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第七部・双子襲来 編
君みたいな子を探してた
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「……え?」
顎を軽く掴んで上向かされ、美里のボブヘアがサラリと揺れる。
目の前には綺麗な青い目があり、じっと見つめてくる。
――かと思えば、彼はふわっと優しく微笑み、美里の耳元で囁いてきた。
「俺たちと付き合わない?」
ボソッと耳元で囁かれ、なぜか腰に変な震えがきた。
美声――と言っていい。低くて艶やかで、ずっと話し掛けられたいと思う声だ。
「こま……ります」
呆気にとられたままポツンと返事をすると、頬を撫でられる。
「ひと目みて気に入ったんだ。純粋で正直そう。仕事にまじめで誠実だ」
バーに掛かっているジャズが、どこか遠く聞こえる。
青い目の魔法に掛かっているようだと思いながら、美里は小さく首を振りもう一度抗う。
「ですから……。困り、……ます」
「〝何〟に困るの?」
今度は反対側からクラウスが尋ね、大人っぽく笑う。
先ほどまでの明るく、下手をすれば子供っぽい雰囲気はどこへやら、今は二人とも大人の男性の雰囲気を醸し出している。
「俺たちの勘って結構当たるんだ。美里とはいい恋ができそう」
アロイスの言葉を聞き、彼らがこうやって行く先々でナンパをしているのだと思った美里は、一気に冷静になった。
「……クリーニングにつきまして、あとからフロントへご連絡ください。私は仕事に戻らせて頂きますね」
その塩対応に、なぜか双子は嬉しそうな顔をする。
「ねぇ、君の事、いいと思ったんだ」
アロイスはおしぼりがのっていたシルバートレイを持ったかと思うと、自分と美里の顔を周囲から隠す。
そして美里の顎を掴んだかと思うと、一瞬とても情熱的な目で彼女を見つめ――唇を奪ってきた。
「…………っ!?」
ちゅ……と音がしたのが、一瞬、何の音なのか分からなかった。
目を見開いたまま固まっている美里の目の前で、アロイスが妖艶に微笑む。
「君みたいな子を探してた」
「――――っ、…………」
固まっていた美里の顔が、カァァッと赤くなってゆく。
「いいなぁ、アロ」
後ろでクラウスが言い、自分がキスをされたのだと理解した美里は、赤面したり涙目になったりで大混乱だ。
ナンパな客には絶対に引っ掛からないと思っていたのに、双子の方が上手だったのか、スルッと唇を許してしまった。
「な……っ、あの……っ」
口をパクパクとさせて何か言おうとする美里の手に、アロイスはトレーを持たせる。
そしてその上に、クラウスが使っていないおしぼりをポンポンとのせていった。
「はい、おしぼり。仕事終わるまでここで待ってていい? ミサトが儲かるように沢山飲むし、迷惑掛ける飲み方はしないよ」
「お……お客様は神様です……」
もっと言うべき事は沢山あるのに、ぼんやりとした彼女の口から出た言葉はそれだった。
「僕、同じのもう一杯もらっていい?」
言われて、ハッと自分が失態を犯した事を思いだした。
「かしこまりました。粗相をしてしまった一杯は、お代金は結構です」
なんとか平静を保った時、オーダーが送られてくる。
機械が紙を吐き出す様子を見て、美里はフロア内にいるホールスタッフをそれとなく気にした。
(み……、見られてない……よね……)
見られていないと信じたい。
まだ顔は真っ赤だし動揺しているが、仕事中だ。
何とか気持ちを立て直した美里は、しっかりカウンターを拭いたあと、中へ戻って仕事を続ける。
そのあと、双子は英語ではない言葉で会話を始めた。
美里は何とか習得したと言えるのが英語だけなので、彼らが話しているのが単語や音の雰囲気からドイツ語だと察しても、どんな会話をしているのかまったく分からない。
今まで流暢な日本語を話していたのだから、意図的に自分に聞かせないつもりで話しているのだろう。
(お客様だし、セレブっぽい雰囲気があるし。……関係ない、関係ない)
自分に言い聞かせ、美里はバーテンダーの仕事に集中した。
顎を軽く掴んで上向かされ、美里のボブヘアがサラリと揺れる。
目の前には綺麗な青い目があり、じっと見つめてくる。
――かと思えば、彼はふわっと優しく微笑み、美里の耳元で囁いてきた。
「俺たちと付き合わない?」
ボソッと耳元で囁かれ、なぜか腰に変な震えがきた。
美声――と言っていい。低くて艶やかで、ずっと話し掛けられたいと思う声だ。
「こま……ります」
呆気にとられたままポツンと返事をすると、頬を撫でられる。
「ひと目みて気に入ったんだ。純粋で正直そう。仕事にまじめで誠実だ」
バーに掛かっているジャズが、どこか遠く聞こえる。
青い目の魔法に掛かっているようだと思いながら、美里は小さく首を振りもう一度抗う。
「ですから……。困り、……ます」
「〝何〟に困るの?」
今度は反対側からクラウスが尋ね、大人っぽく笑う。
先ほどまでの明るく、下手をすれば子供っぽい雰囲気はどこへやら、今は二人とも大人の男性の雰囲気を醸し出している。
「俺たちの勘って結構当たるんだ。美里とはいい恋ができそう」
アロイスの言葉を聞き、彼らがこうやって行く先々でナンパをしているのだと思った美里は、一気に冷静になった。
「……クリーニングにつきまして、あとからフロントへご連絡ください。私は仕事に戻らせて頂きますね」
その塩対応に、なぜか双子は嬉しそうな顔をする。
「ねぇ、君の事、いいと思ったんだ」
アロイスはおしぼりがのっていたシルバートレイを持ったかと思うと、自分と美里の顔を周囲から隠す。
そして美里の顎を掴んだかと思うと、一瞬とても情熱的な目で彼女を見つめ――唇を奪ってきた。
「…………っ!?」
ちゅ……と音がしたのが、一瞬、何の音なのか分からなかった。
目を見開いたまま固まっている美里の目の前で、アロイスが妖艶に微笑む。
「君みたいな子を探してた」
「――――っ、…………」
固まっていた美里の顔が、カァァッと赤くなってゆく。
「いいなぁ、アロ」
後ろでクラウスが言い、自分がキスをされたのだと理解した美里は、赤面したり涙目になったりで大混乱だ。
ナンパな客には絶対に引っ掛からないと思っていたのに、双子の方が上手だったのか、スルッと唇を許してしまった。
「な……っ、あの……っ」
口をパクパクとさせて何か言おうとする美里の手に、アロイスはトレーを持たせる。
そしてその上に、クラウスが使っていないおしぼりをポンポンとのせていった。
「はい、おしぼり。仕事終わるまでここで待ってていい? ミサトが儲かるように沢山飲むし、迷惑掛ける飲み方はしないよ」
「お……お客様は神様です……」
もっと言うべき事は沢山あるのに、ぼんやりとした彼女の口から出た言葉はそれだった。
「僕、同じのもう一杯もらっていい?」
言われて、ハッと自分が失態を犯した事を思いだした。
「かしこまりました。粗相をしてしまった一杯は、お代金は結構です」
なんとか平静を保った時、オーダーが送られてくる。
機械が紙を吐き出す様子を見て、美里はフロア内にいるホールスタッフをそれとなく気にした。
(み……、見られてない……よね……)
見られていないと信じたい。
まだ顔は真っ赤だし動揺しているが、仕事中だ。
何とか気持ちを立て直した美里は、しっかりカウンターを拭いたあと、中へ戻って仕事を続ける。
そのあと、双子は英語ではない言葉で会話を始めた。
美里は何とか習得したと言えるのが英語だけなので、彼らが話しているのが単語や音の雰囲気からドイツ語だと察しても、どんな会話をしているのかまったく分からない。
今まで流暢な日本語を話していたのだから、意図的に自分に聞かせないつもりで話しているのだろう。
(お客様だし、セレブっぽい雰囲気があるし。……関係ない、関係ない)
自分に言い聞かせ、美里はバーテンダーの仕事に集中した。
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