311 / 1,550
第七部・双子襲来 編
お風呂上がりのフルーツ
しおりを挟む
「スッキリした? 逆にモヤモヤした?」
「んー……。スッキリ……はしてないかもです。でも、自分で訊きたいと思ったので、後悔はしてません。エミリアさんに直接お会いした事はありませんが、素敵な方なら私も頑張らないとな……って」
「カスミだよ~……」
「あぁー、カスミだぁ~……。可愛い、可愛い、可愛い……」
「えっ? ちょっと……、お二人とも……」
スッと自然に沸き起こった気持ちを口に出しただけなのに、さも特別な事を言ったかのようにされ、香澄は首を傾げる。
その後もチーズやナッツをおつまみにワインを楽しんでいたが、遅くなる前に御劔邸に戻る事にした。
**
(なるほど、……そういう問題があったか)
白金の御劔邸に戻ったあと、寝る前にやる事を思い浮かべた香澄は、ワインで高揚した気持ちを落ち着かせてゆく。
むしろここからが本番だ。
「カスミー、シャワー浴びたい」
「あ、待ってください。お風呂確認しますね」
三階建ての御劔邸には、各フロアに規模の差はあれど洗面所とバスルームがある。
昼間にカフェに向かった時、香澄は斎藤と島谷に向けてメモを書いておいた。
佑の従兄である双子が来ているので、可能だったら三階の客室を整えておいてもらえたら……という旨だ。
斎藤たちは香澄よりも佑と付き合いが長いので、勿論双子の事も知っているだろう。
御劔邸の事ならベテランの彼女たちに……と思ってお願いしてみたが、帰って来たら客室も何もかも整えられていて、思わず拝んだほどだ。
本当は一緒に双子に対応してくれるとありがたいのだが、そこは「お客様がいらっしゃっているなら、私たちは姿を現すのを控えます」というスタンスなのだろう。
双子と一緒にエレベーターで三階まで上がったあと、香澄はそれぞれの客室にあるバスルームを見て、お湯が張られてあるのをチェックした。
「せっかくですから、お風呂にゆっくり浸かってくださいね。フライトの疲れがとれますよ」
「ありがと! カスミも歩いて足疲れたでしょ。マッサージしてあげようか?」
いきなりクラウスがTシャツを脱ぎ、分厚い胸板にたくましく割れた腹筋が現れ、香澄は悲鳴を上げる。
「っきゃあああ! び、びびび、びっくりしたぁ!」
「ちょっともー、これぐらいで恥ずかしいの? 可愛いなぁー」
「俺にも恥じらうカスミ見せて」
アロイスまでも脱ぎ始め、香澄はもう悲鳴すら上げられず階下へ退散してゆく。
「お風呂上がったら、フルーツ用意してますから! 一階です!」
負け惜しみのように大きな声で告げ、香澄は顔の火照りを押さえる。
そして自分も着替えてメイクを落とす事にした。
男性の入浴は早いもので、二人が一階に下りてきたのは十分もかからないうちだ。
「は、早いですね?」
テレビのニュースを見ていた香澄は立ち上がり、キッチンに向かう。
「先日、夕張メロンを頂いたんです。あと、桃もあるので用意しますね」
「両方大好き!」
「僕ら、野菜もフルーツも好き嫌いないよ」
「分かりました。逆に何か苦手な食べ物ってあるんですか?」
冷蔵庫で冷やしていた果物を出し、香澄は包丁を出し切ってゆく。
「んーとね。何せオーマがバチバチの日本人だから、一般的にドイツ人が苦手とする物でもほとんどいけるよ。でもアレ。梅干し。あの酸っぱさは慣れないかな」
何度かトライした事があるのか、思い出しただけでアロイスが唇をすぼませる。
「僕らもさ、ドイツで友達に『美味しいしヘルシーだよ』って日本食勧めたんだよ。でもまずあいつら、納豆ダメだね」
自分たちは食べられるからか、クラウスが勝ち誇っている。
「そうそう。あとは餅は食感が駄目みたい。うっそーって思ったね。餅あんなに美味しいのに!」
「箸は大分グローバルになってきたけど、焼き魚の骨とか、チマチマした物を取り除くのは苦手そうかな。ヌードルなら普通に食べてるけどね。焼き魚は、ほぐしてあげたら『味はいい』って言うよ。僕らのいる南部だと、海が遠いから魚に慣れてない奴は結構いそうだなぁ。フライなら食べてそうだけどね。うちの一族が街を挙げて日本食を勧めていても、皆が皆、サシミとか寿司、日本的な魚料理を食べる訳じゃないしね」
言われて、ドイツでの日本料理や魚料理の扱いが何となく分かってきた。
「んー……。スッキリ……はしてないかもです。でも、自分で訊きたいと思ったので、後悔はしてません。エミリアさんに直接お会いした事はありませんが、素敵な方なら私も頑張らないとな……って」
「カスミだよ~……」
「あぁー、カスミだぁ~……。可愛い、可愛い、可愛い……」
「えっ? ちょっと……、お二人とも……」
スッと自然に沸き起こった気持ちを口に出しただけなのに、さも特別な事を言ったかのようにされ、香澄は首を傾げる。
その後もチーズやナッツをおつまみにワインを楽しんでいたが、遅くなる前に御劔邸に戻る事にした。
**
(なるほど、……そういう問題があったか)
白金の御劔邸に戻ったあと、寝る前にやる事を思い浮かべた香澄は、ワインで高揚した気持ちを落ち着かせてゆく。
むしろここからが本番だ。
「カスミー、シャワー浴びたい」
「あ、待ってください。お風呂確認しますね」
三階建ての御劔邸には、各フロアに規模の差はあれど洗面所とバスルームがある。
昼間にカフェに向かった時、香澄は斎藤と島谷に向けてメモを書いておいた。
佑の従兄である双子が来ているので、可能だったら三階の客室を整えておいてもらえたら……という旨だ。
斎藤たちは香澄よりも佑と付き合いが長いので、勿論双子の事も知っているだろう。
御劔邸の事ならベテランの彼女たちに……と思ってお願いしてみたが、帰って来たら客室も何もかも整えられていて、思わず拝んだほどだ。
本当は一緒に双子に対応してくれるとありがたいのだが、そこは「お客様がいらっしゃっているなら、私たちは姿を現すのを控えます」というスタンスなのだろう。
双子と一緒にエレベーターで三階まで上がったあと、香澄はそれぞれの客室にあるバスルームを見て、お湯が張られてあるのをチェックした。
「せっかくですから、お風呂にゆっくり浸かってくださいね。フライトの疲れがとれますよ」
「ありがと! カスミも歩いて足疲れたでしょ。マッサージしてあげようか?」
いきなりクラウスがTシャツを脱ぎ、分厚い胸板にたくましく割れた腹筋が現れ、香澄は悲鳴を上げる。
「っきゃあああ! び、びびび、びっくりしたぁ!」
「ちょっともー、これぐらいで恥ずかしいの? 可愛いなぁー」
「俺にも恥じらうカスミ見せて」
アロイスまでも脱ぎ始め、香澄はもう悲鳴すら上げられず階下へ退散してゆく。
「お風呂上がったら、フルーツ用意してますから! 一階です!」
負け惜しみのように大きな声で告げ、香澄は顔の火照りを押さえる。
そして自分も着替えてメイクを落とす事にした。
男性の入浴は早いもので、二人が一階に下りてきたのは十分もかからないうちだ。
「は、早いですね?」
テレビのニュースを見ていた香澄は立ち上がり、キッチンに向かう。
「先日、夕張メロンを頂いたんです。あと、桃もあるので用意しますね」
「両方大好き!」
「僕ら、野菜もフルーツも好き嫌いないよ」
「分かりました。逆に何か苦手な食べ物ってあるんですか?」
冷蔵庫で冷やしていた果物を出し、香澄は包丁を出し切ってゆく。
「んーとね。何せオーマがバチバチの日本人だから、一般的にドイツ人が苦手とする物でもほとんどいけるよ。でもアレ。梅干し。あの酸っぱさは慣れないかな」
何度かトライした事があるのか、思い出しただけでアロイスが唇をすぼませる。
「僕らもさ、ドイツで友達に『美味しいしヘルシーだよ』って日本食勧めたんだよ。でもまずあいつら、納豆ダメだね」
自分たちは食べられるからか、クラウスが勝ち誇っている。
「そうそう。あとは餅は食感が駄目みたい。うっそーって思ったね。餅あんなに美味しいのに!」
「箸は大分グローバルになってきたけど、焼き魚の骨とか、チマチマした物を取り除くのは苦手そうかな。ヌードルなら普通に食べてるけどね。焼き魚は、ほぐしてあげたら『味はいい』って言うよ。僕らのいる南部だと、海が遠いから魚に慣れてない奴は結構いそうだなぁ。フライなら食べてそうだけどね。うちの一族が街を挙げて日本食を勧めていても、皆が皆、サシミとか寿司、日本的な魚料理を食べる訳じゃないしね」
言われて、ドイツでの日本料理や魚料理の扱いが何となく分かってきた。
43
お気に入りに追加
2,552
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~
けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。
秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。
グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。
初恋こじらせオフィスラブ
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる