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第七部・双子襲来 編

食後のデザート

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「おじさんみたいなこと言わないでください。お二人だってまだまだお若いじゃないですか」

(そうだ。この二人は佑さんの従兄さんで、私にとっては将来の義従兄になるんだ。だから私一人でも相手をできるようにならないと)

 秘書ともなれば、商談相手の家族の接待をする場合もある。
 相手の好みや趣味などを調べるのは勿論、好きそうなレストランをセッティングして喜ばせる事も仕事のうちだ。

 なので、身内となる双子ぐらい接待できるようにならなければ、と思ったのだ。

「もう三十三歳だしね? 日本語だとミソジって言うんだっけ?」
「お二人ってお誕生日いつなんです?」

「十二月八日! 射手座だよ」
「あ、ちょっと近いですね。私、十一月二十日の蠍座です」

 初冬生まれという共通点が分かって嬉しくなったが、双子は香澄以上にニコニコしだす。

「教えてくれてありがとう!」
「今年の誕生日になったら、香澄が喜ぶようなプレゼントするね!」
「ちっ……、違います! そういう意味じゃなくて……!」

 悲鳴を上げかけた時、デザートとコーヒーがやってきた。

「あ、美味しそう……」

 飯山たちの事があり、一時的に気持ちが落ち込んでいた。
 けれど双子と話していると、次々に新しい話題が振られ、感情を揺さぶられる出来事が起こるので落ち込んでいられない。

「これも写真撮ろう……」

 運ばれてきたパンケーキは、あらかじめシェアしやすいようにカットされてある。
 その上に生クリームとフルーツがたっぷりあり、非常にSNS映えする。
 チーズケーキは玉子のように丸い形に、トロリとしたチーズが掛かっていて非常に美味しそうだ。

 カシャッと写真を撮りニコニコしている香澄を、ここぞとばかりにアロイスとクラウスが撮影した。

「えっ!? え……?」
「やっぱり甘い物を前にした女の子はいいねぇ」

「そうそう。花と女の子ぐらい相性がいい」
「今度カスミに花束プレゼントしようか。それを写真に撮ったら最高じゃない?」

「おー、それいいね。日本の花もいいけど、フランスも花市場がふんだんだから、舞台を二つ用意するのもいいよね」

 香澄を愛でる談義に彼女は閉口し、「いただきます」を言ってフォークを手に取った。

「それはそうと十一月の誕生石ってトパーズとシトリンでしょ?」

「トパーズって言ったら、やっぱりインペリアルトパーズかな。でもシェリートパーズもいいよね。石が柔らかめだからペンダント加工とかかなぁ」

「シトリンのオレンジがかった赤の色味もカスミに似合いそうだよね。あったかい人柄っていうか。でもさ、結婚記念日の十三年……日本だと五年だっけ? にタスクがプレゼントしそうじゃん? シャクだから僕たちが先にプレゼントしようか」

「絶対に受け取りませんよ?」

 にっこりと微笑み、香澄が言い切る。

「まったまたぁ~。女の子ってジュエリー大好きでしょ?」

「本当に私、それほど宝石に魅力を感じてないんですってば……。それに受け取るとしても、佑さんからしか受け取りません」

「Boo……」

 双子がブーイングする。
 それでもデザートをつつく手は着々と進んでいた。

「それはそうと、ここを出たらどこに向かいますか? 近場ですと、代官山とかもまたちょっと違うファッションをウォッチできると思いますけど」

 香澄の提案に、双子は顔を見合わせ笑みを深める。

「カスミは本当に気が利くね。これは変な意味じゃなくて、本当に秘書に向いてると思う。相手を楽しませつつ、望みを叶えるのが上手いよね。これがビジネスなら秘書的なスマイルを浮かべているんだろうけど、今は一人の女の子として接してくれてるから、本当に惹かれる」

 アロイスにまともな返事をされ、香澄は少し動揺する。

「あ……ありがとうございます」

「カスミみたいな子、僕たちも秘書に欲しいなぁ。いま雇ってる子も優秀だけど、仕事は仕事って割り切ってるからな。なんていうか、そこに一個人として楽しめる隙がないっていうか」

 香澄も双子の秘書と今朝挨拶をしたが、〝できる女〟という感じの女性だった。
 挨拶をしたら愛想程度に会釈してくれたが、その他は無表情でとっつきにくい。

 しかし双子のような主人を持つなら、ああいうタイプが向いているのかもしれない。
 双子がどれだけゴネても、ちゃんとスケジュール通りに働かせてくれそうだ。

「秘書は友達や恋人じゃないですからね」

 様々な感情を込めて呟くと、「あれぇ?」とアロイスが顔を覗き込んでくる。
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