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利佳 編
上手に処理してほしい
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「争いを生まないためには、それも一つの手だったんじゃないの? モテる人の苦悩は分からないけど、好きな人がいる女の子の気持ちなら、友達を見ててよく分かるつもり。相手がとっかえひっかえ付き合っていたなら、自分にもワンチャンあるかもって期待して、告白して玉砕……とかあったかもしれない。でもハーレムなら、皆で仲良くしてれば平等に仲良くする権利があった訳でしょ? それはそれで、平和的な方法なんだと思う」
「ヤリチンだけどな」
「黙れって正樹」
正樹に茶々を入れられて、慎也がうなる。
注意された正樹は、ケラケラ笑っているので、非情にオープンな兄弟だ。
「優美はこういう事を聞かされて妬かない? 嫌じゃない?」
慎也に尋ねられ、私は「んー」と少し考える。
「そりゃあ、ちょっとは妬くけど……。でも、これだけイケメンで何でも揃ってる人が童貞って、逆にヤバくない? 絶対難アリだと思うけど」
「あはは! 確かに!」
正樹が手を打ち鳴らして笑う。
「妬く気持ちは仕方がないけど、〝今〟はお互いを大事にしていて他の人なんて見ない。それで良くない?」
確かに慎也も正樹も、大勢の女性と関係したんだろうな、と思うとモヤモヤする。
けれど〝他人〟と〝過去〟はどんな人でも変えられない。
そんな仕方のない事にこだわるより、これからについて建設的に考えていくほうが、ずっと健康的だ。
「あ、でももし今後元カノとかが出てきても、私の目に入らないようにして、ゴタゴタする前に上手に処理してほしい。それだけはお願い」
「分かった」
「あはは、利佳の件はごめんね」
「いや、あれは不可抗力でしょ。正樹だってあそこで会うなんて思ってなかっただろうし。……まー、二人みたいな人なら、いまだに想いを引きずってる女性がいそう。それは分かってる。だからこそ、〝今〟の彼女である私を大切にほしい。勿論、居合わせた時は、今日みたいに堂々と立ち向かうけどね」
なるべく、嫌なものは見たくないものだ。
想像するに、彼らを想っている女性は過去に関係した人以外に、会社の人とか大勢いそうだ。
でもその一人一人に「今でも好きなんだけど……」とやられると、正直キツい。
二人が素敵な男性なだけに、彼女たちの気持ちが分かるので、「今は私の彼氏なんだから、そういうのやめてください」って強く言いづらい。
そして〝彼女の座〟に胡座をかいてふんぞり返り、〝昔の女〟を邪魔者、悪者扱いするのもまたちょっと違う。
だからなるべく、私は彼らの過去には向き合いたくない。
同じように、仮に私が昔エッチした男友達が現れても、ほんっとうにもしも私に何か言ってきたとしても、そこに二人を介入させたくはない。
そういう風に、お互いを守り合えたらな、とは思う。
「分かったよ。優美に昔の事は触れさせないようにする。せっかく家族に挨拶できたのに、嫌な思いをさせるのは俺も望んでない」
「バッタリ遭遇する率は低いんじゃない?」
「まぁね。私もそんなに煩く言いたくないから、念頭に入れておいてくれたらいい、っていう程度で」
これで一旦、過去の話は終わった――ように思えた。
けれど慎也がまだ引きずる。
「さっきの話の続きだけど、文香さんと一緒にいてナンパとかされてたんだろ? その時ってどうしてた? 強引な奴とかいなかったの? 数人で囲まれたりとか……」
「いやぁ、腕出してモリッと上腕二頭筋アピールして『変な事したら玉潰すけどいい?』って真顔で脅したら、顔面蒼白になって逃げてったけど」
「「ぶわっははははははは!!」」
慎也と正樹がベッドマットをドンドン叩いて、ひいひい笑いだした。
「だって声掛けてくる男の人、皆ヒョロヒョロしてるんだもん。ナンパされて『ジム行ってる?』って聞いたら行ってるって言って、うっすいお腹見せて『細マッチョだろ?』って言われても何も興味が持てない……」
私にはある一定のライン以上、体を鍛えている人がいいという理想があった。
正直、声を掛けてくるほとんどの男性が、ヒョロッとしている。
私がちょっと腹パンしたり、ケツキックしたら再起不能になりそうで怖いぐらいだ。
勿論、何もないのにそんな暴力は働かないけど。
頼りないという意味もあるけれど、私が多少じゃれついても持ちこたえてくれる人がいい、という意味で、鍛えている人が好みだった。
その点、二人は軽々クリアである。
見た目で人の価値を決めないけれど、好みは好みで別物だ。
理想はジムデートやジョギングデートなので、夢が叶えられてまさに幸せの最中にいる。
エアロバイクやステアクライマーをしながら、たわいのないお喋りをしたり、バタフライマシンを使ってる時に背中の筋肉を褒め合いたい。
文香は「マニアック……」と言って引いてるけど、そんな私にぴったり合ったのが慎也と正樹だ。
「和人さんに今度、改めて優美を守ってくれたお礼を言わないとな」
「そうだね。またグループデートするの楽しみ」
何だかんだ、和人くんは文香と同じだけ付き合いがあるので、彼も親友と言っていい。
「ヤリチンだけどな」
「黙れって正樹」
正樹に茶々を入れられて、慎也がうなる。
注意された正樹は、ケラケラ笑っているので、非情にオープンな兄弟だ。
「優美はこういう事を聞かされて妬かない? 嫌じゃない?」
慎也に尋ねられ、私は「んー」と少し考える。
「そりゃあ、ちょっとは妬くけど……。でも、これだけイケメンで何でも揃ってる人が童貞って、逆にヤバくない? 絶対難アリだと思うけど」
「あはは! 確かに!」
正樹が手を打ち鳴らして笑う。
「妬く気持ちは仕方がないけど、〝今〟はお互いを大事にしていて他の人なんて見ない。それで良くない?」
確かに慎也も正樹も、大勢の女性と関係したんだろうな、と思うとモヤモヤする。
けれど〝他人〟と〝過去〟はどんな人でも変えられない。
そんな仕方のない事にこだわるより、これからについて建設的に考えていくほうが、ずっと健康的だ。
「あ、でももし今後元カノとかが出てきても、私の目に入らないようにして、ゴタゴタする前に上手に処理してほしい。それだけはお願い」
「分かった」
「あはは、利佳の件はごめんね」
「いや、あれは不可抗力でしょ。正樹だってあそこで会うなんて思ってなかっただろうし。……まー、二人みたいな人なら、いまだに想いを引きずってる女性がいそう。それは分かってる。だからこそ、〝今〟の彼女である私を大切にほしい。勿論、居合わせた時は、今日みたいに堂々と立ち向かうけどね」
なるべく、嫌なものは見たくないものだ。
想像するに、彼らを想っている女性は過去に関係した人以外に、会社の人とか大勢いそうだ。
でもその一人一人に「今でも好きなんだけど……」とやられると、正直キツい。
二人が素敵な男性なだけに、彼女たちの気持ちが分かるので、「今は私の彼氏なんだから、そういうのやめてください」って強く言いづらい。
そして〝彼女の座〟に胡座をかいてふんぞり返り、〝昔の女〟を邪魔者、悪者扱いするのもまたちょっと違う。
だからなるべく、私は彼らの過去には向き合いたくない。
同じように、仮に私が昔エッチした男友達が現れても、ほんっとうにもしも私に何か言ってきたとしても、そこに二人を介入させたくはない。
そういう風に、お互いを守り合えたらな、とは思う。
「分かったよ。優美に昔の事は触れさせないようにする。せっかく家族に挨拶できたのに、嫌な思いをさせるのは俺も望んでない」
「バッタリ遭遇する率は低いんじゃない?」
「まぁね。私もそんなに煩く言いたくないから、念頭に入れておいてくれたらいい、っていう程度で」
これで一旦、過去の話は終わった――ように思えた。
けれど慎也がまだ引きずる。
「さっきの話の続きだけど、文香さんと一緒にいてナンパとかされてたんだろ? その時ってどうしてた? 強引な奴とかいなかったの? 数人で囲まれたりとか……」
「いやぁ、腕出してモリッと上腕二頭筋アピールして『変な事したら玉潰すけどいい?』って真顔で脅したら、顔面蒼白になって逃げてったけど」
「「ぶわっははははははは!!」」
慎也と正樹がベッドマットをドンドン叩いて、ひいひい笑いだした。
「だって声掛けてくる男の人、皆ヒョロヒョロしてるんだもん。ナンパされて『ジム行ってる?』って聞いたら行ってるって言って、うっすいお腹見せて『細マッチョだろ?』って言われても何も興味が持てない……」
私にはある一定のライン以上、体を鍛えている人がいいという理想があった。
正直、声を掛けてくるほとんどの男性が、ヒョロッとしている。
私がちょっと腹パンしたり、ケツキックしたら再起不能になりそうで怖いぐらいだ。
勿論、何もないのにそんな暴力は働かないけど。
頼りないという意味もあるけれど、私が多少じゃれついても持ちこたえてくれる人がいい、という意味で、鍛えている人が好みだった。
その点、二人は軽々クリアである。
見た目で人の価値を決めないけれど、好みは好みで別物だ。
理想はジムデートやジョギングデートなので、夢が叶えられてまさに幸せの最中にいる。
エアロバイクやステアクライマーをしながら、たわいのないお喋りをしたり、バタフライマシンを使ってる時に背中の筋肉を褒め合いたい。
文香は「マニアック……」と言って引いてるけど、そんな私にぴったり合ったのが慎也と正樹だ。
「和人さんに今度、改めて優美を守ってくれたお礼を言わないとな」
「そうだね。またグループデートするの楽しみ」
何だかんだ、和人くんは文香と同じだけ付き合いがあるので、彼も親友と言っていい。
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