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第七部・双子襲来 編

北海道に向けてのフライト

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「タスク、僕らも札幌行くから」
「は!?」

 昼食の雑煮を食べ終わったあと、土産のチョコレートをコーヒーと共につまんでいると、急にそんな事を言われた。
 ちなみに高級チョコレートは、甘さがとても上品で幾つでも食べられそうだ。

 美味しい顔をしている香澄の隣で、佑は物凄い顔をして固まった。
 直後、慌てて隣に座っている香澄を抱き寄せる。

「いやー。流石にあれこれ言われたあとに、二人の邪魔はしないけどさ。札幌って行った事ないから、単純に観光で行ってみたいワケ。ホテル時間とかも、勿論邪魔しないし、カスミの実家に行く時もやめとく。でもさ、観光ぐらいカスミと一緒に回ったっていいだろ?」

 狙わないと言っておきながら、一緒に観光したがるのは何なのか。
 佑からしてみれば、デートしたがっていると言っても過言ではない。

「私は……、お墓参りと、夜さえ静かに過ごせるなら別に構いませんが」

 そろりと香澄が挙手し、佑に「どう?」と尋ねてくる。

「はー……。二人きりで小旅行できると思ってたのに……」

 佑は両手で顔を押さえ、心底うんざりというように溜め息をつく。

「って言ってもフライトは明日の夜なんでしょ? で、タスクの飛行機なんでしょ? 僕らの秘書とか護衛もいるけど、数人増えるぐらい、ナンクルナイサー!」

「クラ、それ沖縄。北海道は北だって。何だっけ? シタッケとイイベヤ? あとラーメン美味いんだっけ? ジンギスカンってチンギスハーンの事?」

 帰省の話をしてからスマホで調べたのか、アロイスが付け焼き刃で仕入れた知識を口に出す。

 香澄はそれがおかしくてクスクス笑い、佑はどうにもならないと諦め、溜め息をつくしかできなかった。



**



 金曜日に佑が出社したあと、香澄は札幌の両親に「今夜札幌に向かう」と連絡を入れた。
 それから荷物を纏め、帰省に向けて準備をする。

 双子はもともと旅行スタイルなので、大きな荷物は御劔邸に置いたまま、数日分の荷物を小さなスーツケースに詰め直すだけだ。

 そもそも彼らの場合、どこへ行くにも貴重品と仕事道具さえ持てば事足りる。
 佑もそうなのだが、現地で高級ホテルをとり服も現地で買ってしまえば、衣食住整う。

 御劔邸の留守は円山や斎藤に頼んでおく。

 夕方に佑が戻ってきて着替えたあと、護衛など少数人の同行者を伴って羽田空港に向かった。





 羽田空港まで車で行くと、空港の建物には入らず車のままフェンスでできたゲートを通り、飛行機まで直通だ。

 例の豪華すぎるプライベートジェットに乗ると、客室乗務員が品のいい笑みを浮かべて出迎えてくれた。
 白い革張りのシートに座ると、後ろで荷物を積んだり最終確認をしている間、ウェルカムドリンクのためのメニューが出される。

「えっと、じゃあホットコーヒーでお願いします」

 そのホットコーヒーも、佑が気に入っている豆を数種類常備しているので、説明を受けて自分の好みに合いそうな物をカフェオレにしてもらう事にした。
 双子はシャンパンを頼み、佑は冷たいお茶だ。

 雑談をしながら飲み物を飲んでいると、離陸の準備が整ったようで護衛たちも全員席に着いた。
 機長からアナウンスが入り、エンジンが動き出すと飛行機が滑走路に向けてゆっくり発進する。

 窓の外は夜で、上空まで行けば東京の夜景が一望できるのだろう。

 やがて機長のアナウンスのあと、滑走路についた飛行機が加速しだした。
 後方に重力を感じたあと、フワッと機体が浮いてグングン上昇してゆく。

「何だか夢みたい。東京に来る時は当分戻らない覚悟をしていたのに、ドイツで怪我をした時だって、佑さんは家族をあっという間に連れてきてくれた。ありがとうね」

 彼に向かって微笑みかけると、佑は小さく首を横に振る。

「大した事じゃないよ。この飛行機もただ待機させておくだけじゃ勿体ないから、使える時こそ使ってなんぼだと思ってる」
「んふふ、ありがとう。本当に佑さんは、至れり尽くせりの人だなぁ」

「そりゃあ、自慢の婚約者でありたいから。……少なくとも、健二さんで苦労した分、俺で沢山元を取ってもらわないと」
「んふふ、〝元〟って」

 思わず笑った時、聞き耳を立てていたのか双子が口を挟んできた。

「えー? ケンジって何? カスミの元彼?」
「どんな奴だったの?」

 すぐにけたたましく反応があるので、佑が渋い顔をして表情だけで「ごめん」と謝った。
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