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第十部・ニセコ 編
叔父のペンション
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ニセコはリゾート地として有名で、冬にはパウダースノーを目当てに外国人客が押し寄せる。
夏場でもハイキングにトレッキング、ゴルフやラフティング、乗馬やサイクリングを楽しむ客が訪れる。
ちょうどこれから紅葉が綺麗になる時期は、温泉を楽しみながら……という客も増えるらしい。
まだこれほどニセコの価値が高まる前から、秋成は先見の明で温泉つきのペンションを建てた。
そのあとに本格的なブームが訪れ、順調に売り上げを伸ばしている。
両親の話では、北海道のローカル番組で紹介されたほどらしい。
外観はログハウスでナチュラルで親しみやすい上に、温泉に入れる魅力がある。
加えて調理師免許を持つ聡子(さとこ)の料理も強みだ。
客層が海外色豊かなので、ヴィーガンに配慮した食事も出している。
ペンションを経営するにあたって、聡子は立派なキッチンと大勢の客が料理を楽しめるレストランを望んだため、宿泊しなくても料理を楽しめる利点もある。
SNS映えする料理に幅広いメニューが、宿泊客だけでなく、地元民にも国内観光客にも受けている。
しかし夫婦にとって一番のネックは言葉だ。
ニセコで商売をすると決めた時から、秋成は英語を学び始めたらしい。
今では日常会話はできるらしいが、相手が少し早口になったり、スラングを使ったり、英語以外の言語になるとコミュニケーションは機械頼りになる。
そこで語学の堪能なアルバイトを雇ったり、大自然に魅力を肝心、なおかつ外国人と交流したいと望む人を雇用しているらしい。
「香澄ちゃんは何語が話せるの?」
「英語は多分、日常会話なら問題ないと思う。あとはドイツ語を少々。フランス語は……簡単なものなら。働きたいって言った割に申し訳ないけど……」
「いやいや、『英語は問題ない』と言えるだけ立派だよ」
「アルバイトさんもいるんだよね?」
「ああ。二十三歳の椎野和也(しいのかずや)くんと、海外留学を経て今は休学中の、二十歳の安野真奈美(あんのまなみ)ちゃんがいるよ」
「あれ、だったら私、お呼びじゃないかな」
「大歓迎だよ。一か月弱、宜しく」
「ありがとう! ただ飯食いにならないように、頑張って働くから」
それからは、秋成が東京の事や佑の話を聞きたがり、香澄は問題にならない範囲で話し始めた。
**
「はー! 相変わらず立派!」
秋成のペンションは、三階建ての大きなログハウスだ。
宿泊施設なので横幅や奥行きもあり、それなりに部屋数もある。
敷地内には秋成が普段住んでいる、一軒家のログハウスもある。
夜になると秋成たちは母屋で寝て、ペンションで何かあった時には、携帯に電話がかかるようになっていた。
「まず香澄ちゃんが寝起きする部屋に案内するよ」
車から降りて母屋の方へ向かうと、ペンションの横でチェーンソーを動かしていた男性が機械を止めた。
「オーナー、お帰りなさい」
半袖を汗で濡らしている彼が、きっとアルバイトの和也だろう。
なかなかキリッとしたスポーツマンタイプだ。
それでいて社交的な雰囲気もあり、彼が客と英語で生き生きと話す様子が容易に想像できる。
「その人が短期バイトの姪御さんですか?」
和也の声に、香澄はペコッと頭を下げる。
「初めまして。赤松香澄です。後輩になりますので色々教えてください」
「初めまして。椎野和也です。宜しく」
和也は爽やかな笑みを浮かべ、チェーンソーで切った薪をポイッと脇に放った。
「凄い。薪切ってるんですか?」
その言葉に、秋成が答える。
「これから冬になったら、普通の石油ストーブに加えて薪ストーブの火も入れるんだ。薪ストーブのオーブンで料理もできるし、なかなか好評だよ」
馴染みのない香澄は「あとで見せて」と叔父に言い、もう一度和也に会釈をした。
再び歩きながら、秋成が和也に声を掛けた。
「和也くん、今日は歓迎会するからご馳走だよ。薪、宜しくね」
「はい!」
秋成の声に和也は返事をし、またチェーンソーを動かし始めた。
夏場でもハイキングにトレッキング、ゴルフやラフティング、乗馬やサイクリングを楽しむ客が訪れる。
ちょうどこれから紅葉が綺麗になる時期は、温泉を楽しみながら……という客も増えるらしい。
まだこれほどニセコの価値が高まる前から、秋成は先見の明で温泉つきのペンションを建てた。
そのあとに本格的なブームが訪れ、順調に売り上げを伸ばしている。
両親の話では、北海道のローカル番組で紹介されたほどらしい。
外観はログハウスでナチュラルで親しみやすい上に、温泉に入れる魅力がある。
加えて調理師免許を持つ聡子(さとこ)の料理も強みだ。
客層が海外色豊かなので、ヴィーガンに配慮した食事も出している。
ペンションを経営するにあたって、聡子は立派なキッチンと大勢の客が料理を楽しめるレストランを望んだため、宿泊しなくても料理を楽しめる利点もある。
SNS映えする料理に幅広いメニューが、宿泊客だけでなく、地元民にも国内観光客にも受けている。
しかし夫婦にとって一番のネックは言葉だ。
ニセコで商売をすると決めた時から、秋成は英語を学び始めたらしい。
今では日常会話はできるらしいが、相手が少し早口になったり、スラングを使ったり、英語以外の言語になるとコミュニケーションは機械頼りになる。
そこで語学の堪能なアルバイトを雇ったり、大自然に魅力を肝心、なおかつ外国人と交流したいと望む人を雇用しているらしい。
「香澄ちゃんは何語が話せるの?」
「英語は多分、日常会話なら問題ないと思う。あとはドイツ語を少々。フランス語は……簡単なものなら。働きたいって言った割に申し訳ないけど……」
「いやいや、『英語は問題ない』と言えるだけ立派だよ」
「アルバイトさんもいるんだよね?」
「ああ。二十三歳の椎野和也(しいのかずや)くんと、海外留学を経て今は休学中の、二十歳の安野真奈美(あんのまなみ)ちゃんがいるよ」
「あれ、だったら私、お呼びじゃないかな」
「大歓迎だよ。一か月弱、宜しく」
「ありがとう! ただ飯食いにならないように、頑張って働くから」
それからは、秋成が東京の事や佑の話を聞きたがり、香澄は問題にならない範囲で話し始めた。
**
「はー! 相変わらず立派!」
秋成のペンションは、三階建ての大きなログハウスだ。
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夜になると秋成たちは母屋で寝て、ペンションで何かあった時には、携帯に電話がかかるようになっていた。
「まず香澄ちゃんが寝起きする部屋に案内するよ」
車から降りて母屋の方へ向かうと、ペンションの横でチェーンソーを動かしていた男性が機械を止めた。
「オーナー、お帰りなさい」
半袖を汗で濡らしている彼が、きっとアルバイトの和也だろう。
なかなかキリッとしたスポーツマンタイプだ。
それでいて社交的な雰囲気もあり、彼が客と英語で生き生きと話す様子が容易に想像できる。
「その人が短期バイトの姪御さんですか?」
和也の声に、香澄はペコッと頭を下げる。
「初めまして。赤松香澄です。後輩になりますので色々教えてください」
「初めまして。椎野和也です。宜しく」
和也は爽やかな笑みを浮かべ、チェーンソーで切った薪をポイッと脇に放った。
「凄い。薪切ってるんですか?」
その言葉に、秋成が答える。
「これから冬になったら、普通の石油ストーブに加えて薪ストーブの火も入れるんだ。薪ストーブのオーブンで料理もできるし、なかなか好評だよ」
馴染みのない香澄は「あとで見せて」と叔父に言い、もう一度和也に会釈をした。
再び歩きながら、秋成が和也に声を掛けた。
「和也くん、今日は歓迎会するからご馳走だよ。薪、宜しくね」
「はい!」
秋成の声に和也は返事をし、またチェーンソーを動かし始めた。
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