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第六部・社内旅行 編
健康のために
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『承知しました。何時頃のお出掛けになりますか? 車の準備もございますので』
「午後一番に合わせて行きたいので、十二時半時には着いていたいです。予約してあるのは、白金秋花レディースクリニックです。そのあと少しブラブラしたいと思っているのですが……」
『承知しました。久住たちにもそのように伝えておきます』
用件を伝え、電話を切る。
「じゃあ、準備してきますね」
その頃には来ていた斎藤に挨拶をし、香澄は行動を開始した。
ピルの話はしたばかりだが、本当はずっと前から考えていた事でもあった。
佑に言うと、理解できないのに困らせ、心配させるだけなので言わなかったが、香澄はPMSでかなり眠たくなり、そして落ち込むタイプだった。
たまにイライラしてしまう事もあるので、佑に八つ当たりなどしたくない。
その改善の手段として低容量ピルがあるという事は、大分前から知っていて気にはなっていたのだ。
だから、今日の病院は〝急に〟ではない。
先日の会話があったからでもない。
(上手に佑さんに伝えられたらいいんだけどな。でも、『婦人科に行きたい』っていう相談ってしづらいし)
佑は副作用を心配してくれていて、それに対し香澄は「よく考える」と返事をした。
それに彼は納得してくれ、再度話し合おうとまで言ってくれたのに、香澄は会話の前から自分一人で決めてしまっていた。
(こういうの、家族になるのに相談しないって良くないのかな。良くないんだったら、改めないと。……でも、今回だけは)
もともと香澄は病院に行くのに抵抗がないタイプだ。
何かあればすぐ受診し、自分を安心させている。
医療費が掛かってしまうのは仕方がないが、気になるほどの症状なのにいつまでも悩んでいるよりは、、さっと病院に行ったほうが生産的だと思っている。
札幌にいた頃から、仕事を続けるためにまず健康維持を努めていた。
なので健康のために病院にかかる事は当然だと考えていた。
「久住さんたちには、『佑さんには自分で言いますから』って、口止めしておこう」
ウォークインクローゼットで服を選びつつ、そう決めてしまう。
今日ピルを処方してもらえたとしても、佑に相談するのはタイミングのいい時にしようと決めた。
今日はメールについて相談するつもりなので、雰囲気が悪くなったところでピルの話はあまりしたくない。
そんな彼女は、佑が常に香澄のスマホのGPSをチェックしているなど、知らないのだった。
**
佑が帰ってきたのは、十八時前だ。
いつも接待がてらの食事やらがある事を思えば、仕事を終えてすぐ帰ってきたのだろう。
基本的に経営者や役員というのは、労働基準法に則った働き方をしていない。
休みだって有給のような制度はないし、逆に必要があれば盆や元旦、深夜でも仕事に対応する必要がある。
だからその日の業務を終えてすぐ帰ろうと思えば、本当なら午前中でも帰宅できるのだ。
「おかえりなさい」
「ただいま」
玄関で物音がしたので出迎えると、佑が両腕を広げてハグを求める。
「はい、ぎゅー」
今日は社外での仕事がなかったからか、細身のパンツにTシャツ、ジャケットとカジュアルな格好だ。
シンプルなコーディネートなのに、身悶えするぐらい格好いいのは流石だ。
(いいなぁ……。社員さん、朝一番に佑さんを見られるんだ)
香澄はと言えば一緒に暮らしているが、今日のように起きる前から出かけられると、会えるのが夜になってしまう。
「鞄持つよ」
「いいよ」
鞄を持とうとしたのにヒョイと避けられ、むぅと膨れてみせる。
それを見て佑はクツクツと笑って、リビングに向かう。
奥から斎藤が出てきて、佑に挨拶をした。
「御劔さん、お帰りなさいませ。夕食を温めますね」
「斎藤さん、いつもありがとうございます」
斎藤はキッチンに向かって、すでに用意してあった料理を温めたり、温度の関係ない料理を器に盛ったりなどを始める。
佑は香澄に紙袋を掲げてみせた。
「今日も暑かったから、独断と偏見でプリンとゼリーを買ってきた」
「やったぁ! 冷蔵庫入れるね」
佑から紙袋を受け取ると、香澄は冷蔵庫を開ける。
「午後一番に合わせて行きたいので、十二時半時には着いていたいです。予約してあるのは、白金秋花レディースクリニックです。そのあと少しブラブラしたいと思っているのですが……」
『承知しました。久住たちにもそのように伝えておきます』
用件を伝え、電話を切る。
「じゃあ、準備してきますね」
その頃には来ていた斎藤に挨拶をし、香澄は行動を開始した。
ピルの話はしたばかりだが、本当はずっと前から考えていた事でもあった。
佑に言うと、理解できないのに困らせ、心配させるだけなので言わなかったが、香澄はPMSでかなり眠たくなり、そして落ち込むタイプだった。
たまにイライラしてしまう事もあるので、佑に八つ当たりなどしたくない。
その改善の手段として低容量ピルがあるという事は、大分前から知っていて気にはなっていたのだ。
だから、今日の病院は〝急に〟ではない。
先日の会話があったからでもない。
(上手に佑さんに伝えられたらいいんだけどな。でも、『婦人科に行きたい』っていう相談ってしづらいし)
佑は副作用を心配してくれていて、それに対し香澄は「よく考える」と返事をした。
それに彼は納得してくれ、再度話し合おうとまで言ってくれたのに、香澄は会話の前から自分一人で決めてしまっていた。
(こういうの、家族になるのに相談しないって良くないのかな。良くないんだったら、改めないと。……でも、今回だけは)
もともと香澄は病院に行くのに抵抗がないタイプだ。
何かあればすぐ受診し、自分を安心させている。
医療費が掛かってしまうのは仕方がないが、気になるほどの症状なのにいつまでも悩んでいるよりは、、さっと病院に行ったほうが生産的だと思っている。
札幌にいた頃から、仕事を続けるためにまず健康維持を努めていた。
なので健康のために病院にかかる事は当然だと考えていた。
「久住さんたちには、『佑さんには自分で言いますから』って、口止めしておこう」
ウォークインクローゼットで服を選びつつ、そう決めてしまう。
今日ピルを処方してもらえたとしても、佑に相談するのはタイミングのいい時にしようと決めた。
今日はメールについて相談するつもりなので、雰囲気が悪くなったところでピルの話はあまりしたくない。
そんな彼女は、佑が常に香澄のスマホのGPSをチェックしているなど、知らないのだった。
**
佑が帰ってきたのは、十八時前だ。
いつも接待がてらの食事やらがある事を思えば、仕事を終えてすぐ帰ってきたのだろう。
基本的に経営者や役員というのは、労働基準法に則った働き方をしていない。
休みだって有給のような制度はないし、逆に必要があれば盆や元旦、深夜でも仕事に対応する必要がある。
だからその日の業務を終えてすぐ帰ろうと思えば、本当なら午前中でも帰宅できるのだ。
「おかえりなさい」
「ただいま」
玄関で物音がしたので出迎えると、佑が両腕を広げてハグを求める。
「はい、ぎゅー」
今日は社外での仕事がなかったからか、細身のパンツにTシャツ、ジャケットとカジュアルな格好だ。
シンプルなコーディネートなのに、身悶えするぐらい格好いいのは流石だ。
(いいなぁ……。社員さん、朝一番に佑さんを見られるんだ)
香澄はと言えば一緒に暮らしているが、今日のように起きる前から出かけられると、会えるのが夜になってしまう。
「鞄持つよ」
「いいよ」
鞄を持とうとしたのにヒョイと避けられ、むぅと膨れてみせる。
それを見て佑はクツクツと笑って、リビングに向かう。
奥から斎藤が出てきて、佑に挨拶をした。
「御劔さん、お帰りなさいませ。夕食を温めますね」
「斎藤さん、いつもありがとうございます」
斎藤はキッチンに向かって、すでに用意してあった料理を温めたり、温度の関係ない料理を器に盛ったりなどを始める。
佑は香澄に紙袋を掲げてみせた。
「今日も暑かったから、独断と偏見でプリンとゼリーを買ってきた」
「やったぁ! 冷蔵庫入れるね」
佑から紙袋を受け取ると、香澄は冷蔵庫を開ける。
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✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
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○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
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(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
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