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ハワイ 編
グッドラック
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「優美が逃げてから、しばらくあそこで見守ってたけど、まー、長くなってそうで、しかもややこしそう。そこで私は和人に飲み物を買いに行かせた」
「ははーっ」
ひれ伏したあと顔を上げると、和人くんは人数分のドリンクが入ったホルダーを、両手に提げていた。
この使われ方よ……。
文香が舞台の上の女王様なら、和人くんは王子様役じゃなくて黒子だ。
しかしこの二人は、そのバランスで丁度いいんだよなぁ……。
それはさておき。
彼女はもう一度息をつき、今度は和らいだ、優しい表情で微笑んだ。
「決着はついたの?」
「うん、お陰様で」
「よし、それならOK! ま、今度落ち着いた時に聞かせてよ」
私の背中をポンと叩き、文香は和人くんを手招きする。
「なんかさー、ちょっと溶けちゃってるんだけど、美味しそうだから選ぼうよ」
買って来てくれた飲み物は、トロピカルフルーツを使ったシェイクだ。
果肉も入っていてとても美味しそうで、上にはエディブルフラワーが散らされている。
「優美、一番に選んでいいよ」
「え? やったー! じゃあ、マンゴーかな? これ」
黄色いシェイクを取ったあと、文香が「優美はそれ選ぶと思った」と笑って白いのを取る。
そのあと「あんた達は最後ね」と二人に言って、先に和人くんに選ばせた。
「えー? 僕ら悪役?」
和人くんのあとにシェイクを手に取り、正樹が不満げに言う。
「事情は知らんけど、優美を泣かせてたんだから悪役に決まってるでしょ。どんな理由でも女子を泣かせたら地獄行き」
相変わらずの文香さまに、二人は苦笑している。
五人でゆっくりホテルに向かって歩きながら、文香は空いている手でピッと二人を指さす。
「言っとくけど本当に、優美の事を悲しませたら許さないからね」
「分かってるよ」
「心配しないで、文香ちゃん」
二人はそう返事をするけれど、シェイクを飲みながらなので軽い印象になってしまう。
「ホントになー、もー」
文香は空を仰いで大きな声で言い、私の腕を組んでくる。
「幸せになってよ? 私にはあんたの幸せが一番大事なんだから」
「うん、ありがと」
「ハワイ中は控えるけど、帰国したらすぐ私との海外旅行の計画も立てようね~」
文香がわざと二人の嫉妬を煽る言い方をして、私は笑う。
「僕らのお供はいらないの?」
「いらん。働け」
正樹の問いかけを文香がバッサリ切り捨てるもんだから、本当におかしくて、声を上げて笑ってしまった。
それからホテルに戻って着替え、せっかくだからという事で、五人でミックスグリルを楽しんだ。
肉もシーフードも最高。
さて、部屋に戻るか……、と思った時、文香が私の肩を組んで少し離れたところに連れて行った。
「ん? ん? な、ななな、何?」
小声で文香に尋ねると、彼女は渋い顔をしてサムズアップしてきた。
「〝アレ〟しっかり役立てなよ?」
「あ! あー……」
私は〝アレ〟を思い出して何度も頷く。
「グッドラック」
文香はポンポンと私の背中を叩き、大きく頷いてから和人くんのほうへ戻っていった。
「優美、何だった?」
こちらにやって来た慎也が、通り過ぎる文香を見送ってから尋ねてくる。
「ん、いや。何でもない。女の話」
「そっか」
「正子にも教えてくれないの?」
急に正樹が裏声出してくるもんだから、ノールックで鼻水噴き出すところだった。
「正子ちゃんは今度一緒に女子会しようね」
「やだぁ! 慎子も入れて!」
それに慎也も悪乗りしてきて、私は思いっきり噴きだした。
「ちょ、〝しんこ〟って何!」
ネーミングセンスのない彼に、私はゲラゲラ笑いながら突っ込みを入れる。
それに正樹も笑いながら突っ込んだ。
「ちんこかよ」
「あ、それ私も思ったわ」
「ひっどぉ! 慎子、傷付いたわ! 今日は優美を寝かせないんだから!」
「まさかの百合ルート」
私が突っ込むと、正樹がさらに乗る。
「百合3Pじゃん。エモ……」
「ちょ、正樹そっちの人だったの?」
「ははーっ」
ひれ伏したあと顔を上げると、和人くんは人数分のドリンクが入ったホルダーを、両手に提げていた。
この使われ方よ……。
文香が舞台の上の女王様なら、和人くんは王子様役じゃなくて黒子だ。
しかしこの二人は、そのバランスで丁度いいんだよなぁ……。
それはさておき。
彼女はもう一度息をつき、今度は和らいだ、優しい表情で微笑んだ。
「決着はついたの?」
「うん、お陰様で」
「よし、それならOK! ま、今度落ち着いた時に聞かせてよ」
私の背中をポンと叩き、文香は和人くんを手招きする。
「なんかさー、ちょっと溶けちゃってるんだけど、美味しそうだから選ぼうよ」
買って来てくれた飲み物は、トロピカルフルーツを使ったシェイクだ。
果肉も入っていてとても美味しそうで、上にはエディブルフラワーが散らされている。
「優美、一番に選んでいいよ」
「え? やったー! じゃあ、マンゴーかな? これ」
黄色いシェイクを取ったあと、文香が「優美はそれ選ぶと思った」と笑って白いのを取る。
そのあと「あんた達は最後ね」と二人に言って、先に和人くんに選ばせた。
「えー? 僕ら悪役?」
和人くんのあとにシェイクを手に取り、正樹が不満げに言う。
「事情は知らんけど、優美を泣かせてたんだから悪役に決まってるでしょ。どんな理由でも女子を泣かせたら地獄行き」
相変わらずの文香さまに、二人は苦笑している。
五人でゆっくりホテルに向かって歩きながら、文香は空いている手でピッと二人を指さす。
「言っとくけど本当に、優美の事を悲しませたら許さないからね」
「分かってるよ」
「心配しないで、文香ちゃん」
二人はそう返事をするけれど、シェイクを飲みながらなので軽い印象になってしまう。
「ホントになー、もー」
文香は空を仰いで大きな声で言い、私の腕を組んでくる。
「幸せになってよ? 私にはあんたの幸せが一番大事なんだから」
「うん、ありがと」
「ハワイ中は控えるけど、帰国したらすぐ私との海外旅行の計画も立てようね~」
文香がわざと二人の嫉妬を煽る言い方をして、私は笑う。
「僕らのお供はいらないの?」
「いらん。働け」
正樹の問いかけを文香がバッサリ切り捨てるもんだから、本当におかしくて、声を上げて笑ってしまった。
それからホテルに戻って着替え、せっかくだからという事で、五人でミックスグリルを楽しんだ。
肉もシーフードも最高。
さて、部屋に戻るか……、と思った時、文香が私の肩を組んで少し離れたところに連れて行った。
「ん? ん? な、ななな、何?」
小声で文香に尋ねると、彼女は渋い顔をしてサムズアップしてきた。
「〝アレ〟しっかり役立てなよ?」
「あ! あー……」
私は〝アレ〟を思い出して何度も頷く。
「グッドラック」
文香はポンポンと私の背中を叩き、大きく頷いてから和人くんのほうへ戻っていった。
「優美、何だった?」
こちらにやって来た慎也が、通り過ぎる文香を見送ってから尋ねてくる。
「ん、いや。何でもない。女の話」
「そっか」
「正子にも教えてくれないの?」
急に正樹が裏声出してくるもんだから、ノールックで鼻水噴き出すところだった。
「正子ちゃんは今度一緒に女子会しようね」
「やだぁ! 慎子も入れて!」
それに慎也も悪乗りしてきて、私は思いっきり噴きだした。
「ちょ、〝しんこ〟って何!」
ネーミングセンスのない彼に、私はゲラゲラ笑いながら突っ込みを入れる。
それに正樹も笑いながら突っ込んだ。
「ちんこかよ」
「あ、それ私も思ったわ」
「ひっどぉ! 慎子、傷付いたわ! 今日は優美を寝かせないんだから!」
「まさかの百合ルート」
私が突っ込むと、正樹がさらに乗る。
「百合3Pじゃん。エモ……」
「ちょ、正樹そっちの人だったの?」
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