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二次会 編

私といてつまらなくないです?

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「なんかあったかな……。基本的にあんまり友達と交流せず、一匹狼で講義を受けてたからな。話しかけられたら話すって感じだったけど、成績が良かったのもあって切磋琢磨したいタイプからは好かれてたかも」

「へえ」

 彼が好かれていたと知り、私は嬉しくなって笑顔になる。

「涼さん以外にも友達いるんですか? ……あ、いや。ぼっちみたいに言ってすみません」

 友達がいないのは私もそうなので、こういう話題については気を遣ってしまう。

 すると尊さんは特に気を悪くしたでもなく、答えてくれる。

「んー、今も連絡してる人はいる。なんでか知らんが亮づたいに知り合った人とも続いていて、弁護士とかメガバンクのエリートコース、医者、政治家秘書とかもいる」

「おお……」

 野心家な女性なら、合コンしたいと目をハートにしそうな系統だ。

「涼は顔が広いから、色んな業種に友達がいる。飲みに誘われて、暇だから行く事もあるけど、未知の世界の話を知れて面白いよ」

「へぇ……、特殊な業種の話は興味があります」

 男性には興味がないと強調したつもりだけど、尊さんはじー……と私を見てから、「そのうち俺が教えてやるからな」と頭をポンポン叩いてきた。

「み……」

 一瞬、ポロッと「宮本さんの事も知ってますか?」と涼さんに聞きかけてしまった。

 酔いの勢いダメ、絶対。

 いい感じにホヤホヤしてるけど、失言をしたら駄目だ。

「み?」

 けれど尊さんは耳ざとく私の言葉を拾い、首を傾げる。

「ミコトサンカッコイイデスネ」

 とっさに取り繕ったけれど、真顔のまま言ってしまったのでまるでロボ子だ。

 尊さんは不思議そうに私を見ると、首を傾げて言い返す。

「アカリサンカワイイデスネ」

 そう言われ、私は「んふ……、んふふ……」と笑ってしまう。

「おい、いきなり俺の前で惚気始めるな」

 涼さんは溜め息をつき、「あとは何かあったかな」と腕組みして考える。

「学食ではチキンタツタ丼とか、親子丼、カレーが多かったけど、たまに鯖の塩焼きとか食べて、魚食って偉いなって思ってたな。野菜もちゃんと食ってた」

「ほうほう、偉い偉い!」

 尊さんをナデナデすると、彼は「あのなぁ……」という目で私を見てくる。

「朝は登校したあと普通に講義を受けて、サークル活動はなし。でも講義の合間とか放課後には、俺やその他友達と集まって、投資のノウハウについて教え合ったりとかしてたな」

「ああ……、さすが……」

 きっとリンゴのマークがついた、薄型ノートパソコンを持ち歩いていたに違いない。

「……女友達を引き連れていたりとかは?」

 尋ねると、二人は顔を見合わせる。

「んー、なんて言えばいいかな……」

 そう言って首を傾げる尊さんは、誤魔化しているというより、本当に微妙な出来事をどう説明すべきか考える顔をしている。

 彼の表情や雰囲気から嘘か本当かは分かるようになってきたし、そもそも尊さんは私に女性関係で嘘をつかない。だから安心して言葉を待てた。

「〝できそう〟なやつらの集まりに興味を示して『何やってんの』って一緒に行動するようになった女子はいた。その子たちも投資に興味を持って勉強会に参加してたけど、やっぱり男と付き合いたいって期待は多かれ少なかれ持っていた訳だ。……でも、俺たちがいつまで経っても世界情勢やら経済ニュースやらの話ばっかりしてるもんだから、そのうち参加してこなくなったかな」

「ほう」

 私はもう一つ唐揚げをヒョイパクする。

 尊さんの話の続きを、涼さんが請け負った。

「勿論、優秀な女子は大勢いるし、全員が色恋の事を考えてる訳じゃない。でも俺たちのグループはいやみな話、その気になれば彼女はいつでも作れる。自由な大学生時代にこそ、有益な情報を語り合える仲間と濃密な時間を過ごしたかった。それぞれ親の望む職業に就く奴とか、入学した時点から就きたい職業が決まっている奴ばかりだったから、余計に今のうちに横の繋がりを作っておくべきと思っていたんだろうな。女子と付き合うのは、社会人になったあとでも充分間に合う訳だし」

 涼さんの言葉を聞いて、あまりに自分の大学生時代と違っていてちょっと恥ずかしくなってしまった。

 あの頃は昭人一筋で、彼の一挙手一投足に気を取られたり、バイト先の人間関係に悩んだりしていて、尊さんたちみたいにしっかりしてなかった。

 つくづく、目の前にいる二人はレベチで優秀な人なのだと思い知らされた。

「……私といてつまらなくないです?」

 思わず尋ねると、尊さんは軽く瞠目する。
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