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妊娠・出産 編

筋肉がすべてを解決する!

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「……ん……」

 私は小さくうめいて目を開ける。

 あー……。
 ……うん、自宅だ。

 昨日は正樹のベッドで、三人仲良く寝た。

 ちなみにペントハウスのガラス面から見て、二階の右側が慎也、左側が正樹の陣地だ。
 私のベッドは……といえば、奥にある部屋にあるんだけど、ほぼ使われたためしがない。

 髪を掻き上げながらもっそりと起き上がると、すでに家の中に二人の気配はなかった。

 すっかり時差ボケになってる。

 日本の方が十九時間、ハワイより進んでいるんだそうだ。
 なので向こうの感覚で朝の七時に起きたつもりになると、夜中の二時に目が覚めてしまう。

 そんな感じで二度寝、三度寝……と繰り返しているうちに、いつの間にか二人は出社し、私はお昼前に目を覚ます羽目になる。

「……えっと……」

 とりあえず起きて伸びをして、階下に行くと白湯を飲んだ。
 それからマットを敷いてじっくりストレッチをし、ぼんやりと心を空白にしながらヨガもする。

「ふー……」

 じっくり三十分近くかけて体を馴染ませ、じんわりと温まった体で長く息を吐く。

「……よし」

 こっくりと頷いたあと、私はパジャマを脱いで下着姿のまま洗面所に向かった。





「んんっ!!」

 体重計の上に乗り、思わず声が漏れた。

「……六十二キロ……」

 六キロ増えた!
 こんなんアリか!?

 私はパンッと胸の前で手を合わせ、その手で目元を覆って天井を仰ぐ。

「あぁーーーーー…………、しゃーないか……」

 十日間のパラダイスの代償である。

 身長に対してまだまだ適正体重ではあるけれど、ハワイに行く前、ドレスを着るためにめっちゃ絞ったからなぁ。

 多分、世の中の人は百六十八センチの私なら、「太っていない」と言うだろう。

 けど私は過去のトラウマに縛られて、二人と同居する前はサラダチキン生活していた女だ。
 毎日のように走り込みしていたし、ジムにもストイックに通っていた。
 体脂肪率は十六から十七パーセントをキープしていた。

 それも、一般女性からすればやり過ぎの数値だろう。

「はぁー……」

 この体重の増加を、バージョンアップしたニュー優美として受け入れるか、やっぱり私は私でいたいと、厳しく見据えるか。

「ヘイ! メジャー召喚!」

 私は誰にともなく叫び、自分の部屋に駆け込むと、引き出しからメジャーを取り出し、また洗面所に向かった。

「バスト!」

 スッパーン! とナイトブラを取り、私は自分の胸元にメジャーを巻き付ける。

「アンダー、七十三! うーん、五センチ増えた! トップ! 九十三! こっちも五センチ増! 連動せんでええ!」

 鏡の前で、凄まじい一人ツッコミが繰り広げられる。

「ウエスト! 六十八! なるほどね! 六センチ! 最後! ケツ!」

 もう自棄になり、ヒップなんて言ってらんない。

「………………九十五…………」

 ええ。確かに立派なお尻がほしいと願いました。
 ブリンブリンの、ラテン系の女性のようなお尻が。

 しかし、それはきっちりヒップアップされての事だ。

「…………やりましょう。トレーニング」

 洗面台に両手をつき、私は鏡の中の自分を真剣な目で睨んだ。
 渋い顔でコックリ頷いてから、私はため息をついてお腹のお肉を掴んだ。

「ムチッとしたなぁ……」

 ちょっと前までは腹筋割れてたのに……。

「問題なのは体重じゃない。筋肉! 筋肉がすべてを解決する!」

 私は鏡の中の自分に向かって拳を振りかざし、鼓舞する。

「筋肉! 筋肉! 筋肉!」

 拳を振って叫びながら、私は冷蔵庫をあさってヘルシーかつ高タンパクな物が作れないか考えた。

 そのあと、食事を終えたあと、マンション内にあるジムに行き、みっちり筋トレや基本のトレーニングをしたあと、外へ走りに行った。



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