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ハワイ 編

ハワイへの空路

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 夜に出発すると、昼間とは違う高揚感がある。

 後ろ向きに重力がかかったあと、フワッと機体が浮いてグングン上昇していく。

 日本を離れる時、日常が些細な事に思えてくるから不思議だ。
 直前に弓香さんとのあれこれがあって、複雑な気持ちになったけど、今はどうでも良くなっている。

 何なら、浜崎くんも佐藤さんたちも割とどうでもいい。

 もしかしたら帰国して落ち着いたら、思い出してムカつくかもしれない。
 でも今はどーんと気が大きくなっている。

 五十嵐さんのお土産は買う予定なので、帰国したら「元気だった?」と声を掛けて、文香と三人で会うつもりだ。

 その予定を二人に話したら「よくやるよねぇ」と言われた。

 けど、一度面倒を見ると決めたなら、きちんとしたい。

 私が彼女の人生を変えてしまったと言ってもいい。
 だから五十嵐さんが「これでいい?」と、生き方を確認する必要がなくなるまで、見守っていくつもりだ。

 最終的に、普通に友達付き合いできたらいいなと思ってる。

 そんな事を考えている間、機体が安定してサービスが始まった。

 私は洋食のコースを頼んだ。
 隣の席の慎也も同じで、通路を挟んだ隣の正樹も「洋食で」と言っていた。

 行きの席の並び順はこんな感じで、帰りは私と正樹が隣り合う予定だ。

 せっかくだからシャンパンを頼み、料理が提供されるとアミューズ・ブーシュから順番に食べていく。

「向こう着いたらどうする?」

 慎也に尋ねると、彼は「うーん」と口の中の物をモグモグしながら考える。
 そして嚥下してから微笑んだ。

「こっちでは秋だけど、向こうは常夏だから、一日目はゆっくりして体を馴染ませようか。結婚式を前に体調を崩してもどうにもなんないし」

「そうだね」

「ショッピングモールをゆっくり見るとかだったら、別にいいんじゃない? 中はクーラー効いてるしさ」

 正樹が言い、私は「うんうん」と頷く。

「ハワイならではの何かあるかなぁ? マカダミアナッツチョコしか出てこないや」

 事前に調べるべきだけど、結婚式の準備があってそれどころじゃなかった。
 ハワイの手配は正樹に丸投げしてしまって、ちょっと反省している。

 でも逐一「ホテルはこういう所だけどいい?」と聞いてくれたので、確認して答えてはいた。

「じゃあ、免税ショップでバッグとか」

「いや、それはいい」

 ここぞとばかりに高い物を買おうとする慎也の案を、私はピシャリと却下する。

「うーん。っぽい物って言ったらハワイアンジュエリーとか、ハワイアンキルトとかになるのかな。アロハもあるし、女子ウケしそうなアパレルもあったはずだよ」

 正樹が前菜を食べ終えて言う。

「そっかー。着る物だったら文香と一緒に回ったら楽しいかも」

 ここにきて私が親友の名前を出したので、二人が真顔になる。

「え、えーと……。俺たちと一緒にパンケーキとかどう?」

「あっ、地元フードもいいね! ロコモコもハワイのだったよね。情報が古いかも分からないけど」

 今まで文香と一緒に、海外旅行には何度も行っていたけど、ヨーロッパがメインだった。

 たまに比較的お安く済む東南アジアに行ったりもしたけれど、ビーチリゾートは機会がなく、ハワイは意外にも初めてだった。

 私も文香も、芸術とか文化に触れるのが好きで、歴史ある建物とか世界遺産を見たいと思っていた。

 文香は水着で海! ビーチリゾート! とかはあんまり……みたいだ。
 彼女は大人数でワイワイじゃなく、落ち着いてゆっくり楽しみたいタイプだ。
 空や海のアクティビティも、それほど得意じゃないかもしれない。

 文香が絶叫系の何かをやってるって、あんまり想像できないもんなぁ。

 いつだったか和人くんが「一生に一回はスカイダイビングをやってみたいな」と呟いていたら、「一人でどうぞ」と言っていたので好きではないんだろう。

 ……と、彼女の話は置いておいて。

「私、ハワイって詳しくないんだよね。ダイヤモンドヘッド? 山があったり、火山活動があるとかは分かるんだけど……。あと、フラダンス?」

 それっぽい動きで腕をくねらせると、正樹がにっこり笑う。

「ダンスなら食事の時にショーが見られるはずだよ。ホテルがダンサーと契約して、決まった時間にショーをやってもらうとかあるはずだから」

「そうなんだ。楽しみ」

 反対側から、慎也が付け足す。

「フラダンスって、優美が思ってるより結構激しい動きもある。あと男性がやるファイアーダンスも迫力あるから、きっと気に入ると思う」

「ふーん、楽しみにしてるね!」

 結婚式はハワイに到着して三日目を予定している。

 初日にホノルル空港に着き、そのままオアフ島のホテルに泊まって休憩。
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