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利佳 編

こうじゃなかった気がする

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「……すご、……かった……」

 両方の孔に入れられる時も凄いけれど、一人ずつでも十分すぎる。

「……なんか……、こうじゃなかった気がする……」

「ん?」

 避妊具を処理しながら、二人が私を見る。

「何か違った?」

「もっと違うプレイがしたかった?」

「違う違う。そうじゃなくて」

 私は力の入らない手を、ヘロヘロと振る。

「……そもそも、私が利佳さんに嫉妬して、正樹を襲う回だったよなぁ……って」

 そう、本来なら私は自分よりずっと〝格上〟に見えた彼女に、嫉妬していたのだ。

「自分の方が幸せだから相手にしない」とは思ったけれど、彼女を見て「美人だな」と思ったし、見るからに生まれが良さそうとも思った。

 それだけなら「望みすぎず生まれ持ったものを大切にしよう」と思えるけれど、彼女は正樹の元奥さんだった。
 だから私は、普通のセレブ女性には何とも思わないのに、利佳さんに対して強い嫉妬を抱いてしまったのだ。

「まだ何かしてくれるなら、いつでも受け入れるよ?」

 正樹が私の頭を撫で、手を取ってチュッとお姫様みたいに甲にキスをしてくる。

「うー……。……いつか……、リベンジしてやる……」

「楽しみにしてるよ」

 正樹が嬉しそうに笑った時、下着を穿いた慎也が言った。

「正樹のベッド行こうか」

「そーだな。優美ちゃん、動けないでしょ。連れてったげる」

 正樹が私を抱き上げ、慎也が「ほい」と私のパジャマと下着を私のお腹の上にのせる。
 正樹が歩き始めると、後ろでは慎也がシーツを外していた。

「う……、うぅ……。ごめん……」

「いいの、いいの。優美ちゃんはいつも事後になったら動けないでしょ。僕らは二人いる上に体力も有り余ってる。動ける人が動くでいいんだよ」

 私は恥ずかしくて、ハァー……と息をついて両手で顔を覆った。

 こうやって、エッチのあとには生々しい〝事後〟がある訳で。
 ホテルならお任せできるんだけど、自宅でだと自分たちで色々しないといけない。

 それも含め、これから新婚生活なんだなぁ……。

 正樹のベッドの運ばれたあと、とても恥ずかしいが彼が下着を穿かせてくれる。

 そしてパジャマは自分で着ていると、パン一の慎也がきて布団に潜り込んできた。

「思うんだけど、いつも事後のシーツとかってどうしてるの?」

「ん? クリーニングだけど? Yシャツもクリーニング。さすがにTシャツとかタオルは自分で洗濯するけど」

「そう……」

 さすがセレブだな。
 よっぽどじゃないと、クリーニングって頼まないけど……。

 時刻はもう深夜一時を過ぎていて、そろそろ眠らないとという感じで三人とも大人しく仰向けになる。

「そうだ。結婚したあと、メインで住む家はここで変わらない?」

「そうだね。このマンションは出勤しやすいからメインで使ってる。でも休みの日とか、気分を変えたい時は別の家にも行こうか」

「いいの? 何か……、正樹の家だからプライベートな感じなのかな? って思ってて」

「いやいや、全然? ほとんど書庫とワインセラーとガレージのための家みたいになってるよ。掃除は業者に任せてるから綺麗だけど」

「そう? なら、そのうち」

 気になって堪らなかったとかじゃないけど、これから一緒に暮らしていくのに、プライベートエリアはハッキリしとかなきゃと思った。

 今は仲良しこよしだけど、いつケンカするか分からない。
 そういう時、三人とも避難先があるほうがいい。

「優美にも近場にマンション買おうか」

「えっ?」

「たまに一人になりたいって思わない? 俺は可能ならずっと優美と一緒にいたい。でも優美だって家に友達を呼びたい時があるだろうし、女性同士の話をするなら、俺たちにいてほしくない場合もあるだろ?」

「んー……」

 思わず「そんな事ないよ」と言いかけたが、完全にないとは言い切れない。

 文香以外にも友達はいて、一人暮らしの時は埼玉から泊まりに来た時もある。
 家族が何かのついでに泊まる事もあった訳で……。

 加えて、もしかしたらケンカする時もあるかもしれないし、やっぱりプライベートエリアは必要……かもしれない。

「まぁ、アリとは思う。でも普通の賃貸でいいからね? そんで、それぐらいは自分で払うし」

「まぁまぁ。そこは任せてよ。僕らだって一時的な家であっても、優美ちゃんをセキュリティの甘い所に住まわせたくない。そこは夫になる僕らに用意させて? 勿論、間取りの好みとかは聞くけど」

 こんな風になると意見を変えないのは分かっている。

「はぁ……。じゃあ、お任せします」

「素直でいい子」

 正樹に頭を撫でられ、慎也には頬にキスをされる。

 それで話はつき、ようやく私たちは眠りにつく事になった。



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