【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
500 / 1,559
第九部・贖罪 編

大丈夫か?

しおりを挟む
 そう思ったのか、双子が口を挟んでくる。

「君、幾つか知らないけどさ。僕ら三十三歳だよ? タスクだって三十二歳だし。人を年齢とか年収とか、身長とか、そういう〝数字〟で判断していたら、あとから君自身が後悔すると思うけどね。それと、金持ちの二十代ならまずバカが多いよ。ある程度人生経験があった方が、結婚しても失敗しなくていいんじゃない?」

 アロイスにしてはまっとうな言い分だが、百合恵も引かない。

「あなた達は顔面偏差値申し分ないじゃないですか。御劔社長だってクォーターだし、海外の血が入っている子供を産めるなら、万々歳です。でもあの人は……」

 百合恵の愚痴が長くなりそうなのを察し、佑が会話を遮った。

「すみません、小野瀬さん。俺たちはこれから向かう所がありますので、この辺りで失礼します。あなたの縁談がうまくいくようお祈りしています」

 そして香澄の肩を抱いて歩きだす。

「ちょ……っ、佑さん?」
「じゃあねー。せいぜい頑張りなよ」

 クラウスが百合恵に向かって手を振り、アロイスとマティアスも外に向かう。
 背が高くて日本語も話せる海外イケメンをゾロゾロ引き連れた香澄を、後ろから百合恵が羨ましそうに見送る。

 ホテルの正面玄関前には、すでに佑の車がつけられていた。
 人数を告げたからなのか、車はいつもの高級国産車ではなく大型のRV車だ。

 小金井がドアを開けてくれ、香澄は挨拶をしてレディファーストで乗り込む。
 少し迷ってから最後部の座席に座ると、佑がその隣に座る。
 アロイスとクラウスは中ほどの席に座り、マティアスは助手席に座った。

「香澄、東京観光はどこに向かうつもりだったんだ?」

『あ……。えっと、マティアスさん、行きたい場所ありますか?』
『あぁ……。じゃあ、スカイツリーとかアサクサとかがいい。そのあとイザカヤに行きたい』

『了解しました』

 東京観光と言えばベタ中のベタだが、香澄もじっくり行った事がないので楽しみだ。
 車は千代田区から墨田区に向かって発進した。

 車内前方では双子がマティアスと会話をしている。
 その間に佑が香澄にそっと耳打ちした。

「マティアスと一緒にいても大丈夫か?」
「え? うん、平気だよ」

「『大丈夫だ』って言い聞かせて、気を張りすぎていないか?」
「ううん、平気」

 せっかくマティアスとも双子とも、本来の関係に戻れたのに、一緒にいてつらいなんてあり得ない。

 そう思っていたのだが……。

「え……」

 隣に座っている佑に抱き締められ、頬に、額にキスをされた。
 大好きな佑の香りが香澄を包み込み、嗅覚から癒やしてくれる。

 それだけでなぜか目が潤んだかと思うと、涙が零れた。

「……大丈夫だ」

 佑が身元で囁き、香澄の肩をさする。
 目を閉じると自宅で二人きりになっているような感覚になり、香澄は彼を抱き締め返していた。

 佑にしっかり抱きついたまま、香澄はこっそり彼の香りを吸い込む。
 ジョン・アルクールのいつものウード&ベルガモッドに混じって、微かに柑橘の香りがした。
 衣服越しに彼のしっかりとした肉体を感じる。

 それだけで佑からたくさんのエールを受け取っている気がした。

 自分が「大丈夫、大丈夫」と言っていつもの対応をしていても、佑は香澄すら気づいていない部分に目を光らせ、心配してくれる。
 先ほどホテルの部屋で言った事にも通じているが、そういう風に佑が心配してくれるからこそ、香澄は背筋を伸ばし前を向いて歩けるのだと思う。

「……ありがとう」

 小さな声で礼を言うと、耳元で「何が?」と尋ねる声がする。

「……ぜんぶ」

 微笑むと、佑はもう一度香澄の額にキスをしてくれた。

 不意に今すぐ家に帰って、佑と愛し合いたいと思ってしまった。
 自分から客人をもてなそうと思ったのに、何とも自分勝手で思わず苦笑する。

「もう少しで香澄の誕生日だな」
「……ふふ、まだ九月だよ?」

 香澄の誕生日は十一月二十日で、まだ二か月先だ。

「二十日の前の週末と、後の週末、どっちに小旅行したい?」
「えっ……。それはとても魅力的。どこに行くの?」

 二人は楽しげに、コソコソと会話する。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...