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第八部・イギリス捜索 編
関係者として毅然と
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「お二人を見た目が格好いいからとか、外国人だからとか、そういうくくりで見るのはお控えください。特に〝外人〟という差別的な言葉を彼らは好みません。お二人は私の大切な家族になる方ですし、彼らには彼らの付き合い、世界があります。私が勝手に明野さんを紹介するなどできません」
きっぱりと言い切った香澄に、明野が鼻白む。
「何で赤松さんにそんな事を言う権利があるの? まだ社長とも結婚してないんでしょ? 私の恋を応援してくれたっていいじゃない。赤松さんは社長をゲットしたんだから」
文句を言う明野に、香澄は我慢強く説明を続ける。
「結婚していないのは事実です。ですが、クラウザー家に受け入れられた者として、彼らに不用意に人を近付ける訳にいきません。お二人が望んで求めたならともかく、勝手な事はできません」
「自分は特別に受け入れられたって言いたいの? 私みたいな一般人は駄目だって?」
なじる言い方に、香澄は歯噛みする。
「自分を特別だと思っていません。嫌な奴だと思われてもいいです。駄目なものは駄目です」
明野は大きく息を吸い、吐く。
高ぶった怒りを懸命に堪えていると分かったが、彼女はそれでもおもねる笑みを浮かべた。
「ねぇ、一目惚れなの。体の関係だけでもいいから、一晩だけでもいいから格好いい双子に求められたいの。赤松さんだってセレブ狙いならこの気持ち分かるでしょ? そんなシンデレラみたいな状況になってるんだからさぁ」
腕をとられ、「ねえねえ」と揺さぶられる。
その必死な様子が居たたまれない。
「すみません、無理です。自分の血縁になる存在に、ワンナイトラブを勧めるなどできません。雲の上の存在に憧れる気持ちは分かります。お二人は目を引きますし、格好いいと思います。……お願いですから、私の大事な〝家族〟に、興味本位で近付こうとしないでください」
頭を下げた香澄を見て、彼女は大きな溜め息をついた。
明野が無言になったのでそろりと顔を上げると、日傘の中から彼女が無感動な目でこちらを見ていた。
「もういいや。赤松さんって頑固で面倒臭い。いいね、赤松さんは社長に何もかも面倒みてもらって、服もコスメもイケメンも、何もかもタダで手に入るお姫様なんだから」
ぐさり、と言葉が刺さる。
(改めて言われなくても分かってるもん。佑さんに甘えてしまっているっていう事ぐらい)
心の中で呟き、香澄は会話を終わらせた。
「……ご期待に添えず、すみません。時間がないので、もう失礼します」
「すみませんなんて思ってないくせに。内心ざまーみろって思ってるんじゃないの? 幸せはぜーんぶ自分で独り占め! 嫌な女! せいぜい捨てられないようにね!」
最後にそう言って、明野は歩き出し人混みの中に消えていった。
香澄は溜め息をつき、時計を確認してカフェに向かう。
「これでいいんだ」と自分に言い聞かせながら――。
**
客を送り出したあと、香澄は佑と松井と共に会社を出た。
雑誌の撮影とインタビューがあるホテルに向かう道すがら、佑が声を掛けてくる。
「何かあったか?」
「え?」
ふと顔を上げると、真剣な顔をした彼がこちらを覗き込んでいた。
「昼から何となく、元気がないように思えたけど」
「いいえ、何もありません。社長」
鋭い佑に内心ギクリとしつつ、香澄は秘書として微笑む。
「それなら……、いいんだが」
もう一度「気になる」というようにチラリと見てから、佑は脚を組んだ。
「仕事ではこうしてほぼ二人で話せるのに、家に帰ると二人きりじゃないのか。なんだか皮肉だな」
御劔邸にはまだ双子がいて、香澄が仕事に復帰してからは、二人であちこち観光に行っているらしい。
いつまで滞在するのかは分からないが、鎌倉の方まで足を伸ばすだの、熱海温泉に行くだの、バカンスを満喫する気らしい。
だが香澄は佑の家に泊まる事でホテル代が浮くのなら、節約になるなとのんきな事を考えていた。
それを言うと、「あいつらに金の心配はない」と言われてしまった。
その時、着信音が鳴り、今は移動時間なので彼はスマホを出して誰なのか確認する。
「……あいつらから電話だ」
はぁ、と溜め息をつき、佑は画面をタップした。
「――もしもし」
『もしもし! タスク? ニュースニュース』
「は? 何だ。今は移動中だからいいが、仕事中なんだからな」
不機嫌を隠さない佑に、アロイスが言葉を続ける。
きっぱりと言い切った香澄に、明野が鼻白む。
「何で赤松さんにそんな事を言う権利があるの? まだ社長とも結婚してないんでしょ? 私の恋を応援してくれたっていいじゃない。赤松さんは社長をゲットしたんだから」
文句を言う明野に、香澄は我慢強く説明を続ける。
「結婚していないのは事実です。ですが、クラウザー家に受け入れられた者として、彼らに不用意に人を近付ける訳にいきません。お二人が望んで求めたならともかく、勝手な事はできません」
「自分は特別に受け入れられたって言いたいの? 私みたいな一般人は駄目だって?」
なじる言い方に、香澄は歯噛みする。
「自分を特別だと思っていません。嫌な奴だと思われてもいいです。駄目なものは駄目です」
明野は大きく息を吸い、吐く。
高ぶった怒りを懸命に堪えていると分かったが、彼女はそれでもおもねる笑みを浮かべた。
「ねぇ、一目惚れなの。体の関係だけでもいいから、一晩だけでもいいから格好いい双子に求められたいの。赤松さんだってセレブ狙いならこの気持ち分かるでしょ? そんなシンデレラみたいな状況になってるんだからさぁ」
腕をとられ、「ねえねえ」と揺さぶられる。
その必死な様子が居たたまれない。
「すみません、無理です。自分の血縁になる存在に、ワンナイトラブを勧めるなどできません。雲の上の存在に憧れる気持ちは分かります。お二人は目を引きますし、格好いいと思います。……お願いですから、私の大事な〝家族〟に、興味本位で近付こうとしないでください」
頭を下げた香澄を見て、彼女は大きな溜め息をついた。
明野が無言になったのでそろりと顔を上げると、日傘の中から彼女が無感動な目でこちらを見ていた。
「もういいや。赤松さんって頑固で面倒臭い。いいね、赤松さんは社長に何もかも面倒みてもらって、服もコスメもイケメンも、何もかもタダで手に入るお姫様なんだから」
ぐさり、と言葉が刺さる。
(改めて言われなくても分かってるもん。佑さんに甘えてしまっているっていう事ぐらい)
心の中で呟き、香澄は会話を終わらせた。
「……ご期待に添えず、すみません。時間がないので、もう失礼します」
「すみませんなんて思ってないくせに。内心ざまーみろって思ってるんじゃないの? 幸せはぜーんぶ自分で独り占め! 嫌な女! せいぜい捨てられないようにね!」
最後にそう言って、明野は歩き出し人混みの中に消えていった。
香澄は溜め息をつき、時計を確認してカフェに向かう。
「これでいいんだ」と自分に言い聞かせながら――。
**
客を送り出したあと、香澄は佑と松井と共に会社を出た。
雑誌の撮影とインタビューがあるホテルに向かう道すがら、佑が声を掛けてくる。
「何かあったか?」
「え?」
ふと顔を上げると、真剣な顔をした彼がこちらを覗き込んでいた。
「昼から何となく、元気がないように思えたけど」
「いいえ、何もありません。社長」
鋭い佑に内心ギクリとしつつ、香澄は秘書として微笑む。
「それなら……、いいんだが」
もう一度「気になる」というようにチラリと見てから、佑は脚を組んだ。
「仕事ではこうしてほぼ二人で話せるのに、家に帰ると二人きりじゃないのか。なんだか皮肉だな」
御劔邸にはまだ双子がいて、香澄が仕事に復帰してからは、二人であちこち観光に行っているらしい。
いつまで滞在するのかは分からないが、鎌倉の方まで足を伸ばすだの、熱海温泉に行くだの、バカンスを満喫する気らしい。
だが香澄は佑の家に泊まる事でホテル代が浮くのなら、節約になるなとのんきな事を考えていた。
それを言うと、「あいつらに金の心配はない」と言われてしまった。
その時、着信音が鳴り、今は移動時間なので彼はスマホを出して誰なのか確認する。
「……あいつらから電話だ」
はぁ、と溜め息をつき、佑は画面をタップした。
「――もしもし」
『もしもし! タスク? ニュースニュース』
「は? 何だ。今は移動中だからいいが、仕事中なんだからな」
不機嫌を隠さない佑に、アロイスが言葉を続ける。
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