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第八部・イギリス捜索 編
診察と薬
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『さあ、行きましょう。レストランも予約しておいたけど、その時間までシャワーを浴びて休むとといいわ。部屋は私と一緒だけど、いいわよね? 今のカスミさん、少し危なっかしくて……。ベッドルームは別だから安心して? あなたが休んでいるのも邪魔しないわ』
『ありがとうございます。本当に……恩に着ます』
荷物はポーターが持ってくれ、そのままエレベーターで上層階に向かう。
通された部屋はやはりスイートルームだった。
まさに英国! という圧巻のスタイルで、まるで宮殿の中にいるようだ。
白を基調とした部屋にシャンデリア、金の装飾と花柄のインテリア。
ドレープを描いた上品なカーテンに、ソファ、クッションも柄や色味が統一されていた。
花柄と言えば可愛らしい、女性が好む物に思えるのに、部屋全体がヨーロピアンテイストだからか、その柄を使うのが当たり前という感じがした。
ベッドルームは二部屋あり、どちらにもキングサイズのベッドがある。
ベッドの向かいには暖炉があって、その上には磨き上げられた鏡、隣には壁掛けの薄型テレビがあった。
バスルームや洗面所はすべて大理石だ。
部屋全体はアンティークな美しさを前面に押し出しているのに、水回りはさりげなく最新型の設備を導入してある。
圧倒されて何も言えない香澄をよそに、エミリアはポーターに荷物の置き場所を指示していた。
『カスミさん。まずは汗を流してきたら? シャワーを浴びればきっと気持ちも少しスッキリするわ。その間にマッサージ師を呼んでおくから、終わったら施術を受けて。あと、医師も呼んでおくわね』
エミリアはごく当然と指示し、香澄も彼女の言う事を聞くのを当たり前と思っていた。
『ありがとうございます。そうさせて頂きます』
ボストンバッグから下着と着替えを出し、香澄はバスルームに向かった。
ぼんやりとシャワーに当たって高級ブランドのアメニティを使い、さっぱりしてドライヤーをかけて出ると、リビングに向かった。
リビングにはエミリアと、白人の男性とアジア系の女性がいる。
『エミリアさん、ありがとうございました』
『どういたしまして。あと、こちらはロンドンで世話になっている医師よ。カスミさんが風邪っぽいという事を話して、診察に来てくれたの』
『すみません、ありがとうございます』
髭を生やした男性の医師は、四十代ほどのイケメンだ。
スーツの上に白衣を羽織った彼は、英語で香澄にベッドに寝るよう促した。
(こんな豪華な部屋なのにTシャツとハーフパンツで恥ずかしい……)
そう思いつつ、香澄は自分のベッドで仰向けになる。
体温計で熱を測る傍ら、喉を見られたり様々な診察を受けた。
『風邪の初期症状ですね。これから症状が多少悪化するかもしれませんが、風邪の菌を殺す薬に、喉の痛みを和らげる薬、念のために解熱剤を出しておきます。解熱剤は熱が出た時のみですが、それ以外は毎食後に飲んでください』
『分かりました。ありがとうございます』
忙しいのか医師はすぐに帰り支度をし、去って行った。
起きた香澄にエミリアがピルケースを差し出してくる。
『こっちではある程度の薬は薬局で売っているの。日本のようにいちいち病院に行って処方箋を出される必要はないわね。彼に話をして、あらかじめ必要な薬を用意してもらったわ。私の方で飲みやすいように分けておいたから、これを飲んで』
『すみません。ありがとうございます』
礼を言い、香澄は曜日、朝昼晩に分かれた立派なピルケースを受け取る。
『ウェルカムスイーツでも食べたあと、まず飲んでおきなさい。処置は早めの方がいいわ』
『はい』
リビングにはまるで高級喫茶店にでもいるような、ケーキセットと紅茶が用意されてあった。
香澄がバスルームにいた間、エミリアはすでにそれを口にして仕事をしていたようだ。
『いただきます』
イギリスは食べ物が美味しくないと聞くが、どんなものか……と思いつつ、紅茶を一口飲み、ケーキを食べる。
「……ん。思ったより食べやすい」
海外のスイーツと聞くと甘ったるい物を想像するが、意外と甘さ控えめで食べやすい。
ケーキは日本でも見かける、ベリーのフロマージュタイプだ。
せっかのファーストクラスでの機内食も、半ば味気なく感じていたが、ホテルに落ち着いて安心したからか、「美味しい」と思えた。
気がつけば香澄はパクパクとケーキを平らげ、紅茶も途中からミルクティーにして飲み干した。
そのあと、ペットボトルの水で薬を飲み、ふぅ……と息をつく。
『ありがとうございます。本当に……恩に着ます』
荷物はポーターが持ってくれ、そのままエレベーターで上層階に向かう。
通された部屋はやはりスイートルームだった。
まさに英国! という圧巻のスタイルで、まるで宮殿の中にいるようだ。
白を基調とした部屋にシャンデリア、金の装飾と花柄のインテリア。
ドレープを描いた上品なカーテンに、ソファ、クッションも柄や色味が統一されていた。
花柄と言えば可愛らしい、女性が好む物に思えるのに、部屋全体がヨーロピアンテイストだからか、その柄を使うのが当たり前という感じがした。
ベッドルームは二部屋あり、どちらにもキングサイズのベッドがある。
ベッドの向かいには暖炉があって、その上には磨き上げられた鏡、隣には壁掛けの薄型テレビがあった。
バスルームや洗面所はすべて大理石だ。
部屋全体はアンティークな美しさを前面に押し出しているのに、水回りはさりげなく最新型の設備を導入してある。
圧倒されて何も言えない香澄をよそに、エミリアはポーターに荷物の置き場所を指示していた。
『カスミさん。まずは汗を流してきたら? シャワーを浴びればきっと気持ちも少しスッキリするわ。その間にマッサージ師を呼んでおくから、終わったら施術を受けて。あと、医師も呼んでおくわね』
エミリアはごく当然と指示し、香澄も彼女の言う事を聞くのを当たり前と思っていた。
『ありがとうございます。そうさせて頂きます』
ボストンバッグから下着と着替えを出し、香澄はバスルームに向かった。
ぼんやりとシャワーに当たって高級ブランドのアメニティを使い、さっぱりしてドライヤーをかけて出ると、リビングに向かった。
リビングにはエミリアと、白人の男性とアジア系の女性がいる。
『エミリアさん、ありがとうございました』
『どういたしまして。あと、こちらはロンドンで世話になっている医師よ。カスミさんが風邪っぽいという事を話して、診察に来てくれたの』
『すみません、ありがとうございます』
髭を生やした男性の医師は、四十代ほどのイケメンだ。
スーツの上に白衣を羽織った彼は、英語で香澄にベッドに寝るよう促した。
(こんな豪華な部屋なのにTシャツとハーフパンツで恥ずかしい……)
そう思いつつ、香澄は自分のベッドで仰向けになる。
体温計で熱を測る傍ら、喉を見られたり様々な診察を受けた。
『風邪の初期症状ですね。これから症状が多少悪化するかもしれませんが、風邪の菌を殺す薬に、喉の痛みを和らげる薬、念のために解熱剤を出しておきます。解熱剤は熱が出た時のみですが、それ以外は毎食後に飲んでください』
『分かりました。ありがとうございます』
忙しいのか医師はすぐに帰り支度をし、去って行った。
起きた香澄にエミリアがピルケースを差し出してくる。
『こっちではある程度の薬は薬局で売っているの。日本のようにいちいち病院に行って処方箋を出される必要はないわね。彼に話をして、あらかじめ必要な薬を用意してもらったわ。私の方で飲みやすいように分けておいたから、これを飲んで』
『すみません。ありがとうございます』
礼を言い、香澄は曜日、朝昼晩に分かれた立派なピルケースを受け取る。
『ウェルカムスイーツでも食べたあと、まず飲んでおきなさい。処置は早めの方がいいわ』
『はい』
リビングにはまるで高級喫茶店にでもいるような、ケーキセットと紅茶が用意されてあった。
香澄がバスルームにいた間、エミリアはすでにそれを口にして仕事をしていたようだ。
『いただきます』
イギリスは食べ物が美味しくないと聞くが、どんなものか……と思いつつ、紅茶を一口飲み、ケーキを食べる。
「……ん。思ったより食べやすい」
海外のスイーツと聞くと甘ったるい物を想像するが、意外と甘さ控えめで食べやすい。
ケーキは日本でも見かける、ベリーのフロマージュタイプだ。
せっかのファーストクラスでの機内食も、半ば味気なく感じていたが、ホテルに落ち着いて安心したからか、「美味しい」と思えた。
気がつけば香澄はパクパクとケーキを平らげ、紅茶も途中からミルクティーにして飲み干した。
そのあと、ペットボトルの水で薬を飲み、ふぅ……と息をつく。
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