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結婚式 編
ファーストクラスでハワイへ
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「これからハワイだねぇ。今度は僕とだね」
彼はニコニコし、私の手を握ってくる。
「うん。んン……」
うつ伏せになって施術を受けているので、私はうなり声しか出せない。
「慎也もお疲れ様。カッコ良かったよ」
「んー、ありがと」
向こうは仰向けなので、私と違ってクリアな声で慎也が返事をする。
「出会ってから色々怒濤だったけど、一段落したね。まだハワイ行きがあるから全部終わった訳じゃないけど」
「だなー」
「ハワイは文香ちゃんも来るっていうから笑っちゃうね。大好きだねぇ!」
「すまん……」
私はくぐもった声で謝る。
文香の職業は例の通りなので、海外旅行のために予定を空けるなんてたやすい。
投資関係の原稿の仕事はあるけれど、ノートパソコンさえ持って行けばどこでも仕事ができる。
勿論、私たちがイチャイチャする時は気を利かせてくれるし、向こうも和人くんと一緒だ。
だけど正樹との結婚式はハネムーンついでにマウイ島で挙げると決めたので、それは絶対に参加するという彼女の固い意志だ。
ついでにだけど、全日程ではないけれど式を見届けるために、ビルさんたち一家も別途ハワイに一緒に来る。
彼らは文香ほどの距離感ではないので、結婚式が終わったら数日家族でのんびり過ごして帰るらしい。
正樹との結婚式は公のものではない分、祝ってくれる人がいるのはありがたい。
「……楽しみだね」
顔を横に向けて正樹に微笑みかけると、彼が幸せそうに笑う。
「うん」
「今度は俺が思いっきりフラワーシャワー浴びせてやるからな」
「あっは! 楽しみ~!」
マッサージ師さんはこの会話を聞いているけれども、知らないふりをしてくれているのでありがたかった。
やがて一時間弱のマッサージが終わり、私はメイクを直したあとスーツケースを手に部屋を出た。
ドレスとか着物は特注なので、業者の人が帰国するまで保管してくれるらしい。
久賀城家の家政婦さんは家族同然なので、一緒に旅行に来る事になっている。
チェックアウトしたあとホテル前で車に乗り、羽田空港に向かう。
「私、飛行機に乗ったら本当に寝ちゃうと思う」
「ん、ゆっくりしな」
助手席に座った慎也が笑い交じりに返事をしてくれる。
結婚式で散々〝主役〟になったので、隣に座っているのは正樹だ。
「優美ちゃんの寝顔、しっかり撮ってあげるから心配しないで」
相変わらずな彼の言葉に、私は背もたれに預けていた頭をごろんと転がして彼を見る。
そんで「ふーん? お前、分かってんだろうな……」という顔で笑ったからか、正樹はすべてを理解した上でケタケタ笑った。
まったく……。
やがて三十分もせずに車は羽田空港の第三ターミナルに着き、私たちは全員いるか確認してチェックインする。
文香と和人くんは同じ便だけれど、別行動だ。
ビルさんたちは違う便か分からないけれども、現地での結婚式の予定はしっかり共有しているから大丈夫だ。
ファーストクラス用のラウンジでゆったりと飲み物や軽食で寛いでいると、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
ファーストクラスは八席しかないので、私たち以外はビジネスクラスに乗る事になった。
ビジネスクラスでもフルフラットになるらしいので、疲れずに十分なサービスを受けられるだろう。
ラウンジでゆっくりしたあと、優先されて搭乗する。
今回のシートは、仕切りさえ下ろせば、隣の席の人とおしゃべりが楽しめるようになっていた。
正樹いわく、ハワイ行きは休暇、ハネムーンに根強い人気があるから、こうやってカップルシートっぽい感じになってるんじゃないかという話だ。
席について手荷物をしまったあと、ウェルカムドリンクはオレンジジュースを頼んだ。
やがて二十一時のフライトになり、機体が動きだす。
ホノルルに着くのは午前十時頃らしいので、機体が安定したらディナーが出る流れなのかな?
寝たい気持ちはあるけど、ファーストクラスのコース料理は満喫したい。
新婚旅行というのもあって、私は妙なテンションで液晶を見ながらリモコンを操作していた。
飛行機が滑走路まで進んだあと、エンジンが本格的に動き「いよいよだ」という気持ちになる。
彼はニコニコし、私の手を握ってくる。
「うん。んン……」
うつ伏せになって施術を受けているので、私はうなり声しか出せない。
「慎也もお疲れ様。カッコ良かったよ」
「んー、ありがと」
向こうは仰向けなので、私と違ってクリアな声で慎也が返事をする。
「出会ってから色々怒濤だったけど、一段落したね。まだハワイ行きがあるから全部終わった訳じゃないけど」
「だなー」
「ハワイは文香ちゃんも来るっていうから笑っちゃうね。大好きだねぇ!」
「すまん……」
私はくぐもった声で謝る。
文香の職業は例の通りなので、海外旅行のために予定を空けるなんてたやすい。
投資関係の原稿の仕事はあるけれど、ノートパソコンさえ持って行けばどこでも仕事ができる。
勿論、私たちがイチャイチャする時は気を利かせてくれるし、向こうも和人くんと一緒だ。
だけど正樹との結婚式はハネムーンついでにマウイ島で挙げると決めたので、それは絶対に参加するという彼女の固い意志だ。
ついでにだけど、全日程ではないけれど式を見届けるために、ビルさんたち一家も別途ハワイに一緒に来る。
彼らは文香ほどの距離感ではないので、結婚式が終わったら数日家族でのんびり過ごして帰るらしい。
正樹との結婚式は公のものではない分、祝ってくれる人がいるのはありがたい。
「……楽しみだね」
顔を横に向けて正樹に微笑みかけると、彼が幸せそうに笑う。
「うん」
「今度は俺が思いっきりフラワーシャワー浴びせてやるからな」
「あっは! 楽しみ~!」
マッサージ師さんはこの会話を聞いているけれども、知らないふりをしてくれているのでありがたかった。
やがて一時間弱のマッサージが終わり、私はメイクを直したあとスーツケースを手に部屋を出た。
ドレスとか着物は特注なので、業者の人が帰国するまで保管してくれるらしい。
久賀城家の家政婦さんは家族同然なので、一緒に旅行に来る事になっている。
チェックアウトしたあとホテル前で車に乗り、羽田空港に向かう。
「私、飛行機に乗ったら本当に寝ちゃうと思う」
「ん、ゆっくりしな」
助手席に座った慎也が笑い交じりに返事をしてくれる。
結婚式で散々〝主役〟になったので、隣に座っているのは正樹だ。
「優美ちゃんの寝顔、しっかり撮ってあげるから心配しないで」
相変わらずな彼の言葉に、私は背もたれに預けていた頭をごろんと転がして彼を見る。
そんで「ふーん? お前、分かってんだろうな……」という顔で笑ったからか、正樹はすべてを理解した上でケタケタ笑った。
まったく……。
やがて三十分もせずに車は羽田空港の第三ターミナルに着き、私たちは全員いるか確認してチェックインする。
文香と和人くんは同じ便だけれど、別行動だ。
ビルさんたちは違う便か分からないけれども、現地での結婚式の予定はしっかり共有しているから大丈夫だ。
ファーストクラス用のラウンジでゆったりと飲み物や軽食で寛いでいると、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
ファーストクラスは八席しかないので、私たち以外はビジネスクラスに乗る事になった。
ビジネスクラスでもフルフラットになるらしいので、疲れずに十分なサービスを受けられるだろう。
ラウンジでゆっくりしたあと、優先されて搭乗する。
今回のシートは、仕切りさえ下ろせば、隣の席の人とおしゃべりが楽しめるようになっていた。
正樹いわく、ハワイ行きは休暇、ハネムーンに根強い人気があるから、こうやってカップルシートっぽい感じになってるんじゃないかという話だ。
席について手荷物をしまったあと、ウェルカムドリンクはオレンジジュースを頼んだ。
やがて二十一時のフライトになり、機体が動きだす。
ホノルルに着くのは午前十時頃らしいので、機体が安定したらディナーが出る流れなのかな?
寝たい気持ちはあるけど、ファーストクラスのコース料理は満喫したい。
新婚旅行というのもあって、私は妙なテンションで液晶を見ながらリモコンを操作していた。
飛行機が滑走路まで進んだあと、エンジンが本格的に動き「いよいよだ」という気持ちになる。
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