんと温泉です。大浴場は時間帯で男女に分かれているので、空いた時間にお風呂場の掃除をします」
案内された大浴場は広々としていて、岩肌を利用した浴槽やダークカラーで統一した浴室内は落ち着きがある。
大きな窓から羊蹄山が見え、手前の木が紅葉したらさぞ綺麗だろう。
「気持ちよさそう」
「でしょう? 結構評判いいんですよ。さっき私と和也さんがお風呂掃除をしたので、温泉を溜め直しています」
言われたとおり、浴槽には温泉が溜まっている途中だった。
洗い場は六人が並んで体を洗えるようになっていて、シャンプー類もこだわりの物が置かれてある。
「あっちはサウナ。海外の人ってサウナ大好きだから」
真奈美がドアを開けると、中からモワッと蒸気が出てくる。
「脱衣所の横にあるのが洗濯室です。基本的に洗濯はお客様にワンコイン出してもらって、セルフサービスという事になっています。なのでちょっとラクですよ。掃除や忘れ物のチェックはありますけどね」
脱衣所にはコインロッカーもあり、本格的だ。
そこから出ると、真奈美が左手にある冷蔵庫を示した。
「あの冷蔵庫では、牛乳やコーヒー牛乳、フルーツ牛乳も売ってます。こっちも好評ですね」
「んふふ、嬉しいサービスですね」
銭湯のような作りに香澄は思わず笑顔になる。
それから二人は一階の一番へ行く。
「ここが食堂です」
案内された食堂では、床から天井まである大きなガラスから、白樺の木立が見える美しい景色が見られるようになっている。
食堂内にも薪ストーブがあり、天井にもシーリングファンがある。
天井からは丸っこい木製の照明が下がり、周囲の雰囲気に合っている。
テーブルと椅子は木製でテーブルクロスが掛かり、卓上花も飾られてあった。
奥にはアルコールを含めた飲料の自動販売機があった。
「基本的に朝食は和食か洋食、ランチとディナーは一般のお客様も来るので、メニュー制です。ディナー時にはキャンドルも置きますよ」
パブリックスペースの案内をしたあと、真奈美が上を指さした。
「今、スイートの客室が空いてるので、案内しますね」
「はい」
以前麻衣と泊まりに来た時は普通のツインの客室だったので、そういう部屋があるのは聞くだけの情報で知っていた。
「初めまして。赤松香澄です。短い間ですが、どうぞ宜しくお願い致します」
きちっと頭を下げると、彼女は「やだぁ」と可愛らしい声で笑う。
「赤松さん……えーと、オーナーと同じ苗字だな。香澄さんの方が年上なんですから、そんな畏まらないでください。私は安野真奈美って言います」
真奈美はショートボブの小柄な女性で、どこか小動物を思わせる雰囲気が愛らしい。
「でも私が何も知らない後輩なのは確かなので、どうぞ宜しくお願いします」
もう一度ペコッと頭を下げると、奥から叔母の聡子が顔を出した。
「香澄ちゃん、久しぶり」
「あ、聡子おばさんお久しぶりです」
聡子は父方の家が中小企業の社長をしているらしく、お嬢様っぽいおっとりとした性格をしている。
「色々分からない事もあるかと思うけど、田舎の叔父さんの家に来たと思って、ゆっくり羽を伸ばして」
「ゆっくりさせてもらいますが、ちゃんと働かせて頂きます。こう見えて料理は一通りできるつもりですし、各種お手伝いします。掃除も洗濯もなんだってします」
「ま、今日はペンションの雰囲気だけ感じておいて」
そう言われるものの、香澄の中ではもうすでに研修期間は始まっている。
皆が働いているのに、自分だけのんびりするのは落ち着かない。
「いまキッチンで何かしていますか? だったら手伝います」
「ああ、平気平気。洗い物してるだけだから」
「でも……」
そう言っていると、香澄のパーカーを真奈美がちょんちょんと引っ張ってきた。
「はい?」
「じゃあ、私がペンションを案内するっていうのはどうですか?」
「宜しくお願いします!」
ハキッと返事をした香澄に聡子と真奈美は笑い、それから彼女にペンションを案内してもらった。
まず、まっすぐ向かってキッチンの右奥へ行くと手洗いと大浴場がある。
「お風呂は一階に大浴場があります。各部屋にもユニットバスがついていて、ちゃんと温泉です。大浴場は時間帯で男女に分かれているので、空いた時間にお風呂場の掃除をします」
案内された大浴場は広々としていて、岩肌を利用した浴槽やダークカラーで統一した浴室内は落ち着きがある。
大きな窓から羊蹄山が見え、手前の木が紅葉したらさぞ綺麗だろう。
「気持ちよさそう」
「でしょう? 結構評判いいんですよ。さっき私と和也さんがお風呂掃除をしたので、温泉を溜め直しています」
言われたとおり、浴槽には温泉が溜まっている途中だった。
洗い場は六人が並んで体を洗えるようになっていて、シャンプー類もこだわりの物が置かれてある。
「あっちはサウナ。海外の人ってサウナ大好きだから」
真奈美がドアを開けると、中からモワッと蒸気が出てくる。
「脱衣所の横にあるのが洗濯室です。基本的に洗濯はお客様にワンコイン出してもらって、セルフサービスという事になっています。なのでちょっとラクですよ。掃除や忘れ物のチェックはありますけどね」
脱衣所にはコインロッカーもあり、本格的だ。
そこから出ると、真奈美が左手にある冷蔵庫を示した。
「あの冷蔵庫では、牛乳やコーヒー牛乳、フルーツ牛乳も売ってます。こっちも好評ですね」
「んふふ、嬉しいサービスですね」
銭湯のような作りに香澄は思わず笑顔になる。
それから二人は一階の一番へ行く。
「ここが食堂です」
案内された食堂では、床から天井まである大きなガラスから、白樺の木立が見える美しい景色が見られるようになっている。
食堂内にも薪ストーブがあり、天井にもシーリングファンがある。
天井からは丸っこい木製の照明が下がり、周囲の雰囲気に合っている。
テーブルと椅子は木製でテーブルクロスが掛かり、卓上花も飾られてあった。
奥にはアルコールを含めた飲料の自動販売機があった。
「基本的に朝食は和食か洋食、ランチとディナーは一般のお客様も来るので、メニュー制です。ディナー時にはキャンドルも置きますよ」
パブリックスペースの案内をしたあと、真奈美が上を指さした。
「今、スイートの客室が空いてるので、案内しますね」
「はい」
以前麻衣と泊まりに来た時は普通のツインの客室だったので、そういう部屋があるのは聞くだけの情報で知っていた。
20
お気に入りに追加
2,509
あなたにおすすめの小説
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
若妻シリーズ
笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。
気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。
乳首責め/クリ責め/潮吹き
※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様
※使用画像/SplitShire様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる