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GW後半 編

朝食

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「朱里」

 尊さんに名前を呼ばれ、私は「はい?」と顔を上げる。

 すると、スマホを構えた彼にパシャッと写真を撮られた。

「もぉ……」

「ランドとシーに連れてきた礼に、朱里フォルダを充実させてくれよ」

「えっ? 朱里フォルダ? 聞き捨てなりませんな」

 私は立ちあがり、尊さんのスマホを覗き込む。

「……やらしい写真撮ってない?」

「撮ってない」

 ……ホッ、と息を吐くと、尊さんはニヤッと笑って付け加える。

「……とは言わない」

「もぉぉ!」

「おっ、牛になったな?」

「もー!」

 からかわれた私は、両人差し指をツンと立てると、頭の上に両手を掲げて牛の真似をし、尊さんに突進する。

「はははは!」

 彼は朗らかに笑い、私を抱き締める。

 尊さんの膝の上に座った私は、彼をギューッと抱き締めた。

 しばらくそのまま抱き合い、私は窓の外に見えるファンタジーな世界をぼんやりと眺めた。

「……外泊してこういう体勢になってると、クリスマスを思い出すな」

「ん?」

 尊さんが穏やかな声で言い、私は顔を上げて彼を見る。

「クリスマスプレゼントにネクタイくれただろ。それで、初めてネクタイを結んでくれた。……あれ、嬉しかったんだ」

 彼は優しい目で私を見つめ、頭を撫でる。

 私はジョン・コルトレーンの曲に合わせてストリップした事を思いだし、ジワッと赤面した。

「……まだ五月ですけど、……今年のクリスマスも楽しみにしてます」

「ん」

 尊さんはポンポンと私の頭を叩き、「飯、温かいうちに食うか」と言った。

「そうだ! 忘れてた!」

 私は尊さんの膝の上からポンと下り、向かいの席に座って「いただきます」と手を合わせる。

「話がうやむやになりましたが、可愛い婚約者のエッチな写真は、誰にも見せちゃ駄目ですよ」

 冗談めかして言うと、尊さんはガクッと項垂れる。

「ハメ撮りなんてした事ないだろうが。……まぁ、寝顔ぐらいは撮ったけど」

「ずるいなぁ。私も尊さんの寝顔、お守りにしたい」

「何から守ってくれるんだよ」

「家内安全、交通安全、商売繁盛、金運上昇……」

 指折り数えていくと、尊さんは掌を突き出して制止してくる。

「待て待て待て」

「シノミヤノミコトなら大丈夫ですよ」

「神様っぽく言うな」

 尊さんはクスクス笑い、プルプルのオムレツにチーズソースをつけて食べる。

「……でも、マジレスすると家内安全と安産祈願は守りたいな」

 彼は口の中の物を嚥下したあとにそう言い、私はポッと頬を染める。

 子供を産む事はまだ想像できないけど、尊さんならいい父親になってくれそうだし、幸せな家庭を築けそうだ。

「……じゃ、じゃあ……。頑張りますね」

 私は何だか変な返事をし、照れ笑いをしてからギクシャクとフォークを口に運ぶ。

 尊さんは照れて挙動がおかしくなっている私を見て微笑み、チラッと目が合った私はすぐに視線を逸らし、また彼を盗み見する。

「……なんですか」

「いいや? 可愛いと思って」

「もう……」

 私は尊さんを軽く睨むふりをして、パクリとオムレツを口に入れた。





 スイートルームを充分に満喫し、写真もたっぷり撮ってそろそろチェックアウトの準備を……という事になり、私は恵にメッセージを入れた。

《おはよう! よく眠れた? 十分後くらいに一階のエレベーター前辺りに集合しようか》

 するとワンテンポ遅れてから既読がつき、《了解です》とスタンプが返ってくる。

《涼さんとどうだった?》

 我慢できずに尋ねると、しばらく経ってから、キャラが《あああああああああ》と壊れた感じでガクガク震えている、動くスタンプが送られてきた。
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