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第八部・イギリス捜索 編

ボウネスへ

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 やがてクラウスが口を開いた。

『マティアス、僕らはマティアスの味方だ。僕らはお前がどれだけ苦しんだかを知っている。知っていながら何も力になれないでいた。僕らも合わせて全員に勝機が訪れるまで、僕らもエミには反抗できないでいた。臆病風に吹かれていた事については謝るよ』

 痛みを耐えるような表情で言ったあと、クラウスは表情を引き締める。

『同時に僕らはタスクの従兄でもある。僕ら、あいつの事を結構気に入ってるんだ。今回の事でタスクは本当に怒り狂ってる。メイヤー家を本気で潰そうとするだろう。そしてすべてが終わったあと、カスミを巻き込んだ僕ら共々、クラウザー家に対しても厳しい決断をくだすだろう』

 クラウスの言葉を、アロイスが続ける。

『俺たちはタスクが何を選択しても受け入れるよ。何も知らないカスミを巻き込んで酷い目に遭わせたんだ。俺たちにだって相応の罰が下って当たり前だと思ってる。でもマティアスだって自分が今までどんな目に遭っていたのか、きちんと言うべきだ。お前には母親の敵を討つっていう理由があった。それでタスクが怒りを収めるとは思えないけど、お前にはお前の理由があると伝えた方がいい。……俺たちは漁夫の利を狙った。最後はせいぜい仲良く罪を被るさ』

 苦く笑い、アロイスは残ったコーヒーを飲み干した。
 マティアスは変わらず、淡々と言う。

『俺はメイヤー家を道連れにできるなら、一緒に破滅したっていい。エミという社長を支えきれず、共に悪事に手を染めた秘書として掴まってもいい』

 彼の手に自分の手を重ね、テオが首を左右に振った。

『それは駄目だ。あの家から逃げた俺が言えるセリフではないが、あんなクズ達のために一生を棒に振る必要はない。アドラーさんの計画なら、マティアスが助かるルートだってあるだろう? すべてはカイがどう出るかに掛かっているが、あいつに日本式のドゲザでもして許しを乞うんだ。そして雇ってもらえるなら、父親と一緒にクラウザー社でやり直せ。何なら俺の所の会社に相談してもいい』

 テオの厚意にマティアスはまた唇を歪ませ――、何かの感情をごまかすように、自分もコーヒーの残りを飲んだ。

『すべてはフラウ・カスミを救い出してからにしよう。助けるべきは、むさ苦しい男ではなく無関係の姫だ』
『そうだね』

 クラウスがパンと手を叩き、佑から連絡がないかとスマホを手に取る。

 そのタイミングで、アロイスのスマホに佑から電話が掛かった。



**



 近くにいた佑たちと双子たちは、全員合流して七人となった。

 河野は双子たちに挨拶をし、自分が佑の秘書であると伝える。
 それから手短に彼の推測を話し、マルコがイタリア人モデル二名を押さえた事も明かした。

『何だよソレ! 知らないあいだにすっげぇ進展あるじゃん! ユキオ有能だな?』
『恐縮です』

 大盛り上がりする双子と、慇懃に頭を下げる河野を脇目に、佑は余裕のない様子で腕時計を確認する。

『話は道中でするとして、ヘリポートに急ごう。何をするか分からないパーティーらしいから、香澄が危ない』
『分かった』

 それから二手に分かれてタクシーに乗り、コットン・ロウ地区にあるロンドン・ヘリポートに向かった。

 そして準備のできていたヘリコプターに乗り込み、湖水地方を目指した。





 二時間も経たないうちに、佑はウィンダミア湖にあるボウネスに着いていた。

 ヘリコプターの着陸地点は、マルコの知り合いが経営しているホテルのヘリポートから使用許可が出た。

『さて、アレッサンドロ達にも、このホテルに来るよう伝えたのだが……』

 ヘリコプターから降りてマルコはホテルに入り、ロビーに立っていた長身の男性二人を見てニヤリと笑う。

『マルコ、俺たちは……』

 黒髪のイタリア人男性がマルコに向かって何か言いかけたが、彼はその言葉を手で制し、最後まで言わせない。

『言い訳は必要ない。私たちは急いでいる。パーティーとやらの概要と、警備について教えてもらおう』

 モデル二人はマルコの後ろに射る六人を見て気まずそうにしていたが、おずおずと話しだす。

『参加者は全員仮面をつける事になっている。主催者もドイツ訛りの英語だとは分かっているが、特に詳しい正体を知っている訳じゃない』

 片方が話し、もう片方が続きを引き受ける。
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