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三人寄れば
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秀弥さんが帰ってきたのは、十九時過ぎだった。
「おかえりなさい!」
玄関から物音が聞こえ、私はパッとソファから立ちあがると彼を迎えに行く。
「ん、ただいま」
キュッと抱きつくと、秀弥さんは私を抱き締め、頭を撫でてくれる。
「……あれ、いい匂いする。飯作っててくれたのか? 疲れてるだろうから、寝てて良かったのに」
彼はそう言いながらリビングに入り――。
「はぁい、ダーリン」
真顔でそう言った亮の言葉を聞いて破顔した。
「お疲れさん」
秀弥さんは亮に軽く手を挙げ、ネクタイを緩める。
私は亮が彼にそんな冗談を言うとは思ってもみなかったので、ちょっと驚いて固まってしまった。
「西崎さん、好き嫌いある?」
「や、特にない。へぇ、亮くんが作ってくれたのか。ありがとう」
「じゃあ、温めるわ」
彼は手を洗ってからキッチンに立ち、コンロの火を点ける。
「話する前に、ちょっとシャワー浴びる」
手早くスーツを脱いで着替えを持った秀弥さんは、下着一枚の姿でバスルームに向かう。
秀弥さんの家で、弟と二人で彼を待って、亮が彼の分も料理を温めているなんて、なんだか不思議な気持ちだ。
「……亮」
「ん?」
私はこちらを見ずに返事をした彼に、微笑みかける
「ありがとね」
「……別に。あの人といがみ合うより前に、片づけないとならない問題がある。それだけの話だ」
「そういうところ、大人で好きだよ」
亮は小さく溜め息をつき、それ以上何も言わなかった。
二人と一緒にいたいと言ってしまった以上、秀弥さんばかりを恋人扱いする訳にいかない。
亮に対して異性への愛を向け、「好き」「愛してる」と言うのはまだ抵抗があるけれど、少しずつ慣れていけたらと思った。
まずは魅力的だと思える点について、素直に認め、褒めていくところからだ。
(二人とも、新しい環境に適応していこうと努力している。私も変わっていかないと)
決意し直したあと、私はダイニングテーブルにランチョンマットを敷き、食器を用意し始めた。
「いやぁ、マジで美味かった。亮くん料理上手だね」
食器を食洗機に入れたあと、秀弥さんはご満悦でビールを飲む。
「どうも」
ご機嫌な秀弥さんに対して、亮はいつもの通り淡々とビールを飲んでいた。
私はそんな二人の間に座り、なんとなく緊張しつつ梅酒を飲む。
「……で? 会社の話し合いは?」
亮に言われ、秀弥さんは会議で決定された事を教えてくれた。
「……ふーん、いい持っていき方かもな。上がそう判断しているなら、下がどれだけ騒いでも決定は覆らないだろう。……まぁ、一部のガキみたいな社員に、プライベートを理由に『あの人を処分してください』なんて言われても、会社としても応えようがないけどな。それに便乗して夕貴を処分するような会社なら、こっちから願い下げで辞めたほうがいい。中学生の部活じゃねぇんだから」
亮は溜め息をつき、チーズを食べる。
「亮くんのほうは? すでに夕貴に話したかもしれないけど、俺にも情報を教えてほしい」
そう言われて、彼は長谷川ホープエステートにもメールがあった事や、会社で決定された事、両親の意見を語った。
「ふぅん……。まぁ、概ね予想通りか」
秀弥さんはソファの上で胡座をかき、手酌でビールをお代わりする。
「弁護士さんから連絡があったけど、メールのアドレスが分かったとしても、アドレスそのものは誹謗中傷をした対象にはならないから、情報開示請求ができないそうだ。だから攻めるとするなら掲示板やらのほうだな。会社に通報してきたのが高瀬なら、絶対に掲示板にも参加しているはずだから。……あとはこれ以上のトラブルはないほうが望ましいけど、高瀬が決定的な事をしてくれたら、待ってましたって感じになるんだが」
私は無意識に深い溜め息をついていた。
「……そこまでしないとならないものなの? なんか疲れちゃった」
「おかえりなさい!」
玄関から物音が聞こえ、私はパッとソファから立ちあがると彼を迎えに行く。
「ん、ただいま」
キュッと抱きつくと、秀弥さんは私を抱き締め、頭を撫でてくれる。
「……あれ、いい匂いする。飯作っててくれたのか? 疲れてるだろうから、寝てて良かったのに」
彼はそう言いながらリビングに入り――。
「はぁい、ダーリン」
真顔でそう言った亮の言葉を聞いて破顔した。
「お疲れさん」
秀弥さんは亮に軽く手を挙げ、ネクタイを緩める。
私は亮が彼にそんな冗談を言うとは思ってもみなかったので、ちょっと驚いて固まってしまった。
「西崎さん、好き嫌いある?」
「や、特にない。へぇ、亮くんが作ってくれたのか。ありがとう」
「じゃあ、温めるわ」
彼は手を洗ってからキッチンに立ち、コンロの火を点ける。
「話する前に、ちょっとシャワー浴びる」
手早くスーツを脱いで着替えを持った秀弥さんは、下着一枚の姿でバスルームに向かう。
秀弥さんの家で、弟と二人で彼を待って、亮が彼の分も料理を温めているなんて、なんだか不思議な気持ちだ。
「……亮」
「ん?」
私はこちらを見ずに返事をした彼に、微笑みかける
「ありがとね」
「……別に。あの人といがみ合うより前に、片づけないとならない問題がある。それだけの話だ」
「そういうところ、大人で好きだよ」
亮は小さく溜め息をつき、それ以上何も言わなかった。
二人と一緒にいたいと言ってしまった以上、秀弥さんばかりを恋人扱いする訳にいかない。
亮に対して異性への愛を向け、「好き」「愛してる」と言うのはまだ抵抗があるけれど、少しずつ慣れていけたらと思った。
まずは魅力的だと思える点について、素直に認め、褒めていくところからだ。
(二人とも、新しい環境に適応していこうと努力している。私も変わっていかないと)
決意し直したあと、私はダイニングテーブルにランチョンマットを敷き、食器を用意し始めた。
「いやぁ、マジで美味かった。亮くん料理上手だね」
食器を食洗機に入れたあと、秀弥さんはご満悦でビールを飲む。
「どうも」
ご機嫌な秀弥さんに対して、亮はいつもの通り淡々とビールを飲んでいた。
私はそんな二人の間に座り、なんとなく緊張しつつ梅酒を飲む。
「……で? 会社の話し合いは?」
亮に言われ、秀弥さんは会議で決定された事を教えてくれた。
「……ふーん、いい持っていき方かもな。上がそう判断しているなら、下がどれだけ騒いでも決定は覆らないだろう。……まぁ、一部のガキみたいな社員に、プライベートを理由に『あの人を処分してください』なんて言われても、会社としても応えようがないけどな。それに便乗して夕貴を処分するような会社なら、こっちから願い下げで辞めたほうがいい。中学生の部活じゃねぇんだから」
亮は溜め息をつき、チーズを食べる。
「亮くんのほうは? すでに夕貴に話したかもしれないけど、俺にも情報を教えてほしい」
そう言われて、彼は長谷川ホープエステートにもメールがあった事や、会社で決定された事、両親の意見を語った。
「ふぅん……。まぁ、概ね予想通りか」
秀弥さんはソファの上で胡座をかき、手酌でビールをお代わりする。
「弁護士さんから連絡があったけど、メールのアドレスが分かったとしても、アドレスそのものは誹謗中傷をした対象にはならないから、情報開示請求ができないそうだ。だから攻めるとするなら掲示板やらのほうだな。会社に通報してきたのが高瀬なら、絶対に掲示板にも参加しているはずだから。……あとはこれ以上のトラブルはないほうが望ましいけど、高瀬が決定的な事をしてくれたら、待ってましたって感じになるんだが」
私は無意識に深い溜め息をついていた。
「……そこまでしないとならないものなの? なんか疲れちゃった」
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