239 / 1,550
第六部・社内旅行 編
斎藤の気遣い
しおりを挟む
「ん……っ、ん、んっ!?」
御劔邸に戻って玄関のドアが閉まった途端、佑にキスをされた。
目を白黒させていると、佑はドアに香澄を押しつけ、サマードレス越しに体をまさぐってくる。
「ちょ……っ、ちょっと待っ……ん、んむ、……んぅっ」
急な展開に戸惑ったが、肉厚な舌で荒々しく求められると、なし崩しになりそうだ。
プロレスの〝ロープ〟のように佑の背中を叩いていると、色っぽい吐息をついた彼がもの言いたげに見つめてくる。
「……駄目か?」
体が大きいくせに、こういう時だけ捨て犬のような目をするのでずるい。
「も、もうちょっと落ち着いてからにしよう? 夜とか……」
香澄だって数日の出張とはいえ、久しぶりに佑と会えて嬉しい。
けれど出張から戻ってすぐ玄関で……となると、「ちょっと待って!」となるのだ。
何より、リビングには斎藤がいる。
「……じゃあ、シャワー浴びたら」
溜め息をついて佑が唇を舐め、前髪を掻き上げる。
その仕草一つ一つがやけに色っぽく、香澄は平静でいられなくなった。
(どどど、どうしよう……。早く帰ってきてほしいと思ってたけど、これはこれで刺激が強すぎるかも……)
とりあえず二人とも靴を脱ぎ、中へ入る事にした。
ちなみに、佑の荷物は松井が持って来て玄関ホールに置いてあった。
香澄は玄関のチェストに置いてある、松葉杖のキャップを嵌めてリビングに向かう。
「あれっ?」
斎藤がいると思っていたのに、リビングには誰の姿もない。
「ここにメモがあるけど」
佑がテーブルの上に置いてあったメモを見せてくれた。
『御劔さん、出張お疲れ様です。空港で赤松さんと一緒に何か召し上がると思いますので、今日は作り置きのおかずで夕食を済ませて頂けたらと思います。』
書いてあるのはそれだけだが、斎藤が出張帰りの佑を気遣って、香澄と二人きりにしてくれたのが見え見えだ。
「うう……」
思わず赤面した彼女の肩をポンポンと叩き、佑はにやつきを誤魔化しながら言う。
「香澄は座っていて。コーヒー淹れるから。その前に荷物置いてくる」
「あっ、いいよ! コーヒーぐらい淹れられるから」
佑は足早にリビングを去り、玄関ホールにある荷物を持って二階に上がっていく。
階上からは、やや急ぎめの物音が聞こえ、彼がとてもルンルン状態なのが分かった。
「……もう」
照れ隠しに溜め息をつき、香澄はキッチンに向かうとポットに水を入れてIHコンロにかける。
豆を出してミルに入れていると、佑のためにコーヒーを淹れられる実感が湧き、ニヤニヤしてくる。
御劔邸で暮らすようになって、高級なコーヒー豆に慣れてしまった。
高級と言えばブルーマウンテンのイメージが強いのだが、佑がこだわっているコーヒー店があり、そこのブレンドや気分によって様々な種類の豆を使い分けている。
札幌で一人暮らしをしていた時は、コーヒーが好きでもスーパーでお徳用の粉コーヒーを買っていた程度だ。
豆には憧れていたのだが、どうにも電動ミルで砕く時の音がうるさいのではないかと思い、一人で遠慮をしていた。
(それが今は、高級な豆を毎日好きな種類、好きなだけ飲んでいるんだもんなぁ)
佑はハワイ出張もたまにあるらしい。
出張として赴かなくても、コーヒー農園を営んでいる現地の友人から、定期的にコナコーヒーを買い付けている。
コナコーヒーも、ブルーマウンテンと同じぐらい高価な印象だ。
話を聞けば、ハワイにも佑の別荘があるらしく、その関係で現地にいる色んな人と知り合いになったらしい。
ハワイは過ごしやすく、世界的な事業に成功した富裕層が、ゆったりと暮らしている土地でもある。
きっとパーティーなどにも招待され、そこで人脈を広げた結果なのだろう。
彼の人脈の広さを凄いと思うが、様々な言語を話せてすぐ色んなと仲良くなれるところも尊敬している。
そんな事を思いながら、香澄は戸棚を開く。
「斎藤さんと一緒に作ったお茶請けは……と」
時間を確認すれば夕飯時だが、今日はうどんを食べてしまったしもう食事はいいだろう。
そのあいだにも佑がトントンと足音をたてて階段を下り、サッとバスルームの方へ消えてしまった。
御劔邸に戻って玄関のドアが閉まった途端、佑にキスをされた。
目を白黒させていると、佑はドアに香澄を押しつけ、サマードレス越しに体をまさぐってくる。
「ちょ……っ、ちょっと待っ……ん、んむ、……んぅっ」
急な展開に戸惑ったが、肉厚な舌で荒々しく求められると、なし崩しになりそうだ。
プロレスの〝ロープ〟のように佑の背中を叩いていると、色っぽい吐息をついた彼がもの言いたげに見つめてくる。
「……駄目か?」
体が大きいくせに、こういう時だけ捨て犬のような目をするのでずるい。
「も、もうちょっと落ち着いてからにしよう? 夜とか……」
香澄だって数日の出張とはいえ、久しぶりに佑と会えて嬉しい。
けれど出張から戻ってすぐ玄関で……となると、「ちょっと待って!」となるのだ。
何より、リビングには斎藤がいる。
「……じゃあ、シャワー浴びたら」
溜め息をついて佑が唇を舐め、前髪を掻き上げる。
その仕草一つ一つがやけに色っぽく、香澄は平静でいられなくなった。
(どどど、どうしよう……。早く帰ってきてほしいと思ってたけど、これはこれで刺激が強すぎるかも……)
とりあえず二人とも靴を脱ぎ、中へ入る事にした。
ちなみに、佑の荷物は松井が持って来て玄関ホールに置いてあった。
香澄は玄関のチェストに置いてある、松葉杖のキャップを嵌めてリビングに向かう。
「あれっ?」
斎藤がいると思っていたのに、リビングには誰の姿もない。
「ここにメモがあるけど」
佑がテーブルの上に置いてあったメモを見せてくれた。
『御劔さん、出張お疲れ様です。空港で赤松さんと一緒に何か召し上がると思いますので、今日は作り置きのおかずで夕食を済ませて頂けたらと思います。』
書いてあるのはそれだけだが、斎藤が出張帰りの佑を気遣って、香澄と二人きりにしてくれたのが見え見えだ。
「うう……」
思わず赤面した彼女の肩をポンポンと叩き、佑はにやつきを誤魔化しながら言う。
「香澄は座っていて。コーヒー淹れるから。その前に荷物置いてくる」
「あっ、いいよ! コーヒーぐらい淹れられるから」
佑は足早にリビングを去り、玄関ホールにある荷物を持って二階に上がっていく。
階上からは、やや急ぎめの物音が聞こえ、彼がとてもルンルン状態なのが分かった。
「……もう」
照れ隠しに溜め息をつき、香澄はキッチンに向かうとポットに水を入れてIHコンロにかける。
豆を出してミルに入れていると、佑のためにコーヒーを淹れられる実感が湧き、ニヤニヤしてくる。
御劔邸で暮らすようになって、高級なコーヒー豆に慣れてしまった。
高級と言えばブルーマウンテンのイメージが強いのだが、佑がこだわっているコーヒー店があり、そこのブレンドや気分によって様々な種類の豆を使い分けている。
札幌で一人暮らしをしていた時は、コーヒーが好きでもスーパーでお徳用の粉コーヒーを買っていた程度だ。
豆には憧れていたのだが、どうにも電動ミルで砕く時の音がうるさいのではないかと思い、一人で遠慮をしていた。
(それが今は、高級な豆を毎日好きな種類、好きなだけ飲んでいるんだもんなぁ)
佑はハワイ出張もたまにあるらしい。
出張として赴かなくても、コーヒー農園を営んでいる現地の友人から、定期的にコナコーヒーを買い付けている。
コナコーヒーも、ブルーマウンテンと同じぐらい高価な印象だ。
話を聞けば、ハワイにも佑の別荘があるらしく、その関係で現地にいる色んな人と知り合いになったらしい。
ハワイは過ごしやすく、世界的な事業に成功した富裕層が、ゆったりと暮らしている土地でもある。
きっとパーティーなどにも招待され、そこで人脈を広げた結果なのだろう。
彼の人脈の広さを凄いと思うが、様々な言語を話せてすぐ色んなと仲良くなれるところも尊敬している。
そんな事を思いながら、香澄は戸棚を開く。
「斎藤さんと一緒に作ったお茶請けは……と」
時間を確認すれば夕飯時だが、今日はうどんを食べてしまったしもう食事はいいだろう。
そのあいだにも佑がトントンと足音をたてて階段を下り、サッとバスルームの方へ消えてしまった。
42
お気に入りに追加
2,552
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~
けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。
秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。
グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。
初恋こじらせオフィスラブ
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる