上 下
430 / 539
番外編 2 タワマン事件簿

招待状

しおりを挟む
「それで、夜は家族と過ごすとして、昼間に体が空いてる奥様っていうのは経営者の妻とか、限られたタイプの人になるんじゃないかな?」

「あー、なるほど……」

 腕の中で、俊希は私のおっぱいを弄りながらウトウトしている。

「文香ちゃんもそうなるんじゃない?」

 確かに、文香は基本的に投資やって、依頼があったら原稿を書いてる。
 化粧品のほうも〝趣味として〟使い比べて情報発信をして……ってやってる。

 お金はある訳だし、遊ぼうと思えばいつでも遊べる。

 とはいえ、私も彼女も絶賛育児中だ。

 文香は私に色々話を聞いてきて、何かと生活スタイルを参考にしている。
 いやらしい話だけど、お金を使えばシッターさんも家政婦さんも雇えてしまえるし、母親の負担は減る。

 その分、私と文香はたまにの息抜きで、シッターさんに子供を預けてちょっとだけお茶……とか、楽をさせてもらっていた。

 このマンションの奥様たちも、似たような感じで過ごしてるのかな。

「でも、文香はマンションの住人とは、まったく交流してないって言ってたかな」

「彼女なら、自分から進んで交流はしなさそうだな」

 慎也が言って小さく笑い、私に抱かれている俊希を示して唇の前に指を立てた。

「お」

 卒乳はしたけどおっぱいは大好きな俊希は、いつの間にかスヤリと眠ったみたいだ。
 立ちあがって彼をベビーベッドに寝かせ、私は伸びをする。

「俊希も男だなぁ。おっぱい触って気持ちを落ち着かせるとか」

 慎也がボソッと呟き、私はクワッと目を見開いて彼を睨む。

「ちょっとやめてよ。こういうのは女の子でも同じなの。お前らと一緒にすんな」

 ドスッとソファに座ると、隣に座っていた正樹がスライディングで私の膝に頭をのせてきた。

「優美ちゃん甘えたい~」

「はいはい。よしよしよし」

 私は犬にでもするように、正樹のお腹をワシャワシャ撫でる。

「正樹、ずるい。俺も」

 慎也が向かいのソファから近寄ってくるので、私はニヤリと笑って意趣返しをした。

「正樹の事はワンチャン風に可愛がってるから、慎也はネコチャン風に可愛がってあげようか?」

「え? 猫ってどうだったっけ?」

「お尻ポンポン」

 言われて、ネコチャンがお尻を叩かれて、気持ちよさそうに尻尾ピーンをしている動画を思いだした慎也は笑み崩れた。



**



 その数週間後、忘れていた頃に〝招待状〟が届いた。

「おやおやまあまあ」

「マジか。モノホンか」

 文香が遊びに来ていた時だったので、二人して封筒を開けてみる事にした。

 ちなみにレターセットはさすがタワマンの奥様という感じで、事務作業に使うようなのではなく、光沢のある綺麗な物だ。

 手紙を開けようとして、私は文香に尋ねる。

「文香ってさ、オープナーとかペーパーナイフ使う?」

「ああ、愛用してるのはあるけど」

 そう言って彼女が口にしたブランドは、泣く子も黙るハイブランドだ。

「うちにもあるんだけどさ、ついついハサミ使っちゃうよね……」

 言いながら私は引き出しからハサミを出し、封筒の端っこを慎重に切る。

「こうやって切って〝損なう〟事とか、もしかしたら中身も切れちゃう事を考えると、ペーパーナイフが一番いいんだろうね」

「私、出版社からファンレターを転送してもらう事あるけど、大体封筒の上をオープナーで開いた状態で送られてくるよ」

「そっかー」

 そうだろうな、と思いつつも、慣れ親しんだ使い方は体から消えてくれない。

 調理器具を買うのが趣味になった正樹が、楽しそうにピーラーでキャベツの千切りをしているのを見ても、私はつい包丁でやってしまう。そんな感じ。

 そんな会話をしつつ〝招待状〟を開くと、手書きの綺麗な文字で〝パーティー〟への招待が書かれてある。

 特に個人的な連絡はなく、何月何日に三十階にあるパブリックスペースでパーティーを開くので、どうぞ来てください。との事だ。
 なお、宛てられたのは私だけれど、勿論、慎也も正樹も、なんなら友達も連れて来ていいらしい。

「ふーん」

 手紙を覗き込み、文香が大きな「ふーん」を言う。

「私、行ってもいい?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

【R18】こんな産婦人科のお医者さんがいたら♡妄想エロシチュエーション短編作品♡

雪村 里帆
恋愛
ある日、産婦人科に訪れるとそこには顔を見たら赤面してしまう程のイケメン先生がいて…!?何故か看護師もいないし2人きり…エコー検査なのに触診されてしまい…?雪村里帆の妄想エロシチュエーション短編。完全フィクションでお送り致します!

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...