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第六部・社内旅行 編
事後処理
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短期間日本に来るのなら、まぁ大丈夫だろうと思っている。
海外のバカンス制度というものは、日本では馴染みがないが、大人の長期休みみたいなものだと、うっすら理解している。
約一か月少し、あの双子がどれぐらい日本に興味を示すのか、それが問題だ。
気分は白羽の矢が当たらないように祈る、長者の娘のような気持ちだ。
「まぁ、考える事はいっぱいあるけど。懇親会の事もあるし、順番に消化していこう?」
「そうだな。……おっぱい」
佑も溜め息をつくと、それだけが慰めと言わんばかりに香澄の胸を弄り始めた。
「んもぉ……。毎日エッチは駄目だからね? 朝お見送りできなくなっちゃう」
よしよしと佑の髪を撫でつつ、香澄は目を閉じて彼の香りを吸い込んだ。
**
その翌日、香澄は佑に言われるがままにワールドガーデンでのアカウントを取得し直し、Wメールも新しいアドレスにした。
アドレスを知っている者への連絡や、会員登録のし直しは少し面倒だったが、仕方がない。
佑が金曜日の仕事に行っている間、香澄は御劔邸でノートパソコンとにらめっこをしていた。
佑にメールの事を話してしまうと、一気に気持ちが楽になった。
斎藤や久住たち、円山などにも話をし、松井や運転手、佑の護衛にも連絡がいく。
大げさにしたくないという気持ちはあるが、命に関わる脅しを受けた。
護衛としては情報がすべてを左右するので、彼らに教えるのは必須だ。
「それにしても大変ですね。誰もが使えるWメールだから安心……と思いきや、そうでもないんですから」
昨日佑が買って来てくれたスイーツの残りを、斎藤と一緒につついていた時、彼女が言う。
脅迫メールについて、彼女は勿論怒ってくれたし、「何かあったら絶対お守りしますから」と言ってくれた。
そんな風に親身になってくれる人がいるのが、とてもありがたい。
「そうですね……。佑さんの隣にいるんだから覚悟はしていましたけど、ちょっとこれは斜め上でした」
頷く香澄は、白いTシャツの上にゆったりとした空色のキャミワンピを着て、髪の毛をお団子にしている。
ストロベリームースは美味しいのに、精神的なショックによってまだ味覚が蘇っていない感じがした。
「赤松さんに万が一の事があったら、御劔さんだって精神的に動揺してしまうでしょう。いくら大企業の経営者で、何があっても周りがしっかりサポートしていると言っても、彼だって生身の人間です」
「ですよね……」
頷いた香澄は、ちゅっとスプーンをしゃぶってから溜め息をつく。
「あーあ……。南の島でも行って、海辺でボーッとしたいなぁ。海外なんて贅沢は言わない。せめて沖縄行きたい……」
「あら、いいですねぇ。私もチャンプルー料理やソーキそば、サーターアンダギー大好きなんですよ。沖縄料理美味しいですよね」
「そうなんです! 現地でシークワーサーのジュースを飲んだんですけど、酸っぱくて美味しくて!」
話題がコロコロ変わるのも女性ならではだ。
おまけに香澄は食べ物の話題が大好きだ。
彼女が家にいてくれると、自然と気持ちが明るくなり、「ありがたいな」とつくづく思うのだった。
アドレスを変えてからも、メールを受信するたびに怖くなる。
恐らくもう、あれは香澄の中でトラウマになっているのだ。
それでも自分には味方が大勢いると思うと心強い。
この御劔邸だって、セキュリティは万全だ。
札幌の家族には心配をかけたくないので何も言わない。
その分、佑が事情を打ち明けた人には、ありがたく頼りにさせてもらう事にする。
――きっと大丈夫。
日々佑や周囲の人に甘やかされ、優しくされているうちに、香澄は少しずつ嫌な感情を日常に紛れさせていった。
**
そして七月四週目の週末に、懇親会を迎える。
「本当にいいのかな?」
お昼前には、すでに小金井が車を暖気していた。
海外のバカンス制度というものは、日本では馴染みがないが、大人の長期休みみたいなものだと、うっすら理解している。
約一か月少し、あの双子がどれぐらい日本に興味を示すのか、それが問題だ。
気分は白羽の矢が当たらないように祈る、長者の娘のような気持ちだ。
「まぁ、考える事はいっぱいあるけど。懇親会の事もあるし、順番に消化していこう?」
「そうだな。……おっぱい」
佑も溜め息をつくと、それだけが慰めと言わんばかりに香澄の胸を弄り始めた。
「んもぉ……。毎日エッチは駄目だからね? 朝お見送りできなくなっちゃう」
よしよしと佑の髪を撫でつつ、香澄は目を閉じて彼の香りを吸い込んだ。
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その翌日、香澄は佑に言われるがままにワールドガーデンでのアカウントを取得し直し、Wメールも新しいアドレスにした。
アドレスを知っている者への連絡や、会員登録のし直しは少し面倒だったが、仕方がない。
佑が金曜日の仕事に行っている間、香澄は御劔邸でノートパソコンとにらめっこをしていた。
佑にメールの事を話してしまうと、一気に気持ちが楽になった。
斎藤や久住たち、円山などにも話をし、松井や運転手、佑の護衛にも連絡がいく。
大げさにしたくないという気持ちはあるが、命に関わる脅しを受けた。
護衛としては情報がすべてを左右するので、彼らに教えるのは必須だ。
「それにしても大変ですね。誰もが使えるWメールだから安心……と思いきや、そうでもないんですから」
昨日佑が買って来てくれたスイーツの残りを、斎藤と一緒につついていた時、彼女が言う。
脅迫メールについて、彼女は勿論怒ってくれたし、「何かあったら絶対お守りしますから」と言ってくれた。
そんな風に親身になってくれる人がいるのが、とてもありがたい。
「そうですね……。佑さんの隣にいるんだから覚悟はしていましたけど、ちょっとこれは斜め上でした」
頷く香澄は、白いTシャツの上にゆったりとした空色のキャミワンピを着て、髪の毛をお団子にしている。
ストロベリームースは美味しいのに、精神的なショックによってまだ味覚が蘇っていない感じがした。
「赤松さんに万が一の事があったら、御劔さんだって精神的に動揺してしまうでしょう。いくら大企業の経営者で、何があっても周りがしっかりサポートしていると言っても、彼だって生身の人間です」
「ですよね……」
頷いた香澄は、ちゅっとスプーンをしゃぶってから溜め息をつく。
「あーあ……。南の島でも行って、海辺でボーッとしたいなぁ。海外なんて贅沢は言わない。せめて沖縄行きたい……」
「あら、いいですねぇ。私もチャンプルー料理やソーキそば、サーターアンダギー大好きなんですよ。沖縄料理美味しいですよね」
「そうなんです! 現地でシークワーサーのジュースを飲んだんですけど、酸っぱくて美味しくて!」
話題がコロコロ変わるのも女性ならではだ。
おまけに香澄は食べ物の話題が大好きだ。
彼女が家にいてくれると、自然と気持ちが明るくなり、「ありがたいな」とつくづく思うのだった。
アドレスを変えてからも、メールを受信するたびに怖くなる。
恐らくもう、あれは香澄の中でトラウマになっているのだ。
それでも自分には味方が大勢いると思うと心強い。
この御劔邸だって、セキュリティは万全だ。
札幌の家族には心配をかけたくないので何も言わない。
その分、佑が事情を打ち明けた人には、ありがたく頼りにさせてもらう事にする。
――きっと大丈夫。
日々佑や周囲の人に甘やかされ、優しくされているうちに、香澄は少しずつ嫌な感情を日常に紛れさせていった。
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そして七月四週目の週末に、懇親会を迎える。
「本当にいいのかな?」
お昼前には、すでに小金井が車を暖気していた。
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