【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
上 下
115 / 525
手に入れた女神 編

今夜、俺はこいつを抱く

しおりを挟む
 落ち着いたあと、荒れ狂った気持ちを誤魔化すために酒を飲みに行く事にした。

 タクシーに乗って向かったのは、神保町にあるバーだ。

 ドアを開けるとカウンター席が並んでいる訳だが、その一番手前に朱里が突っ伏していて、俺は思わず固まった。

『…………おい』

 小さく突っ込んだあと、はぁー……、と溜め息をついて彼女に近づいた。

 普段は上司として接しているので、彼女がやらかしている姿を見ると、つい『面倒を見なくては』という気持ちになる。

『最悪じゃないです? 友達みんなから、どう思われてるか……』

 朱里はカウンターに突っ伏しながら飲み、マスターに絡んでいる。

 こいつは……。

 しかもグダグダ言ってるのは、田村が相良と結婚するっていう話だろ。

 ――俺がいるのに、まだ田村にこだわってんのかよ。

 理想と現実の落差にムッとした俺は、朱里の頭を背後からガシッと掴んだ。

『ふぇっ!?』

 驚いた彼女は俺を見上げ、混乱した表情で固まっている。

『おい、いい加減にしろ。いい恥さらしだ』

 俺は舌打ちして言うと、彼女が飲んだ分を清算し、水を飲ませてからタクシーに押し込んだ。

 朱里はしばらくフニャフニャしていたが、酔いが覚めてきた頃にボソッと言う。

『……だって、女として見られないって言われたんです』

『誰に』

 田村の事はこないだ聞いたが、初耳という体をとっておく。

〝速水部長〟ならそう答えるだろう。

 そのあとしばらく、朱里は元彼とは体の相性が合わず、セックスを断っているうちに別れを切り出されてしまった事を話した。

 現在、田村は相良加代と付き合っていて、来年結婚するそうだ。

 まだあいつに未練のある朱里は、学生時代から付き合っていたものだから、学友に自分がどう言われるか気にしているらしい。

 俺としては、その場にいないならノーダメージだと思うが、本人としては違うんだろう。

『今年はあいつ、私じゃない女とクリスマスを過ごすんですよ。九年も私と過ごしていたのに。誕生日も祝ってくれて、そのあとはすぐクリスマスで、思い出が一杯なのに……っ』

『セックスするの断ってフラれたのに、元彼が今の女とセックスするのが気にくわないのか。自分勝手すぎやしないか?』

 こいつの泣き言を聞いていると、だんだん腹が立ってきた。

 お前を十二年も想い続けた男が、ここにいるんだぞ?

 確かに愛情はあっただろうが、お前たち二人は根本的に違うところを見て付き合っていたんだ。ハナからうまくいくはずがねぇんだよ。

 ――いいから俺を見ろ。

  心の底にどす黒い感情が湧き起こり、渦巻いていく。

『……だって、一応私の彼氏でしたし』

 悄然とした朱里を見ていると、どんどん嗜虐的な気持ちが高まっていった。

 詳細を聞かなくても、田村のセックスが下手だったのは分かる。

 ――そんな下手くそに抱かせてたのかよ。もったいねーな。

 ――お前を悦ばせる事ができるのは、俺だけだ。

 ――もう、指一本たりとも、他の男にその体を抱かせるなよ。

 彼女は可愛い。美人だ。

 意志の強そうな眉に、猫のように少し釣った大きな目。透明感すら感じさせるその目に見つめられると、心の底のドロドロとした想いを見透かされそうな錯覚を抱く。

 長い髪は腰近くまであり、丁寧にケアされていて潤いと艶がある。

 しなやかな手脚は長く、重量感のある胸元は文句なしに魅力的だ。

 魅惑的なのは胸だけじゃない。肉感的な尻はキュッと上がっていて、触りたくなる気持ちに駆られる。

 ナチュラルカラーのネイルが施された指を見ると、『大人の女になったんだな』という気持ちにさせられた。

 ――もう、俺の女になっちまえよ。大切にするから。

 朱里と会話をしながら、俺は心の中でゆっくりと理性を引き剥がしていった。

 ――もう駄目だ。

 ――今夜、俺はこいつを抱く。
しおりを挟む
感想 798

あなたにおすすめの小説

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

処理中です...