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第八部・イギリス捜索 編
初対面の挨拶
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「御劔様ですね? お連れ様がお待ちです」
タキシードを着た男性は上品に微笑み、先を歩き出した。
佑の腕に手をかけた香澄は、黒のオフショルダートップスに白いフレアスカートをはいている。
こういう時にこそと、佑から贈られたジョルダンのパンプスを履き、アクセサリー類は本物の宝石を着けている。
本当は無くしたり傷付けたりを思うと、あまり宝石は身につけたくない。
それでもこういう場所で佑たちと同席するには、何もしなければ平凡そのものの香澄は、多少飾り立てないといけない。
ロビーを歩く時も佑がエスコートしてくれたが、正直「あれ、御劔佑だ。でも隣にいる普通の女は何?」という視線を頂いた。
分かっていても、自分の存在が佑を貶めていないかとても心配になるし申し訳ない。
「〝世界の御劔〟が選んだ女は、とても平凡で彼に似合わない人でした」という評価が、もしかしたら世界中に回っているかも分からない。
だが極力エゴサーチはしないようにしているし、ネットニュースも必要な記事しか見ない。
弱気になりそうな自分に活を入れ、香澄はレッスンで習った事を思い出し、できるだけ美しいウォーキングで双子が待つ個室に向かった。
だが香澄自身も気付いていない事だが、ホテルのロビーを含めレストランでも、佑にエスコートされ優雅に歩く香澄を、誰もが羨望の眼差しで見ていた。
この一年近くで磨き上げられた香澄は、姿勢もすっかり良くなり所作も上品になった。
もともと顔立ちも透明感のある美しさがあり、それにTPOに合わせたメイクもきちんと施し、〝高嶺の花〟的な女性に大変身している。
ただ、本人だけは自分に劣等感を持ち、第三者がそのように思っているとはつゆとも知らないのだった。
「香澄ちゃん、こんばんは」
「香澄さん、こんばんは。佑も!」
夜景を見下ろす個室に入ると、すでに席に着いていた律と陽菜、翔と澪が挨拶をしてきた。
律と翔はダークスーツで、澪はロングヘアをポニーテールにして黒いレースのオールインワンを着ている。陽菜はアイボリーのワンピースだ。
『こんばんは』
勿論双子も席についていて、初対面になる金髪美女のエミリアがこちらを見て微笑みを浮かべていた。
「こ、こんばんは!」
先に日本語で挨拶したあと、香澄はエミリアを向いて頭を下げる。
いま彼女から掛けられた言葉は英語だったので、今日の会話は英語で統一されるのだろうと察した。
『初めまして、エミリアさん。赤松香澄と申します。お会いできて光栄です』
お辞儀をして挨拶をすると、座ってシャンパングラスを傾けていた彼女も立ち上がり、テーブルを回り込んで軽いハグをしてきた。
『初めまして、カスミさん。私も会えて嬉しいわ』
間近で見たエミリアは、まさにセレブ美女という感じだ。
身長がスラッと高くて、百七十センチメートル以上はある。
以前写真で見た時はウエーブした髪を胸元まで垂らしていたが、今はレストランだからかきちんとまとめ髪にしていた。
細身の体型に合った胸のラインも美しく、黒いIラインワンピースがよく似合っている。
耳や首、指などにジュエリーが輝き、手首にも実用重視というよりはアクセサリー感覚の繊細な高級時計があるが、それが実にハマっている。
佑たち兄弟と、双子の幼馴染みというだけあって、上流階級の女性という雰囲気がした。
香澄に挨拶をしたあと、エミリアは佑に歩み寄って自然にハグをした。
『先日会ったばかりなのに、やっぱり久しぶりな気がするわ。カイ』
長身の美男美女がハグをして挨拶をしている姿を見て、思わず「お似合いだ」という感情が生まれて胸の奥に暗いものが落ちる。
そのあと、エミリアの連れらしい、やはり高身長のドイツ人男性が挨拶をしてきた。
『マティアス・シュナイダーだ。彼女の秘書をしている』
彼は握手を求めてきたので、香澄は微笑んで悪手をし返す。
『マティアスさん、宜しくお願いします』
初対面の人にきちんと挨拶ができて胸をなで下ろしたものの、心の奥には佑とエミリアのハグが魚の小骨のように引っ掛かっている。
「何なら、私たちもハグしよっか」
「ふぇっ!」
急に耳元で声がしたかと思うと、いつの間にか側に立っていた澪にギューッと抱き締められた。
「み、澪さん」
びっくりした……と笑おうとした時、耳元で澪がボソッと呟いた。
タキシードを着た男性は上品に微笑み、先を歩き出した。
佑の腕に手をかけた香澄は、黒のオフショルダートップスに白いフレアスカートをはいている。
こういう時にこそと、佑から贈られたジョルダンのパンプスを履き、アクセサリー類は本物の宝石を着けている。
本当は無くしたり傷付けたりを思うと、あまり宝石は身につけたくない。
それでもこういう場所で佑たちと同席するには、何もしなければ平凡そのものの香澄は、多少飾り立てないといけない。
ロビーを歩く時も佑がエスコートしてくれたが、正直「あれ、御劔佑だ。でも隣にいる普通の女は何?」という視線を頂いた。
分かっていても、自分の存在が佑を貶めていないかとても心配になるし申し訳ない。
「〝世界の御劔〟が選んだ女は、とても平凡で彼に似合わない人でした」という評価が、もしかしたら世界中に回っているかも分からない。
だが極力エゴサーチはしないようにしているし、ネットニュースも必要な記事しか見ない。
弱気になりそうな自分に活を入れ、香澄はレッスンで習った事を思い出し、できるだけ美しいウォーキングで双子が待つ個室に向かった。
だが香澄自身も気付いていない事だが、ホテルのロビーを含めレストランでも、佑にエスコートされ優雅に歩く香澄を、誰もが羨望の眼差しで見ていた。
この一年近くで磨き上げられた香澄は、姿勢もすっかり良くなり所作も上品になった。
もともと顔立ちも透明感のある美しさがあり、それにTPOに合わせたメイクもきちんと施し、〝高嶺の花〟的な女性に大変身している。
ただ、本人だけは自分に劣等感を持ち、第三者がそのように思っているとはつゆとも知らないのだった。
「香澄ちゃん、こんばんは」
「香澄さん、こんばんは。佑も!」
夜景を見下ろす個室に入ると、すでに席に着いていた律と陽菜、翔と澪が挨拶をしてきた。
律と翔はダークスーツで、澪はロングヘアをポニーテールにして黒いレースのオールインワンを着ている。陽菜はアイボリーのワンピースだ。
『こんばんは』
勿論双子も席についていて、初対面になる金髪美女のエミリアがこちらを見て微笑みを浮かべていた。
「こ、こんばんは!」
先に日本語で挨拶したあと、香澄はエミリアを向いて頭を下げる。
いま彼女から掛けられた言葉は英語だったので、今日の会話は英語で統一されるのだろうと察した。
『初めまして、エミリアさん。赤松香澄と申します。お会いできて光栄です』
お辞儀をして挨拶をすると、座ってシャンパングラスを傾けていた彼女も立ち上がり、テーブルを回り込んで軽いハグをしてきた。
『初めまして、カスミさん。私も会えて嬉しいわ』
間近で見たエミリアは、まさにセレブ美女という感じだ。
身長がスラッと高くて、百七十センチメートル以上はある。
以前写真で見た時はウエーブした髪を胸元まで垂らしていたが、今はレストランだからかきちんとまとめ髪にしていた。
細身の体型に合った胸のラインも美しく、黒いIラインワンピースがよく似合っている。
耳や首、指などにジュエリーが輝き、手首にも実用重視というよりはアクセサリー感覚の繊細な高級時計があるが、それが実にハマっている。
佑たち兄弟と、双子の幼馴染みというだけあって、上流階級の女性という雰囲気がした。
香澄に挨拶をしたあと、エミリアは佑に歩み寄って自然にハグをした。
『先日会ったばかりなのに、やっぱり久しぶりな気がするわ。カイ』
長身の美男美女がハグをして挨拶をしている姿を見て、思わず「お似合いだ」という感情が生まれて胸の奥に暗いものが落ちる。
そのあと、エミリアの連れらしい、やはり高身長のドイツ人男性が挨拶をしてきた。
『マティアス・シュナイダーだ。彼女の秘書をしている』
彼は握手を求めてきたので、香澄は微笑んで悪手をし返す。
『マティアスさん、宜しくお願いします』
初対面の人にきちんと挨拶ができて胸をなで下ろしたものの、心の奥には佑とエミリアのハグが魚の小骨のように引っ掛かっている。
「何なら、私たちもハグしよっか」
「ふぇっ!」
急に耳元で声がしたかと思うと、いつの間にか側に立っていた澪にギューッと抱き締められた。
「み、澪さん」
びっくりした……と笑おうとした時、耳元で澪がボソッと呟いた。
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