201 / 539
イギリス 編
シャーロットの招待
しおりを挟む
少し暗い気持ちになり、私はシャーロットさんに話しかけようとして、うっ、と言葉を詰まらせる。
彼女はまた、私を凝視していた。
値踏みするような、つま先から頭のてっぺんまでスキャンするような目で、ジーッと私を見ている。
うわぁ……。
ライバル的な敵意というより、私を観察していると言っていい。
何なんだろ。
『えーと、二人は役に立ちましたか?』
一拍おいて話しかけると、シャーロットさんはにっこりと満面の笑みを浮かべた。
『ええ、お陰で素晴らしい時間を過ごせたわ』
ニコニコ笑いながら私の手を握ってブンブン振ってくるので、ますます訳が分からない。
『ボウネスは楽しんだか?』
その時、ビルさんが声を掛けてきた。
『楽しかったです!』
私がブンブン手を振って返事をすると、ビルさんは機嫌良さそうに笑う。
本当はあのうさぎ館も二人と行きたかったけど、まぁ、しゃーない。
そのあと、私たちはまたクルーザーに乗ってレイクサイドまで戻り、そこから運転手さんが運転する車に乗ってアボットさんのお城まで帰った。
**
『お疲れ』
夕食まで休憩となり、私たちは部屋に戻る事にした。
このお屋敷の滞在は明日までだ。
明日にはまたロンドンに戻って、最後に散策、買い物をして、明後日の便に乗って帰国だ。
(疲れた……)
あふ……、とあくびを噛み殺し、私は階段に向かう。
――と、その手をシャーロットさんにグイッと引っ張られた。
「おっとぉ!?」
驚いて振り向くと、目を細めて笑っている彼女がいる。
そして、私の耳元に口を寄せ囁いてきた。
『夕食のあと、私の部屋に来てくれませんか?』
そう言って見つめるシャーロットさんは、ただならぬ雰囲気を発している。
あー、……選択肢のないやつか。
『分かりました』
「優美ちゃん?」
踊り場まで上がった正樹が、振り向いて声を掛けてくる。
「あっ、はいはい!」
彼に返事をした時、シャーロットさんがポンと私の肩を叩いた。
『じゃあ、またあとで』
私は彼女に会釈して、急いで階段を駆け上がる。
正樹は玄関ホールにいる彼女を見下ろし、咎めるような声を掛けた。
『シャーロット』
『あなただって分かっているはずよ』
美しく微笑した彼女は、そのあとリビングへ歩いて行った。
**
「はぁ……」
私は部屋のベッドにダイブし、大きな溜め息をつく。
何か……疲れた。
目を閉じていると、ノックの音がしたあと「入るぞ」と慎也の声がした。
「優美ちゃん、お疲れ」
正樹の声もして、ベッドがたわむ。
モソモソと寝返りを打って仰向けになると、慎也と正樹が順番にキスをしてきた。
「エディとクリスと、何を話してた? 大丈夫だったか?」
慎也が私の頭を撫で、尋ねてくる。
「うん、大丈夫。ずっと良くない感情を持たれてたけど、彼自身の問題、トラウマからだった。そこんとこ、ちょっと背中を押して活を入れたら、なんとか前向きになってくれたみたい」
問題は解決したと伝えると、二人は息をつく。
「流石だねって言いたいけど、僕らがもっと前に出れば良かったね。一人でつらい思いをさせてごめん」
「ううん。だって正樹は主賓でしょ? もてなしてくれたビルさんと話さなきゃいけないし、仕方ないよ。それに言う程つらくもなかったし」
「本当か? さっき、ボウネスで気にしてなかったか?」
慎也がサラリと私の髪を撫で、キスをしてから尋ねてくる。
(そう言うなら、一人私と一緒にいてくれれば良かったのに)
ついつい、心の中で面倒くさい私がふてくされ、呟く。
けれど彼らがシャーロットさんに〝招待〟された以上、そちらを優先しないといけないのは分かっている。
彼女はまた、私を凝視していた。
値踏みするような、つま先から頭のてっぺんまでスキャンするような目で、ジーッと私を見ている。
うわぁ……。
ライバル的な敵意というより、私を観察していると言っていい。
何なんだろ。
『えーと、二人は役に立ちましたか?』
一拍おいて話しかけると、シャーロットさんはにっこりと満面の笑みを浮かべた。
『ええ、お陰で素晴らしい時間を過ごせたわ』
ニコニコ笑いながら私の手を握ってブンブン振ってくるので、ますます訳が分からない。
『ボウネスは楽しんだか?』
その時、ビルさんが声を掛けてきた。
『楽しかったです!』
私がブンブン手を振って返事をすると、ビルさんは機嫌良さそうに笑う。
本当はあのうさぎ館も二人と行きたかったけど、まぁ、しゃーない。
そのあと、私たちはまたクルーザーに乗ってレイクサイドまで戻り、そこから運転手さんが運転する車に乗ってアボットさんのお城まで帰った。
**
『お疲れ』
夕食まで休憩となり、私たちは部屋に戻る事にした。
このお屋敷の滞在は明日までだ。
明日にはまたロンドンに戻って、最後に散策、買い物をして、明後日の便に乗って帰国だ。
(疲れた……)
あふ……、とあくびを噛み殺し、私は階段に向かう。
――と、その手をシャーロットさんにグイッと引っ張られた。
「おっとぉ!?」
驚いて振り向くと、目を細めて笑っている彼女がいる。
そして、私の耳元に口を寄せ囁いてきた。
『夕食のあと、私の部屋に来てくれませんか?』
そう言って見つめるシャーロットさんは、ただならぬ雰囲気を発している。
あー、……選択肢のないやつか。
『分かりました』
「優美ちゃん?」
踊り場まで上がった正樹が、振り向いて声を掛けてくる。
「あっ、はいはい!」
彼に返事をした時、シャーロットさんがポンと私の肩を叩いた。
『じゃあ、またあとで』
私は彼女に会釈して、急いで階段を駆け上がる。
正樹は玄関ホールにいる彼女を見下ろし、咎めるような声を掛けた。
『シャーロット』
『あなただって分かっているはずよ』
美しく微笑した彼女は、そのあとリビングへ歩いて行った。
**
「はぁ……」
私は部屋のベッドにダイブし、大きな溜め息をつく。
何か……疲れた。
目を閉じていると、ノックの音がしたあと「入るぞ」と慎也の声がした。
「優美ちゃん、お疲れ」
正樹の声もして、ベッドがたわむ。
モソモソと寝返りを打って仰向けになると、慎也と正樹が順番にキスをしてきた。
「エディとクリスと、何を話してた? 大丈夫だったか?」
慎也が私の頭を撫で、尋ねてくる。
「うん、大丈夫。ずっと良くない感情を持たれてたけど、彼自身の問題、トラウマからだった。そこんとこ、ちょっと背中を押して活を入れたら、なんとか前向きになってくれたみたい」
問題は解決したと伝えると、二人は息をつく。
「流石だねって言いたいけど、僕らがもっと前に出れば良かったね。一人でつらい思いをさせてごめん」
「ううん。だって正樹は主賓でしょ? もてなしてくれたビルさんと話さなきゃいけないし、仕方ないよ。それに言う程つらくもなかったし」
「本当か? さっき、ボウネスで気にしてなかったか?」
慎也がサラリと私の髪を撫で、キスをしてから尋ねてくる。
(そう言うなら、一人私と一緒にいてくれれば良かったのに)
ついつい、心の中で面倒くさい私がふてくされ、呟く。
けれど彼らがシャーロットさんに〝招待〟された以上、そちらを優先しないといけないのは分かっている。
10
お気に入りに追加
1,817
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
【R18】こんな産婦人科のお医者さんがいたら♡妄想エロシチュエーション短編作品♡
雪村 里帆
恋愛
ある日、産婦人科に訪れるとそこには顔を見たら赤面してしまう程のイケメン先生がいて…!?何故か看護師もいないし2人きり…エコー検査なのに触診されてしまい…?雪村里帆の妄想エロシチュエーション短編。完全フィクションでお送り致します!
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる