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イギリス 編

オックスフォードを経てロンドンへ

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 午前中に湖水地方を発ち、途中でオックスフォードに寄って、有名な魔法使いの映画の、舞台モデルになった大学を見学した。

 勿論現役の大学なので中には入れないけど、教会には入れた。
 学生の中には各国の貴賓レベルの方々もいて、一部の富裕層のみが使う寄宿舎もあった。

 道なりに大学を見学して敷地を出ると、正面に赤いドアが特徴的な『不思議の国のアリス』のショップがあり、テンションぶち上げになってしまった。

 某プリンセスも好きだけど、独得の世界観のアリスは子供の頃から大好きだ。

 文香や未望ちゃん、他の友達にノートを買い、自分にはイラストのついたトランプを買った。



**



 ロンドンについたのは夕方だ。

 正樹はホテルに予定を伝えていたらしく、またスイートルームに泊まれた。

 移動で疲れたのもあって、夕食はホテル内のレストランで和食を頂く事にした。
 日本人向けのホテルなので、フレンチレストランの他に本格和食の店がある。
 お寿司から懐石料理、ラーメンまでなんでも揃ってるのは、日本だとちょっと不思議だけれど、こちらではアリだ。

 とはいえ、中途半端な物は出さず、ラーメンもお寿司も、それぞれトップレベルの職人さんが作っていた。

「んん~、うまーい!」

 私は味噌ラーメンを啜り、心の底からの「うまーい」を口にする。
 海外に長期出ていると、どうしても醤油や味噌味に飢えるので、日本人だなぁ……と痛感する。

「そりゃ良かった」

 慎也と正樹はお寿司を食べていた。
 こちらではネタが若干ちがうけど、一流の職人さんが握っているので、本格的な見た目をしているし、味も一級品なんだろう。

 食べる前にラーメンとお寿司とどっちにしようか迷っていたら、二人が「一貫単位でも握ってくれるよ」と言ってくれたけど遠慮しておいた。
 ただの自分の流儀なんだけど、ラーメンを食べるならラーメンの口にしておきたい。

 ラーメンは日本でも人気の店の支店なので、期待通りの味が楽しめる。
 ほんっと美味しい……。

 満足したあと、部屋に戻ってベッドに転がった。

「あーーーー………………」

 体力があるほうだと思ってるし、こっちにきて運動したっていうほどじゃない。
 それなのにこれだけ疲れているのは、やはり旅行だからだ。

「優美、マッサージしたげる」

 ベッドに座った慎也が、私のふくらはぎを揉んできた。

「んー、ありがと。でも慎也も疲れてるだろうからいいよ」

「いいから。俺は慣れてるし大して疲れてない」

 そう言って慎也はふくらはぎを指圧してくれる。

「んぁぁ…………、気持ちいい……」

 うつ伏せになったまま声を出すと、黙っていられないと正樹が反対側に座った。

「じゃあ僕は肩から腰をやってあげるね」

「えええ? んー……、ありがと」

「どういたしまして」

 それからしばらく、二人は真面目にマッサージをしてくれた。
 天下の久賀城ホールディングスの役員さんにこんな事させられるのは、私だけだろう。

 そのうち、気持ちよくなってウトウトしてしまう。

 お風呂に入ってから寝ないとと思っていたけれど、大分疲れが溜まっているようだ。
 しばらくして、意識がスゥッ……と眠りの世界に吸い込まれていく。

 気持ちのいい眠気に包まれていると、二人の会話が微かに聞こえた。

「今日はしゃーないか」

「そうだね。ゆっくり寝かせてあげよう」

 そのあとも体の疲れを癒やしてくれる手は動き続け、私は深い眠りの淵に吸い込まれていった。





 夜中に目が覚めた私は、〝やらかした〟事に気付いた。

(やっば……。寝てた)

 緊張が抜けたのと疲れがあったとはいえ、メイクも落とさず二人の相手もせず、そのまま寝てしまうとか……。

 服を着たままベッドにダイブしたはずだったけれど、いつの間にかブラジャーを外され、二人のうちどちらかのTシャツを着せられていた。

 かたじけない。

(メイク落とさなきゃ)

 なるべくベッドを揺らさないように起き上がる。
 マットレスは硬めでそれほど揺れないけど、二人は私の両側で寝ている。

 ゲームかなんかのミッションでありそうだな。『兄弟ボスを起こすな!』なんて……。

 そんなくだらない事を考えていたのはさておき。

 洗面所までたどり着き、鏡を見て思わず「あれっ?」と声を出してしまった。

 ……メイクが落ちてる。
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