219 / 1,536
第六部・社内旅行 編
目覚めの悪い社長
しおりを挟む
「っこ、こら! 社長! 起きてください!」
両手でどんどこ佑の背中を叩いていると、ようやっと彼が目を擦り始める。
「……香澄」
「松井さんが部屋の外で待機されています。すぐ起きて顔を洗って、歯磨きと着替えです。荷物の準備はできていますか?」
「……ん、パッキングは昨晩した」
パッキングと言っても、佑の場合荷物が少ない。
大体出張先のホテルは顔なじみで、いつもグレードの高い部屋に泊まる。
アメニティなどももちろん完備されてあるので、基本的に洗面道具を用意する必要はない。
最低限下着とスーツの替え、充電器やサプリメントなどを持っていけばいいだけだ。
その気になれば下着とスーツも現地で新品を調達できるので、身軽なものだ。
「じゃあ起きてください。私もお見送りしますから」
秘書の言葉に佑は目をしばしばさせたまま、頭を掻く。
彼は腕を伸ばしてベッドサイドにある水を飲むと、いきなりキスをしてきた。
「――――!」
ドアを閉めていない壁の向こうに松井がいるというのに、佑は顔の角度を変えて何度もキスを繰り返す。
「っちょ……たす、……ん、……駄目ですっ、ん、……ん、ちょ、ホントに、……ん」
小声でたしなめても、大型犬が主人の顔を舐めているように、佑は香澄にのしかかったままたっぷりキスを続けた。
おまけに両手がもそもそと体をまさぐり、胸を揉んでくる。
「んっ、ちょ、……ん、めっ、だめっ、……ん、ん……、っぷは、だめだってば、ん……」
しかし香澄も胸の先端をスリスリと優しく愛撫されると、思わず体を震わせてしまう。
意志に反してぷくりと乳首が勃ち、泣き出したくなる。
のしかかられたままキスと胸への愛撫を続けられ、腰の奥がジン……と痺れてきた。
これ以上されると本当に発情してしまう。
そう思った香澄は内心で「佑さんごめんなさいっ」と謝ったあと、彼の背中をベシンッと思い切り叩いた。
「……あと三十分」
ちら、と時計を見て呟き、ようやっと佑はベッドから下りた。
その時になって初めて、佑が下着一枚だけなのに気付き赤面する。
自分の胸元が出たままだったのにも気付いて、慌ててバッとキャミソールを下ろした。
佑が裸足でぺたぺたと歩いていくのを追って、香澄もガウンを羽織り、松葉杖をついておそるおそる廊下に出る。
「……あれ?」
しかし部屋のすぐ外にいると思っていた松井の姿はない。
どこへ行ったのか分からないが、とりあえずホーッと胸をなでおろした。
佑は主寝室の洗面で顔を洗っているらしく、水音がする。
ひとまず香澄は一階に下りて、佑が家を出る前に何か軽く口にできる物を用意しようと思った。
エレベーターを使って階下へゆくと、松井がリビングで佑の荷物をチェックしている。
「改めまして、おはようございます。松井さん」
「おはようございます。早い時間にお騒がせ致します」
「いいえ! 本当は私も同行する出張なのに……。申し訳ない気持ちでいっぱいです」
キッチンに向かい、棚にストックしてあるトマトジュースをコップに注ぐ。
それからテキパキと小松菜とバナナをカットし、豆乳と一緒にミキサーにかけスムージーを作った。
そのとき階段を下りる足音がし、ジャケットを手にした佑がリビングに姿を現した。
(……やっぱりスーツ姿格好いい……。ベスト最高)
ニヤニヤしたいのを堪え、香澄は元気な声を出す。
「はいっ、佑さん。これ二つ飲んで」
「ん、ありがとう」
アイランドキッチンの大理石の上にあるグラスを手に取り、佑はぐいーっとトマトジュースを飲み、そのあと間髪いれずスムージーも飲み干す。
「じゃあ、歯を磨いてね。コーヒーは空港で朝食とった後ね?」
「ああ」
時計を確認すれば、出発まであと十分だ。
フロアを変えて佑が洗面所で歯磨きをし、香澄は立ったまま彼を待つ。
「出張中、どうぞ社長を宜しくお願いします」
「承知しました。加えまして第三秘書の件ですが、先日お渡しした資料の河野さんで決定しました。時期的な問題もありますが、業務内容も併せまして今回の出張から帰国したタイミングで、社長秘書室に入ってもらおうと思っています」
「はい。本来なら私があれこれ教える立場なのに、本当にすみません……」
深々と頭を下げても、松井はいつもの柔和な笑みのままだ。
「医師のOKが出ましたら、復帰を待っていますよ」
「はい! 一か月は自宅でじっとしていなさいと言われましたが、さすがに休みすぎだと思いますので……。社長に同行してあちこち出張などは無理があるかもしれませんが、会社での事務仕事のみなら、早めに復帰できると思います」
両手でどんどこ佑の背中を叩いていると、ようやっと彼が目を擦り始める。
「……香澄」
「松井さんが部屋の外で待機されています。すぐ起きて顔を洗って、歯磨きと着替えです。荷物の準備はできていますか?」
「……ん、パッキングは昨晩した」
パッキングと言っても、佑の場合荷物が少ない。
大体出張先のホテルは顔なじみで、いつもグレードの高い部屋に泊まる。
アメニティなどももちろん完備されてあるので、基本的に洗面道具を用意する必要はない。
最低限下着とスーツの替え、充電器やサプリメントなどを持っていけばいいだけだ。
その気になれば下着とスーツも現地で新品を調達できるので、身軽なものだ。
「じゃあ起きてください。私もお見送りしますから」
秘書の言葉に佑は目をしばしばさせたまま、頭を掻く。
彼は腕を伸ばしてベッドサイドにある水を飲むと、いきなりキスをしてきた。
「――――!」
ドアを閉めていない壁の向こうに松井がいるというのに、佑は顔の角度を変えて何度もキスを繰り返す。
「っちょ……たす、……ん、……駄目ですっ、ん、……ん、ちょ、ホントに、……ん」
小声でたしなめても、大型犬が主人の顔を舐めているように、佑は香澄にのしかかったままたっぷりキスを続けた。
おまけに両手がもそもそと体をまさぐり、胸を揉んでくる。
「んっ、ちょ、……ん、めっ、だめっ、……ん、ん……、っぷは、だめだってば、ん……」
しかし香澄も胸の先端をスリスリと優しく愛撫されると、思わず体を震わせてしまう。
意志に反してぷくりと乳首が勃ち、泣き出したくなる。
のしかかられたままキスと胸への愛撫を続けられ、腰の奥がジン……と痺れてきた。
これ以上されると本当に発情してしまう。
そう思った香澄は内心で「佑さんごめんなさいっ」と謝ったあと、彼の背中をベシンッと思い切り叩いた。
「……あと三十分」
ちら、と時計を見て呟き、ようやっと佑はベッドから下りた。
その時になって初めて、佑が下着一枚だけなのに気付き赤面する。
自分の胸元が出たままだったのにも気付いて、慌ててバッとキャミソールを下ろした。
佑が裸足でぺたぺたと歩いていくのを追って、香澄もガウンを羽織り、松葉杖をついておそるおそる廊下に出る。
「……あれ?」
しかし部屋のすぐ外にいると思っていた松井の姿はない。
どこへ行ったのか分からないが、とりあえずホーッと胸をなでおろした。
佑は主寝室の洗面で顔を洗っているらしく、水音がする。
ひとまず香澄は一階に下りて、佑が家を出る前に何か軽く口にできる物を用意しようと思った。
エレベーターを使って階下へゆくと、松井がリビングで佑の荷物をチェックしている。
「改めまして、おはようございます。松井さん」
「おはようございます。早い時間にお騒がせ致します」
「いいえ! 本当は私も同行する出張なのに……。申し訳ない気持ちでいっぱいです」
キッチンに向かい、棚にストックしてあるトマトジュースをコップに注ぐ。
それからテキパキと小松菜とバナナをカットし、豆乳と一緒にミキサーにかけスムージーを作った。
そのとき階段を下りる足音がし、ジャケットを手にした佑がリビングに姿を現した。
(……やっぱりスーツ姿格好いい……。ベスト最高)
ニヤニヤしたいのを堪え、香澄は元気な声を出す。
「はいっ、佑さん。これ二つ飲んで」
「ん、ありがとう」
アイランドキッチンの大理石の上にあるグラスを手に取り、佑はぐいーっとトマトジュースを飲み、そのあと間髪いれずスムージーも飲み干す。
「じゃあ、歯を磨いてね。コーヒーは空港で朝食とった後ね?」
「ああ」
時計を確認すれば、出発まであと十分だ。
フロアを変えて佑が洗面所で歯磨きをし、香澄は立ったまま彼を待つ。
「出張中、どうぞ社長を宜しくお願いします」
「承知しました。加えまして第三秘書の件ですが、先日お渡しした資料の河野さんで決定しました。時期的な問題もありますが、業務内容も併せまして今回の出張から帰国したタイミングで、社長秘書室に入ってもらおうと思っています」
「はい。本来なら私があれこれ教える立場なのに、本当にすみません……」
深々と頭を下げても、松井はいつもの柔和な笑みのままだ。
「医師のOKが出ましたら、復帰を待っていますよ」
「はい! 一か月は自宅でじっとしていなさいと言われましたが、さすがに休みすぎだと思いますので……。社長に同行してあちこち出張などは無理があるかもしれませんが、会社での事務仕事のみなら、早めに復帰できると思います」
43
お気に入りに追加
2,501
あなたにおすすめの小説
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
身長172センチ。
高身長であること以外はいたって平凡なアラサーOLの佐伯花音。
婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。
名前からしてもっと可愛らしい人かと…ってどういうこと? そんな人こっちから願い下げ。
−−−でもだからってこんなハイスペ男子も求めてないっ!!
イケメン副社長に振り回される毎日…気が付いたときには既に副社長の手の内にいた。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※完結済み、手直ししながら随時upしていきます
※サムネにAI生成画像を使用しています
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる