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意外と美形ですね
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前のめりになって彼の口元を観察していると、「ちょい待てって!」とバルキスに両手首を掴まれてしまった。
「あ……」
思いの外近い距離にバルキスの顔があり、私は動きを止める。
目覚めた時、彼は窓辺に座って夜風を浴びていたので、カーテンは開いて窓も開いている。
そこから月光が差し込み、バルキスの顔を青白く照らしていた。
(……きれい……)
彼の整った顔立ちを見て、私は素直に讃美する。
今までは寝起きから側にいた驚きと、大事な儀式を台無しにした魔王という理由から、好き放題ポンポンと彼に言葉を浴びせていた。
けれど改めてバルキスの顔を見ると、思わず見惚れてしまうぐらいの美形だと再認識する。
襟足が少し伸びた黒髪はサラサラしていて、赤い目はルビーのようだ。睫毛も長く濃く、鼻筋は高く通っていて、形のいい唇は少し薄い。
吸血鬼だからか若干色白に見えるけれど、不健康に青白い訳ではない。
体型はパッと見るとスリムだけれど近くで見るとしっかり鍛えているのが分かる。
「……あれ? 羽は? 沢山あった……」
「あれは必要な時だけ出せる。今ここで出しても邪魔だろう?」
「確かに、家具が滅茶苦茶になりますし、かさばりますね」
「かさばる……」
物扱いされ、彼はしょんぼりと肩を落とす。
一瞬彼の美貌に気を取られていたけれど、私は少しずつ調子を取り戻していく。
少しだけ胸がドキドキしているけれど、気のせいだ。
「で、アリシア。俺と結婚しようか」
バルキスはニッコリ笑い、私に手を差し伸べてくる。
「お断りします」
私はニッコリ笑い返し、聖なる力を高めた右手でパンッと彼の手を払った。
「いってえ!」
その瞬間、バルキスの右手がサラッと灰化し、彼が悲鳴を上げる。
「酷くない? 油断させておいていきなりの不意打ち! ひどい!」
子供のようにブーブーと文句を垂れるバルキスを、私は冷たくあしらう。
「レディにいきなり求婚する男性も酷いと思います。そもそも私、大切な儀式の最中だったんですよ? 歴史的価値のある大聖堂を、めちゃめちゃにしてどうするつもりです? 修繕費は国庫から出すんですよ? あなた、弁償できないでしょう。魔族は人間のお金を持っていませんものね?」
「人を無一文みたいに言わないで! その気になれば金銀財宝、どれだけでも……」
「作った物になんて興味ありません。悪魔が生み出すまやかしに、聖女が惑わされるとでも思っているのですか?」
また冷ややかな視線を送ると、彼は眉間に皺を寄せてショックを受けた顔をし、俯いてブツブツと言う。
「……このロマンチックな流れでこの仕打ち!」
「どこがロマンチックなのですか。未婚の乙女の寝室にいたなんて、ただの犯罪者じゃありませんか。人間なら捕まって牢獄行きですよ」
「ね……、寝起きドッキリを仕掛けようかと……」
「女性にサプライズをする時は、突然相談もなく無断でされる行為を嫌う人がいる事も考慮したほうがいいですよ。あなたみたいな独りよがりな男性は、きっと嫌われるでしょうね」
「う……っ」
バルキスは傷付いたように胸を押さえてみせる。
そんな姿を見て私は乱暴に溜め息をつき、髪を掻き上げる。
「どうして私の大切な儀式を台無しにしたのです? ずっと見ていたなら、私がこの日を待ちわびていたと分かっていましたよね? 一日ぐらい待てなかったのですか?」
「わ、悪かったよ……。ただ……」
「ただ?」
「……あの薔薇窓を壊して登場したら、カッコイイかなって思って……」
「子供ですか!」
思わず私は大きな声でつっこみ、バルキスの頭に聖なる力を込めた聖女チョップをした。
するとゴシャッ……とバルキスの頭が灰化し、すぐに復活する。節操のない。
「ていうかお前、容赦なく人の体を破壊するのやめない?」
「攻撃を受けてもすぐ復活する節操のない体だと、初対面の時に分かりましたから、遠慮無く甘えさせていただいています」
「こんなツンを極めた甘え方初めて!」
バルキスは突っ込みつつ、「ひどい!」と乙女のように両手で顔を覆う。
「あ……」
思いの外近い距離にバルキスの顔があり、私は動きを止める。
目覚めた時、彼は窓辺に座って夜風を浴びていたので、カーテンは開いて窓も開いている。
そこから月光が差し込み、バルキスの顔を青白く照らしていた。
(……きれい……)
彼の整った顔立ちを見て、私は素直に讃美する。
今までは寝起きから側にいた驚きと、大事な儀式を台無しにした魔王という理由から、好き放題ポンポンと彼に言葉を浴びせていた。
けれど改めてバルキスの顔を見ると、思わず見惚れてしまうぐらいの美形だと再認識する。
襟足が少し伸びた黒髪はサラサラしていて、赤い目はルビーのようだ。睫毛も長く濃く、鼻筋は高く通っていて、形のいい唇は少し薄い。
吸血鬼だからか若干色白に見えるけれど、不健康に青白い訳ではない。
体型はパッと見るとスリムだけれど近くで見るとしっかり鍛えているのが分かる。
「……あれ? 羽は? 沢山あった……」
「あれは必要な時だけ出せる。今ここで出しても邪魔だろう?」
「確かに、家具が滅茶苦茶になりますし、かさばりますね」
「かさばる……」
物扱いされ、彼はしょんぼりと肩を落とす。
一瞬彼の美貌に気を取られていたけれど、私は少しずつ調子を取り戻していく。
少しだけ胸がドキドキしているけれど、気のせいだ。
「で、アリシア。俺と結婚しようか」
バルキスはニッコリ笑い、私に手を差し伸べてくる。
「お断りします」
私はニッコリ笑い返し、聖なる力を高めた右手でパンッと彼の手を払った。
「いってえ!」
その瞬間、バルキスの右手がサラッと灰化し、彼が悲鳴を上げる。
「酷くない? 油断させておいていきなりの不意打ち! ひどい!」
子供のようにブーブーと文句を垂れるバルキスを、私は冷たくあしらう。
「レディにいきなり求婚する男性も酷いと思います。そもそも私、大切な儀式の最中だったんですよ? 歴史的価値のある大聖堂を、めちゃめちゃにしてどうするつもりです? 修繕費は国庫から出すんですよ? あなた、弁償できないでしょう。魔族は人間のお金を持っていませんものね?」
「人を無一文みたいに言わないで! その気になれば金銀財宝、どれだけでも……」
「作った物になんて興味ありません。悪魔が生み出すまやかしに、聖女が惑わされるとでも思っているのですか?」
また冷ややかな視線を送ると、彼は眉間に皺を寄せてショックを受けた顔をし、俯いてブツブツと言う。
「……このロマンチックな流れでこの仕打ち!」
「どこがロマンチックなのですか。未婚の乙女の寝室にいたなんて、ただの犯罪者じゃありませんか。人間なら捕まって牢獄行きですよ」
「ね……、寝起きドッキリを仕掛けようかと……」
「女性にサプライズをする時は、突然相談もなく無断でされる行為を嫌う人がいる事も考慮したほうがいいですよ。あなたみたいな独りよがりな男性は、きっと嫌われるでしょうね」
「う……っ」
バルキスは傷付いたように胸を押さえてみせる。
そんな姿を見て私は乱暴に溜め息をつき、髪を掻き上げる。
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「ただ?」
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「ていうかお前、容赦なく人の体を破壊するのやめない?」
「攻撃を受けてもすぐ復活する節操のない体だと、初対面の時に分かりましたから、遠慮無く甘えさせていただいています」
「こんなツンを極めた甘え方初めて!」
バルキスは突っ込みつつ、「ひどい!」と乙女のように両手で顔を覆う。
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