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五十嵐と再会 編

はあああああああ!?

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「はあああああああ!?」

 でっかい声がして、私は涎を垂らして飛び起きた。

「んぁっ!?」

 起きて目を擦ると、ベッドの真ん前に正樹が立っている。

 あああああああ……!!

 エッチしたあとに気持ちよくなって、二人して眠ったままだった。

「……おかえり」

 ゴムを処理したあと全裸で寝ていた慎也が、あくびを噛み殺して兄に「おかえり」を言う。
 外出してうっすらと汗を掻いた彼は、頭をわしわしと掻いてベッドの隅に座る。

「あのさぁ? 僕、わざわざ五十嵐の家まで行って、あれこれしてきたんだけど?」

「ごっ、ごめんなさい!」

 私は全裸のままベッドの上で土下座する。

「おー、お疲れー」

 慎也はまったく動じず、私のお尻をペチペチと叩く。コノヤロウ。

「外出してる間に寝取られたって思ったら、ちょっと燃えない?」

 慎也に言われ、激おこだった正樹が考え始める。

「……アリだな」

 ……いや、アリなんかい!

 ……いや、そっか。正樹はもともと他人に自分の彼女を汚され願望があるから……。

 自分でも首をひねりつつもある程度納得し、私はモソモソと下着を穿いて、Tシャツを被る。

「ごめんね。お疲れ様。ありがとう。こっちおいで。よしよししてあげる」

 両手を広げると、正樹がパァッと顔を輝かせてベッドの上を張ってきた。

「ワンワンッ」

 犬の真似をして、彼は私の腰に抱きついてくる。

 私はそんな彼の頭や肩、背中、胸元にお腹をよしよししてあげた。





「それは……、お疲れ様でした。ありがとう」

 正樹に膝枕をして、ポヨポヨと胸を玩ばれたまま、私は彼から五十嵐さんとのやり取りと結論を聞いた。

「もっと褒めて」

 欲しがる正樹が起き上がり、私にキスをしてくる。

「ん……」

 両腕で彼を抱き締め、私はいたわりと感謝を込めて正樹の唇をついばんだ。
 よしよし、と頭も撫でると、彼は満足してまた膝枕に戻る。

「しかし彼女、すっかり丸くなったね。優美ちゃんがスッポーン! と牙を抜いたから、大人しくて不気味なぐらい」

「ちょっと、人を牙抜き師みたいに言わないで」

「ぶふっ」

 とっさに出た造語を聞いて、慎也が噴きだす。

「優美ちゃんの膝枕、名残惜しいけど、持ち帰り制限一時間のケーキ買って来たから、食べたら?」

「食べる!」

 正樹本人はあまり甘い物は好まないのに、お土産に買ってくるスイーツは極上の物ばかりだ。

「あっ、ちょっと待って……」

 ベッドから下りようとして、慌ててスキニーを穿く。
 ブラも付け直そうとした時、ニヤリと笑った正樹に命令された。

「〝お詫び〟にノーブラTシャツで食べて?」

「う……。うー……。……はい……」

 服を着てるならまぁいいか、と思い、私は胸の揺れを恥ずかしく思いながら、階下に向かった。

「う、うわぁああ……、おいしそ……」

 箱を開けると、ちんまりとした、それでいて「絶対に美味しいぞ!」というケーキが並んでいる。

 贅沢な事に、文香と付き合いだしてから舌が肥え始めて、二人と同棲するようになって拍車がかかってきた。
 ……いや、たまに無性にカップ麺とか食べたくなるし、もとの舌は忘れてないんだけど。

「優美ちゃんはどれがいい? やっぱベリーのフランボワーズ?」

 言わずもがなで好みを当てられ、私はコクコクと頷く。
 慎也はすでに食器を準備してくれていて、某有名ブランド食器がテーブルの上に並んだ。

「僕、紅茶淹れるね。優美ちゃんは座ってて」

「ご、ごめん」

「何で謝るのかわかんない。コーヒーと紅茶淹れるのは僕の趣味だし、この三人だと僕がやるのが一番美味しくなるからだよ」

 特に怒ってるでもなく、素のままで言って正樹はキッチンに立つ。

 それもそうだなぁ、と思いながら私はダイニングチェアについてテーブルに頬杖をついた。
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