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第七部・双子襲来 編

絶望的な勘違い

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 夢の中でも香澄は佑とセックスをし、いちゃついていた。

 自然と微笑んだ顔を、誰かが撫でてくれる。

 隣に滑り込んだ気配はきっと佑だろう。

 香澄は逞しい体をぎゅうっと抱き締め、頬ずりをした。
 額にキスをされ、やわやわと髪を撫でられるのが気持ちいい。

 香澄は〝彼〟の胸板に顔を押しつけ、その下腹部に手を伸ばす。

(佑さん……。もっかいシよ。佑さんと気持ちいい事するの、大好き……)

 布越しに屹立に触れ、香澄はゆっくりとそれを愛撫してゆく。
 すぐに芯を持ち始めたそれにクスクスと笑った時、ごろんと仰向けに押し倒された。

「……た、……すく、さん」

 もにゃもにゃと寝言を口にし、香澄は〝彼〟に抱きついた。

(……あれ、服着てる? もう起きてたのかな……)

 うっすら目を開けると、金髪碧眼の見るも麗しい顔が、キスをしようとしているところだ。

「!!」

 ビシッと香澄の心に亀裂が走り、相手が誰かと理解する前に喉から絶叫が漏れていた。

「っいあやあああぁああぁっ!!」

 全力で相手をドンッと突き飛ばし、ついでに右足でドカドカと蹴る。

「ちょっと!」

 相手は文句を言いながら、ドスンとベッドから転がり落ちた。

「なぁ……っ、な、……なぁっ!?」

 肌掛けで胸元を隠し起き上がると、床の上にはTシャツジーパン姿の……どちらだろう。

 アロイスかクラウスのどちらかがいる。
 いや、雰囲気から言ってこれはクラウスだ。

「クラウスさんっ!?」
「おー! ご名答! よく寝起きで区別ついたね? さっすが僕のカスミ」

「えぇっ!? ど、どうしているんですか!? か、鍵……っ、佑さん!? 佑さん!」
「タスクは留守だよ。マルヤマから聞いた」

 離れで御劔邸の警備を担っている円山の名前が出て、香澄は半泣きになる。

「円山さぁん! どうして通したんですか!」

「そりゃあ、アロが引きつけてるあいだに、僕が入り込んだよね? こういうの日本のTVショーであるんでしょ? 寝起きドッキリって。シュヴァンツ(ちん○)しごかれて僕もドッキリしたけど」

 床に胡座を掻いたまま、クラウスがペロリと唇を舐めて笑う。

「お願いしますっ! 後生ですから、一生のお願いですからっ、忘れてくださいっ」
「へぇえー? 〝お願い〟かぁ。どうしよっかなぁー」

 真っ青と真っ赤を繰り返す香澄の傍らで、クラウスがニヤニヤ笑っている。
 そのとき階下で、アロイスらしき声と久住の声が聞こえてきた。

「カースーミー! あーそーぼー!」
「お、アロが来たか。もうちょっと時間稼いでくれれば良かったのに」

「……詰んだ」

 呆然とした香澄が呟き時計を確認すると、八時前だ。
 香澄が起きるのが遅かった……のもあるが、人の家に上がり込むには早すぎる。

 ハッと気付くと、昨晩のまま下着が散乱していた。
 慌てて手を伸ばし肌掛けの下に隠そうとするが、ヒョイッと先に取られてしまう。

「へぇー。カスミ、セクシーなのつけてるね?」
「お願いですから返してくださいぃぃ……っ」

 半べそ状態になった香澄は、佑が不在なのもありどうしたらいいのか分からない。

「と、とにかく下におりてください! 着替えてからちゃんとおもてなししますから!」

「ふぅん? じゃあ、僕ら朝食まだだから、日本食作ってくれる? ミソスープ飲みたいな。あ、でも面倒なら一緒にコンビニオニギリ買いにいかない?」

「ん、んぅ、は、はいっ! はい! 分かりましたから! ですから今は出て行ってください!」
「りょーかい」

 クラウスは立ち上がって手の中のパンティをヒラリと手放すと、素直に寝室を出て行ってくれた。

「…………なんなの…………」

 やっと一人になれば香澄は真顔になって呟き、両手で頭を抱えた。

(やばい。非常にやばい。寝ぼけていたとは言え、クラウスさんに……)

 手の中の感触を思い出し、佑以外の男性のモノに触れてしまったと恥ずかしさと後悔が押し寄せる。
 はぁー……と重たく長い溜め息をつく。

 だが階下から双子がキャッキャと騒いでいるのを聞き、佑のお気に入りのコレクションでも壊されたら大変だと、気合いを入れて起きる事にした。
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