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ハワイ 編

非常にヤバイ

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 海鳥の声やビーチにいる人たちの声も聞こえるけれど、目を閉じれば見えなくなる。

 人前で……と、少し興奮しながら、私はペロリと彼の唇を舐めた。
 すぐに正樹が私の舌を軽く噛み、唇をついばんでくる。

 ……あ、コレ、癖になりそう。

 海の中で目を閉じてキス。
 耳には波音がクリアに聞こえ、私たちの体もどこかフワフワしている。

 水の中で見えないからって、正樹は私のお尻の肉をギュッと握ってきた。

「……んぅ」

 抗議の意味を込めて正樹の舌に歯を立てると、少し顔を離した彼が悪戯っぽく笑った。

「……何か、興奮するね」

 正樹のアソコが、興奮して微かに硬くなっているのが分かった。

「……ちょっと、ここでは駄目だって」

「分かってるよ」

 照れくさそうに笑ったあと、正樹は少し屈む。

「優美ちゃん! コアラのポーズ!」

 言われてすぐ彼の求める事を察した私は、笑いながら波に合わせてジャンプし、彼に抱きついた。
 すぐ正樹は私のお尻と背中を支え、浮力を利用してその姿勢をキープする。

「こういう事ができるのも、海ならではだねぇ。あ、プールでもできるか」

「昼間のプールじゃあ、流石に家族連れもいるからできないね」

 プールと言われて思い浮かぶのは、子供の頃によくお世話になっていた市民プールだ。
 だからそう言ったのだけれど……。

「じゃあナイトプールで泡まみれになって、イチャイチャすればいーじゃん」

「なんと」

 ナイトプールの存在は知っていたけど、パリピが行く場所っていうイメージがあって、なかなか足を運べずにいる。

「ていうかさ、一軒家のほうにプールがあるから、そこで遊ぶ? いつでも用意するよ?」

「一軒家の方、プールつきなの? えげつない!」

「何だかんだ言って、あっちの家にまだ連れてってあげてなかったよね。グランドピアノとか楽器もある、防音音楽室もあるから好きに歌っていいよ」

「……そこまでの声量を持ち合わせておりません」

 正樹にだっこされたまま、私は波にチャプチャプ揺られる。

「正樹って楽器できたんだっけ? 何か聴かせてよ」

「ん? いいけど……。あんまりまじめにやってないから、多分へただよ」

「弾けるだけ凄いよ」

「優美ちゃんは何か楽器やってなかったの?」

「子供の頃にピアノをちょっとやってた」

「ホント? ならうちのグランドピアノ弾いてよ。調律はしてるから、音はいいはずだよ」

「いやいや、ブランクあるから今は何も弾けないよ。タンバリンで精一杯」

「可愛いじゃん。うん、ぱ、ぱ、ってやるやつ?」

「頑張ったらタンバリン芸人みたいなのできるかな?」

 笑いながら片手でタンバリンを激しく鳴らす真似をしながら、私は足を下ろす。

「タンバリン芸人優美ちゃん、いつでも雇うよ」

「あはは、おひねり待ってまーす!」

 笑ったあと、私は濡れた手で髪を掻き上げる。

「ちょっと泳ごーっと」

 私は顔を出した状態で、チャプチャプと平泳ぎを始めた。

「ゴーグル持って来てなかったっけ?」

 正樹も泳ぎ始め、質問してくる。

「シュノーケリングもしたいけど、ガチ泳ぎもしたいんだよね。ホテルのプールもあるだろうけど、海でも泳ぎたいなって」

「あっは! 体育会系!」

 そのあと、私は気が済むまで海を堪能し、ディナー時間になる前に部屋に戻ってシャワーを浴びた。



**



 非常にヤバイ。

 ……と、徐々に思ってきた。

 僕にとって〝結婚〟はいい思い出のあるモノじゃない。

 心から愛している優美ちゃんと〝結婚〟して、良い感情を抱けるかどうか……と内心ビビっていた。

 慎也との結婚はちょっと妬いたけど、素直に「良かったね、おめでとう」と思えた。
 弟の結婚式(しかも初めて同士)に参加できるのは光栄で、一番前の特等席で見られるのがとても嬉しかった。
 花嫁姿の優美ちゃんも、滅茶苦茶可愛かったし。

 第三者的には凄く楽しかったセレモニーの主役が、いざ自分になると考えて「果たしてうまく楽しめるんだろうか?」という不安がずっと僕を支配していた。

 利佳との結婚式は、大した感動もなく迎えて、事務的に終わった。

 事前に必要な準備はあれこれは、きちんと夫として役割を果たして、どれも同じに思えるドレスも、一生懸命感想を言った。

 結婚式と披露宴当日は、利佳のために新郎役を頑張った。
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