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第八部・イギリス捜索 編
白鳥とアヒルの子
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双子と親密になれても、側にいるのは世界的な女優やコレクションに出るようなモデルたちだ。もしくは女性実業家や大富豪の令嬢。貴族、政治家に関わる女性。
そんな、言ってしまえば〝怖い女性〟たちがライバルになると思うだけで、気が遠くなる。
白鳥の群れにアヒルの子が迷い込めば、虐められると相場が決まっている。
加えて金を持つ者なら、その虐め具合も想像を絶するかもしれない。
中には心優しい金持ちの女性もいるだろうが、往々にしてそういう人は双子のような存在のセックスフレンドにはならないものである。
「……お二人は、本当に美里さんに本気なんですか?」
「まぁ、ね?」
「そう。カスミっぽい匂いがプンプンするし、真面目そうでいい子だなって思ってるよ?」
双子らしい言い方に、香澄は溜め息をつく。
「そういう所、減点ですよ? 本命の前で他の人と比べるような事を言ったら駄目です。誰かに似ているだなんて、失礼甚だしいです」
「ごめんごめん。まぁ、でもさ。俺たちはまだミサトをそれほど知らないワケ。彼女自身が言った通りね?」
「ニオイで嗅ぎ分けてさ、ミサトはカスミみたいに真面目で相手を思い遣って、地道にコツコツやってくタイプっていうのは分かるんだ。だから彼女に照準を当てた」
「俺たちは基本的にやっぱり、カスミが大好きだからね?」
「う……。あ、ありがとうございます……」
キラキラと輝くブルーアイに見つめられると、顔だけはいいので多少照れてしまう。
「ですが、私から見ると属性で見分けて、思いつきで目の前にいた美里さんを好きになったように思えました。私としては、お二人が真剣なら応援したいです。でもちょっと色々軽率と思える箇所もあるので、美里さんがお二人に翻弄されて傷付かないか心配なんです」
双子は「軽率」と口の中で呟き、きょとんとして香澄を見ている。
「ご存知の通り、日本人は真面目気質です。肉体関係まで持つようになって、やっぱり本気じゃなかったとか、そういう関係は一般的ではありません。ほとんどの人は『遊ばれた』と思うでしょう。私は美里さんと友人でも知り合いでもありません。けど同じ故郷の一般人女性として、弄ぶような真似はしないと約束してください」
ペコリ、と頭を下げると、双子が微かに溜め息をついた。
「僕たちがカスミにどんだけ信頼がないかは分からないけどさ。本気だよ? 確かにまだ知らない事いっぱいあるけど、知りながら攻略するのもアリだと思うんだ」
「そ。今んところ二人で愛で倒したいって思ってるけど、そのうち殺し合いをしてでも取り合うか、三人で幸せエンドを目指すかは、また別の話。俺たちは〝今〟しか知らないし、〝今〟を最高に生きるって決めてるから」
双子の考えの一端が分かった気がして、香澄は微笑む。
「確かに私とお二人とでは、考え方が根本的に違うのは分かっています。価値観が違うのに、自分の目線でお説教をしてすみません」
「や、いいよ。生まれが違うのは仕方ないし」
こんな言葉も、双子が言えば嫌みに聞こえないので不思議だ。
「なんか本当にすみません。色々考えると、心配になっちゃって……」
ソファの上に足を引き上げ、香澄はマキシワンピースの布の中で膝を抱えた。
「はは! カスミってホントに真面目だよね。好きだよ、そういうトコ」
「僕らがカスミ達の生活目線が分からないみたいにさ、カスミも僕らの考え方とか分からないのは仕方ないと思う。まぁ、でもカスミがそこまで言うなら、僕らも色々ミサトに合わせるよ」
「そう言って頂けて良かったです。……えーと、そうですね。お二人が上限額なしのカードの世界なら、私の知っている限度額五万円のカードを参考にして頂ければ」
「え!? そこまで!?」
「カスミ、月五万なの!? お小遣いあげようか!?」
例え話をしたというのに、双子は香澄の使っているカードがそうなのかと思い本気で心配してくる。
(この心配すると何かを与えたがるお父さん属性、やっぱり佑さんの従兄さんだな)
いやいや、と胸の前で手を振り、香澄は苦笑いする。
「私のカードの上限はもう少しありますよ? でも例えば、の話です。月収が二十万前後として、そこから家賃……札幌なら安い所で三、四万。あとは水道代とか光熱費、その他諸々を引いて、自分の自由になるお金ってそうそうないです。二十代女性だと、お小遣いは五万円いくいかないが多いと思います」
ちょっと前の香澄にとって当たり前の話をしたが、双子は衝撃的だったのかポカンとした顔をしている。
佑が二階から下りてきたが、割と真剣な雰囲気なので黙ってキッチンに行き水を飲んでいた。
「それが美里さんにとって当たり前の世界だと思ってください。デパコス化粧品は確かに憧れますが、今ならプチプラでも十分可愛くて性能のいいコスメがあります。洋服も通販で安くてデザインのいい服が沢山あります。その世界で満たされているので、いきなりどこに着ていくか分からない高価な服や、宝石を頂いても途方に暮れるだけなんです」
珍しく双子は呆然とする。
そんな、言ってしまえば〝怖い女性〟たちがライバルになると思うだけで、気が遠くなる。
白鳥の群れにアヒルの子が迷い込めば、虐められると相場が決まっている。
加えて金を持つ者なら、その虐め具合も想像を絶するかもしれない。
中には心優しい金持ちの女性もいるだろうが、往々にしてそういう人は双子のような存在のセックスフレンドにはならないものである。
「……お二人は、本当に美里さんに本気なんですか?」
「まぁ、ね?」
「そう。カスミっぽい匂いがプンプンするし、真面目そうでいい子だなって思ってるよ?」
双子らしい言い方に、香澄は溜め息をつく。
「そういう所、減点ですよ? 本命の前で他の人と比べるような事を言ったら駄目です。誰かに似ているだなんて、失礼甚だしいです」
「ごめんごめん。まぁ、でもさ。俺たちはまだミサトをそれほど知らないワケ。彼女自身が言った通りね?」
「ニオイで嗅ぎ分けてさ、ミサトはカスミみたいに真面目で相手を思い遣って、地道にコツコツやってくタイプっていうのは分かるんだ。だから彼女に照準を当てた」
「俺たちは基本的にやっぱり、カスミが大好きだからね?」
「う……。あ、ありがとうございます……」
キラキラと輝くブルーアイに見つめられると、顔だけはいいので多少照れてしまう。
「ですが、私から見ると属性で見分けて、思いつきで目の前にいた美里さんを好きになったように思えました。私としては、お二人が真剣なら応援したいです。でもちょっと色々軽率と思える箇所もあるので、美里さんがお二人に翻弄されて傷付かないか心配なんです」
双子は「軽率」と口の中で呟き、きょとんとして香澄を見ている。
「ご存知の通り、日本人は真面目気質です。肉体関係まで持つようになって、やっぱり本気じゃなかったとか、そういう関係は一般的ではありません。ほとんどの人は『遊ばれた』と思うでしょう。私は美里さんと友人でも知り合いでもありません。けど同じ故郷の一般人女性として、弄ぶような真似はしないと約束してください」
ペコリ、と頭を下げると、双子が微かに溜め息をついた。
「僕たちがカスミにどんだけ信頼がないかは分からないけどさ。本気だよ? 確かにまだ知らない事いっぱいあるけど、知りながら攻略するのもアリだと思うんだ」
「そ。今んところ二人で愛で倒したいって思ってるけど、そのうち殺し合いをしてでも取り合うか、三人で幸せエンドを目指すかは、また別の話。俺たちは〝今〟しか知らないし、〝今〟を最高に生きるって決めてるから」
双子の考えの一端が分かった気がして、香澄は微笑む。
「確かに私とお二人とでは、考え方が根本的に違うのは分かっています。価値観が違うのに、自分の目線でお説教をしてすみません」
「や、いいよ。生まれが違うのは仕方ないし」
こんな言葉も、双子が言えば嫌みに聞こえないので不思議だ。
「なんか本当にすみません。色々考えると、心配になっちゃって……」
ソファの上に足を引き上げ、香澄はマキシワンピースの布の中で膝を抱えた。
「はは! カスミってホントに真面目だよね。好きだよ、そういうトコ」
「僕らがカスミ達の生活目線が分からないみたいにさ、カスミも僕らの考え方とか分からないのは仕方ないと思う。まぁ、でもカスミがそこまで言うなら、僕らも色々ミサトに合わせるよ」
「そう言って頂けて良かったです。……えーと、そうですね。お二人が上限額なしのカードの世界なら、私の知っている限度額五万円のカードを参考にして頂ければ」
「え!? そこまで!?」
「カスミ、月五万なの!? お小遣いあげようか!?」
例え話をしたというのに、双子は香澄の使っているカードがそうなのかと思い本気で心配してくる。
(この心配すると何かを与えたがるお父さん属性、やっぱり佑さんの従兄さんだな)
いやいや、と胸の前で手を振り、香澄は苦笑いする。
「私のカードの上限はもう少しありますよ? でも例えば、の話です。月収が二十万前後として、そこから家賃……札幌なら安い所で三、四万。あとは水道代とか光熱費、その他諸々を引いて、自分の自由になるお金ってそうそうないです。二十代女性だと、お小遣いは五万円いくいかないが多いと思います」
ちょっと前の香澄にとって当たり前の話をしたが、双子は衝撃的だったのかポカンとした顔をしている。
佑が二階から下りてきたが、割と真剣な雰囲気なので黙ってキッチンに行き水を飲んでいた。
「それが美里さんにとって当たり前の世界だと思ってください。デパコス化粧品は確かに憧れますが、今ならプチプラでも十分可愛くて性能のいいコスメがあります。洋服も通販で安くてデザインのいい服が沢山あります。その世界で満たされているので、いきなりどこに着ていくか分からない高価な服や、宝石を頂いても途方に暮れるだけなんです」
珍しく双子は呆然とする。
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