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第八部・イギリス捜索 編
幼馴染みの訪日の知らせ
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『エミがこっち来るんだって。俺たちが日本に来てるって言ったら、ずるいって。久しぶりに幼馴染み四人、そろってディナーしない? もちろんカスミも! ミオたちを誘ってもいいよ!』
佑が何か言いたげな顔で香澄を見てくるが、香澄は電話の内容が分からない。
「ん?」という顔で見つめ返すと、佑はひとまず返事を保留したようだった。
「帰ってから話す。いいな?」
告げてからプツッと電話を切ってしまい、私用スマホの電源を切る。
「どうかしましたか? 家で何かトラブルでも……」
「いや、そうじゃない。…………あー……。先日言っていたもう一人の幼馴染みの、エミリアが日本に来るらしい」
「あ…………。なるほど」
あの金髪美女が、写真の中ではなく現実に迫ってくるのだ。
佑に気付かれないようにゆっくり長く息を吐き出し、香澄は気持ちを落ち着かせる。
(もう来ると決まっている相手に、嫌だとも何とも言えないし。幼馴染みって言ってるし、女性だから嫉妬するっていうのも違うよね)
「アロが五人でディナーをしたいって。うちの兄弟を誘うかは検討中だ」
「五人で……」
ポカンとする香澄に、佑がクスクス笑った。
「今さら香澄を仲間はずれにすると思ってたのか? 何かあるなら俺と香澄はセットに決まってる」
意外とそのセットという言葉が嬉しく、香澄は少しにやついて茶化す。
「バリューセット?」
「はは、何セットでもいいけど。どうせならもうちょっと色っぽいネーミングにしよう」
佑とプライベートで話していると、明野の事があって強張っていた心がじんわりほぐされていく。
これからも、もしかしたらエミリアの事で気を揉むかもしれない。
それはそれで、佑と双子がいるのだから何とかなるだろう。
多少甘えてしまっている感はあるが、ドイツの関係者なら彼女を良く知っている人に任せた方がいいに決まっている。
「到着はいつになるんですか? エミリアさんもうちに来ますか?」
「そこまでは聞いてない。だがエミリアは親戚でも何でもないし、普通にホテルに泊まるだろう」
「あちらで有名な保険会社の社長令嬢さんでしたっけ」
「うん、まぁ。本人はファッションブランド立ち上げているようだけど。まったく、歩む道筋まで同じだな」
「ふぅん……」
香澄は日本で代表的な保険会社を思い浮かべ、その社長令嬢だと想像してみた。
そしてあまりのビッグさに背筋を震わせる。
以前にあった百合恵だって、相当な令嬢だった。
(私、どこに行っても相手が大きすぎるな……。ドッグショーで優勝した美麗アフガンハウンドを前にした、豆柴みたいなものなんだろうか)
心の中でそう比喩してみて、自分を豆柴に当てはめるのは可愛すぎたと首を振る。
「香澄?」
「あっ、いえいえ。心の準備をしないとって思いまして」
「……何も心配する必要はないからな?」
ポンポンと軽く頭を撫でられた香澄は、「大丈夫です」と笑い返した。
その後、予定通りのスケジュールをこなし、二人が帰宅したのは二十二時半ほどだ。
「おかえり! カスミ!」
「寂しくて死ぬかと思った!」
玄関のドアを開くと双子がバッと出てきたので、愛犬のようだと一瞬思った。
ぎゅうーっと二人からハグをされ、ついでに頬にキスをされかけて佑が「こら!」と双子の顔面を掌で押した。
「ひどい! タスク!」
「鼻潰れる!」
「その程度の顔面ってことだ」
無事に佑の腕に戻った香澄は、「ひとまず靴を脱がせてください」とやっとパンプスを脱ぐ。
一日を終えて問題なさそうだったので、松井からは「通常業務に完全復帰としましょう」と太鼓判をもらった。
「着替えてきますね。ストッキング脱ぎたい……」
階段を上がっていく香澄の背中に「脱がせてあげる」という声より早く、双子の腕が伸び――、佑の手によって思いきり叩き落とされた。
佑が何か言いたげな顔で香澄を見てくるが、香澄は電話の内容が分からない。
「ん?」という顔で見つめ返すと、佑はひとまず返事を保留したようだった。
「帰ってから話す。いいな?」
告げてからプツッと電話を切ってしまい、私用スマホの電源を切る。
「どうかしましたか? 家で何かトラブルでも……」
「いや、そうじゃない。…………あー……。先日言っていたもう一人の幼馴染みの、エミリアが日本に来るらしい」
「あ…………。なるほど」
あの金髪美女が、写真の中ではなく現実に迫ってくるのだ。
佑に気付かれないようにゆっくり長く息を吐き出し、香澄は気持ちを落ち着かせる。
(もう来ると決まっている相手に、嫌だとも何とも言えないし。幼馴染みって言ってるし、女性だから嫉妬するっていうのも違うよね)
「アロが五人でディナーをしたいって。うちの兄弟を誘うかは検討中だ」
「五人で……」
ポカンとする香澄に、佑がクスクス笑った。
「今さら香澄を仲間はずれにすると思ってたのか? 何かあるなら俺と香澄はセットに決まってる」
意外とそのセットという言葉が嬉しく、香澄は少しにやついて茶化す。
「バリューセット?」
「はは、何セットでもいいけど。どうせならもうちょっと色っぽいネーミングにしよう」
佑とプライベートで話していると、明野の事があって強張っていた心がじんわりほぐされていく。
これからも、もしかしたらエミリアの事で気を揉むかもしれない。
それはそれで、佑と双子がいるのだから何とかなるだろう。
多少甘えてしまっている感はあるが、ドイツの関係者なら彼女を良く知っている人に任せた方がいいに決まっている。
「到着はいつになるんですか? エミリアさんもうちに来ますか?」
「そこまでは聞いてない。だがエミリアは親戚でも何でもないし、普通にホテルに泊まるだろう」
「あちらで有名な保険会社の社長令嬢さんでしたっけ」
「うん、まぁ。本人はファッションブランド立ち上げているようだけど。まったく、歩む道筋まで同じだな」
「ふぅん……」
香澄は日本で代表的な保険会社を思い浮かべ、その社長令嬢だと想像してみた。
そしてあまりのビッグさに背筋を震わせる。
以前にあった百合恵だって、相当な令嬢だった。
(私、どこに行っても相手が大きすぎるな……。ドッグショーで優勝した美麗アフガンハウンドを前にした、豆柴みたいなものなんだろうか)
心の中でそう比喩してみて、自分を豆柴に当てはめるのは可愛すぎたと首を振る。
「香澄?」
「あっ、いえいえ。心の準備をしないとって思いまして」
「……何も心配する必要はないからな?」
ポンポンと軽く頭を撫でられた香澄は、「大丈夫です」と笑い返した。
その後、予定通りのスケジュールをこなし、二人が帰宅したのは二十二時半ほどだ。
「おかえり! カスミ!」
「寂しくて死ぬかと思った!」
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ぎゅうーっと二人からハグをされ、ついでに頬にキスをされかけて佑が「こら!」と双子の顔面を掌で押した。
「ひどい! タスク!」
「鼻潰れる!」
「その程度の顔面ってことだ」
無事に佑の腕に戻った香澄は、「ひとまず靴を脱がせてください」とやっとパンプスを脱ぐ。
一日を終えて問題なさそうだったので、松井からは「通常業務に完全復帰としましょう」と太鼓判をもらった。
「着替えてきますね。ストッキング脱ぎたい……」
階段を上がっていく香澄の背中に「脱がせてあげる」という声より早く、双子の腕が伸び――、佑の手によって思いきり叩き落とされた。
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