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入籍 編

私が受け入れた正樹を、正樹も愛してあげてね

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「優美ちゃんに愛されてるのは同じ。愛しているのも同じ。セックスするし、子供作るし、指輪もする。式も挙げる。両家の親に認めてもらってる」

 正樹は指折り、数えていく。

「まぁ、人には『夫です』って言えないけど、そこは僕、我慢できるし」

「よしよし」

 頭を撫でて上げると、彼は嬉しそうに笑う。
 そして仰向けになり、深く息を吸って吐いた。

「……もう、色んなもんと決別して、前向いて幸せになんないと」

「うん」

「料理、頑張るね」

「よしきた。サポートします!」

「完璧なスパダリじゃなくてごめんね」

「謝る意味が分かんない。私も完璧じゃないよ。ほら、正樹はいつも図々しいんだから、『欠点あるけど受け入れてねー! あはっ!』ってやんないと」

「ちょっ、僕そこまで図々しいかな?」

「まあまあ無責任なところはあるけど、それでいいって思ってる」

 私たちは顔を見合わせ、声を上げて笑う。

「私が受け入れた正樹を、正樹も愛してあげてね」

「そうだね」



 結局、その夜は手を繋いだり、抱き合ったりしたまま遅い時間まで話していた。

 シャンパンも入ってほろ酔いになり、服を着たあとにチェックアウトして、車に乗ったあとマンションに帰った。



**



「ただいまぁ」

 玄関の物音が聞こえたからか、リビングに入るとTシャツにスウェット姿の慎也が、酔っ払ってる私を見て無言で両手を広げた。
 私は満面の笑みを浮かべて、その胸に飛び込んだ。

「はい、ぎゅーっ!」

 私を抱き締めた慎也が、後ろにいる正樹に尋ねる。

「……どったのコレ。しこたま飲ませた?」

「いやー、なんかシャンパンとの相性かな? ご機嫌だったのもあって酔っちゃったみたい」

「マジか」

「マジっす」

 フニャフニャしている私を見て、慎也は溜め息をつく。
 そのあとチュッとキスをして、私を抱き上げた。

「とりあえず着替えるぞ」

「あーい」

 問答無用で私はソファまで連れて行かれ、寝かされて服を脱がされる。
 ブラまで取られて一気に楽になり、私は顔を赤くしたまま深呼吸する。

 慎也はそんな私を少し見たあと、二階から持って来たハーフパンツを穿かせてズボッとTシャツを被せる。

「ホラ、酔っ払い。立てるか? メイク落とした方がいいと思うけど」

「んー、いってきゃす!」

 ノソノソと起き上がった私は、洗面所に向かって目をショボショボさせながらクレンジングに手を伸ばした。



**



「……ヤんなかったの?」

 珍しく酔っ払った優美を心配しつつ、俺は正樹に尋ねる。

「うん。色々話し込んで、まじめモードになったから下半身が反応しなかった。勿体なかったなぁ」

〝まじめ〟に何を話したかは察していたから、あえて何も言わない。

「お疲れさん」

 トントンと正樹の背中を叩くと、何でか知らないけどケツを叩き返された上に、抱き締められた。

「ちょっ!?」

「慎也ぁ~、好きだよぉ~」

「…………お前も酔っ払いか」

 図体のでかい男を抱き締め、俺は呆れて溜め息をつきながら背中をさすってやる。

「……僕はね、本当に慎也が好きだよ」

 正樹は小さい声で呟く。

 入籍して、正樹がどう思っているか直接は聞かなかった。

 本当はきちんと聞いたほうがいいのかもしれないけど、先日埼玉の帰りにじっくり話した。
 それでまた……となると、やりすぎな気がする。

 幾ら腹を割って話し合う事が大切だとしても、少なくとも俺たち兄弟はそうしょっちゅうマジ話をしない。
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