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結婚式 編

十月下旬の大安吉日

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 そういう変な意地やプライドがあるから、誤解が生まれるんだって言われたら、何も言えない。

 ただ、俺と正樹は色々ありすぎて、お互い軽いノリで流してしまっているところがある。
 それを正面からぶつかり向き合って話すと、精神的に疲れてしまうのかもしれない。

 たまに真面目に話すからいいのであって、しょっちゅうマジ話をしていたら、優美を挟んでのこの生活も、どこかおかしくなってしまうかもしれない。

 だから何かがあった時は、優美に任せたいと思っていた。

 俺の言う事なら、正樹は照れくさくてなかなか聞き入れられないかもしれない。
 でも優美なら、人の心に明るく優しく入り込める。

 そして彼女もまた、心の機微に敏感な人だ。

 だから夜の部のデートで、二人が〝色々〟話しただろうなと察していた。

(ありがとな、優美)

 心の中で礼を言い、俺はトントンと正樹の背中を叩いた。

「もう遅いから寝るぞ」

「はーい」

 そのあと、酔っ払いに冷たいお茶を飲ませようと、キッチンに向かった。



**



 そして十月下旬の大安吉日、私は恵比寿近くにあるホテルで結婚式を挙げた。

 うちの家族は前日から同じホテルに泊まっている。

 どうやら正樹があれこれ気を回してくれたみたいで、皆マッサージをしてもらい、高級料理を食べられたみたいだ。

 私たち三人も、当日にバタバタしたくないねっていう事で、前日から泊まっている。
 それは久賀城家も同じで、朝食は個室を使わせてもらい、皆で取る事にした。

 何とその頃には、二人の祖父母がはるばるフランスから来てくれていた。

 お祖父さんが生粋のフランス人で、お祖母さんが日本の方だ。
 その息子が慎也と正樹のお父さんで、二人はクォーターという事になる。

 私はおどおどしながら「ボンジュール」と挨拶してみたけれど、逆に「こんにちは。初めまして」と流暢な日本語で挨拶されてしまった。
 普段はフランス語を話して生活しているとしても、日本にいる子供や孫たちと会う時は、日本語で話したいと思い、奥さんから学んだそうだ。

 とはいえ、フランス人は自国の言語を大切にし、文化に誇りのあるお国柄らしい。
 私が第一声にフランス語で挨拶したからか、とても気に入ってもらえたようだった。

 お祖父さんは現地で高級レストランをはじめ、飲食店のグループ会社を経営しているらしい。
 現在、経営の第一線は、長男に任せているのだそうだ。
 お祖父さんを見ると、二人の綺麗な目の色のルーツがここにあるんだ、と思えてとても嬉しくなった。

 残念ながら結婚式当日なのでゆっくり話せず、積もる話はハワイに着いてからという事になった。

 当日は大変だって話は聞いていたので、しっかりご飯を食べる。

 式は十時半からなので、メイクしてブライダルインナーからドレス着て何やら……と整えるには時間が掛かるので、早め行動だ。

 朝食を終えたあと、私は皆に挨拶した。

「皆さんのおかげで、今日を迎えられました! 数日後には正樹とも結婚する、普通じゃない結婚です。でも今日は慎也との結婚という事で、そっちモードで祝福してもらえたらと思います。理解のある家族に恵まれて幸せです! あとで晴れ姿、しっかり見てくださいね」

 そのあと、慎也も続ける。

「優美を紹介してから結婚まであっという間だったけど、正樹の事も含めて理解してくれて、今日この日まで協力してくれてありがとう。式が終わったあと、夜の便でハワイだ。慌ただしいけど飛行機でゆっくりしてほしい。今日は宜しくお願いします」

 二人揃って挨拶をすると、両家の家族がパチパチと拍手をしてくれる。

「優美、今日は主役なんだからしっかりね」

 お母さんが私に向かって拳を握ってみせる。

「うん! 今日のためにしっかり体も仕上げてきたから!」

 ムキィ、と二の腕アピールすると、弟が呆れた顔をして横を向いた。



**



 八時半にはメイク等々の準備が始まり、玲奈さんが口利きしてくれた凄いメイクさんが担当してくれた。

 雑談をしながらメイクやヘアメイクを進め、バッチリ決まったあとはドレスを着付けていく。

 こうしている間にも、文香や埼玉の友達が、受付のために来ているはずだ。
 そして両家の親族たちが、控え室で挨拶しているに違いない。

 不思議なもんだな。

 初めて二人と出会ったのは、従姉の結婚式だった。

 十一年前には大きいサイズの膨張色ワンピースを着て、非常階段で泣いていた。
 あの高校生が、当時慰めてくれた御曹司と結婚しようとしている。

 確か、あの時私に膨張色とか言った人は、従姉の結婚相手のさらに従兄弟らしかったので、今回は来ないはずだ。
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