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文香&和也とお茶 編
とっても居心地良かったんだよ
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「その時に優美がなんの下心もなく声を掛けてくれて、何か……フッと気持ちが軽くなったんだよね。ぶっちゃけ、第一印象は『垢抜けてない子だな』って思ったけど、雰囲気から誠実そうだなっていうのは分かった」
「あはは! あの時はまだムチムチしてたし、ファッションセンスも壊滅的だったよね」
当時を思うと垢抜けてないと言われてもその通りなので、怒る気にもならない。
「まぁ、友達になるのに必要な項目じゃないしね。優美は私を敵視しなかったし、普通の子みたいに扱ってくれた。それが友達になろうって思った一番の要因だった。側にいると、とっても居心地良かったんだよ」
「いやいや、照れるじゃないか」
私は冗談めかして言う。
けれど、文香は真顔のまま続ける。
「私みたいなのに近付く〝友達〟ってね、金持ちとか顔がいいとか、それが目当てなの。一緒にいれば何かラッキーな事があるだろうとか、金持ちで顔のいい友達がいたら自分のステータスになるとか、そういう事しか考えない。誕生日になるとプレゼントをもらったりもしたけど、お揃いのアクセとか……こう、友達なのに独占欲を満たしてくるような感じで気持ち悪かった」
「あー……」
何となく理解し、私は頷く。
「そういうのを見透かしておざなりな態度を取ってると、結局陰口叩かれるんだよね。『春コスメ、何がオススメ?』って聞かれたから、あらゆるブランドのコスメをリサーチした上で教えるでしょ? そしたら裏じゃ『新商品、全ブランド買えるのを自慢してる』とか言われて……。知らんわってなる」
文香の闇が深いのは分かっているので、私は大人しく話を聞く。
出されたデザートは、バレンタインを意識したのか、ベリー系のフランボワーズで、ハート型になっていて可愛い。
加えて店のロゴがついたチョコレートもついていて、私と文香は一旦黙って写真を撮る。
写真撮影が終わったあと、文香は高級チョコをポイッと無造作に口の中に入れた。
そしてモゴモゴしながら話の続きをする。
「結局ある種の女って、マウントの取り合いでしか自分の価値を見いだせないんだよね。友達なのに、何で相手より優れる必要があるのか分からないけど……。とにかく学生時代の〝友達〟は皆、私の欠点を探そうとしてた。そういうのにはこりごりだったんだけど……」
口の中でチョコレートを溶かし、文香は私を見てニコッと笑う。
「優美って、私に『何が好きなの?』って聞いてくれたじゃない。あれ、嬉しかったな。それで私が〝バケ丸〟って言っても全然バカにしなかったし、引かなかった」
文香の言うバケ丸っていうのは、アニメに出てくるゆるキャラっぽいオバケのキャラクターだ。
どこにどうヒットしたのか分からないけど、彼女はバケ丸のグッズを集めてるし、何なら子供に混じって劇場版アニメも見に行ってる。
私もそれに付き合ってるけど、さすが劇場版だけあってアニメの作り込みも凄く、感動するストーリーで見る目が変わった。
『凄かったね。子供向けと思ってあなどれない』と素直に言うと、文香はとっても喜んでいた。
正直、私はその作品やバケ丸に嵌まるほどではないし、いまだ「好き」とも言い切れない。
でも親友が好きなものなら肯定したいし、喜んでくれるならグッズとかプレゼントしたいと思ってる。
「優美って私の好きなものを大切にしてくれるし、手作りでバケ丸のぬいぐるみも作ってくれたでしょ? あれ、ほんっとうに嬉しくて……。だから優美とは一生の友達になれると思った」
文香に言われ、私は「あはは」と笑う。
「喜んでくれたのは嬉しいけど、オーバーだよ。材料だって高いもんじゃないし、顔の刺繍も慣れてないからグチャグチャになっちゃったし」
そう。言葉の通り、材料は百均で揃えたフェルトと綿がメインだ。
遙か昔、中学生の家庭科で習ったシンプルな縫い方で作ったので、慣れていない事もありお世辞にも上手とは言えない仕上がりになった。
けれど文香は「ううん」と首を横に振る。
「作ってくれるっていう気持ちがプライスレスでしょ。あれって世界に一つだよ? 誰も持ってないバケ丸グッズだよ? サイコーじゃん」
「えへへ、なら良かった」
文香の好きな物をプレゼントしたいと思ったけど、デパコス類は当時の私には高かったし、どうせなら気持ちを込めた物かな……と思った。
勿論、そのマスコットの他にも、バスソルトとか精一杯お洒落な物はあげたんだけど。
「喜びのサイドチェスト」
照れ隠しに、そう言ってポーズを取ると、文香と和人くんが笑い崩れた。
「ちょ……っ、この店でやめ……」
「ラットスプレッド・フロント」
両肘を張ってむいっと背中の筋肉を強調したところで、調子に乗りすぎたのか、ブラウスの肩周りがミチッといったのでやめておいた。
「まぁ、そんな感じで私は〝本当の友達〟を見つけられたと思ってる。だから優美のダイエットや女磨きにも、知る限りの事を教えたし、自分でも勉強してアドバイスした。お陰で私も勉強になったよ」
笑って涙が滲んだのか、文香は指先で目元を拭う。
「あはは! あの時はまだムチムチしてたし、ファッションセンスも壊滅的だったよね」
当時を思うと垢抜けてないと言われてもその通りなので、怒る気にもならない。
「まぁ、友達になるのに必要な項目じゃないしね。優美は私を敵視しなかったし、普通の子みたいに扱ってくれた。それが友達になろうって思った一番の要因だった。側にいると、とっても居心地良かったんだよ」
「いやいや、照れるじゃないか」
私は冗談めかして言う。
けれど、文香は真顔のまま続ける。
「私みたいなのに近付く〝友達〟ってね、金持ちとか顔がいいとか、それが目当てなの。一緒にいれば何かラッキーな事があるだろうとか、金持ちで顔のいい友達がいたら自分のステータスになるとか、そういう事しか考えない。誕生日になるとプレゼントをもらったりもしたけど、お揃いのアクセとか……こう、友達なのに独占欲を満たしてくるような感じで気持ち悪かった」
「あー……」
何となく理解し、私は頷く。
「そういうのを見透かしておざなりな態度を取ってると、結局陰口叩かれるんだよね。『春コスメ、何がオススメ?』って聞かれたから、あらゆるブランドのコスメをリサーチした上で教えるでしょ? そしたら裏じゃ『新商品、全ブランド買えるのを自慢してる』とか言われて……。知らんわってなる」
文香の闇が深いのは分かっているので、私は大人しく話を聞く。
出されたデザートは、バレンタインを意識したのか、ベリー系のフランボワーズで、ハート型になっていて可愛い。
加えて店のロゴがついたチョコレートもついていて、私と文香は一旦黙って写真を撮る。
写真撮影が終わったあと、文香は高級チョコをポイッと無造作に口の中に入れた。
そしてモゴモゴしながら話の続きをする。
「結局ある種の女って、マウントの取り合いでしか自分の価値を見いだせないんだよね。友達なのに、何で相手より優れる必要があるのか分からないけど……。とにかく学生時代の〝友達〟は皆、私の欠点を探そうとしてた。そういうのにはこりごりだったんだけど……」
口の中でチョコレートを溶かし、文香は私を見てニコッと笑う。
「優美って、私に『何が好きなの?』って聞いてくれたじゃない。あれ、嬉しかったな。それで私が〝バケ丸〟って言っても全然バカにしなかったし、引かなかった」
文香の言うバケ丸っていうのは、アニメに出てくるゆるキャラっぽいオバケのキャラクターだ。
どこにどうヒットしたのか分からないけど、彼女はバケ丸のグッズを集めてるし、何なら子供に混じって劇場版アニメも見に行ってる。
私もそれに付き合ってるけど、さすが劇場版だけあってアニメの作り込みも凄く、感動するストーリーで見る目が変わった。
『凄かったね。子供向けと思ってあなどれない』と素直に言うと、文香はとっても喜んでいた。
正直、私はその作品やバケ丸に嵌まるほどではないし、いまだ「好き」とも言い切れない。
でも親友が好きなものなら肯定したいし、喜んでくれるならグッズとかプレゼントしたいと思ってる。
「優美って私の好きなものを大切にしてくれるし、手作りでバケ丸のぬいぐるみも作ってくれたでしょ? あれ、ほんっとうに嬉しくて……。だから優美とは一生の友達になれると思った」
文香に言われ、私は「あはは」と笑う。
「喜んでくれたのは嬉しいけど、オーバーだよ。材料だって高いもんじゃないし、顔の刺繍も慣れてないからグチャグチャになっちゃったし」
そう。言葉の通り、材料は百均で揃えたフェルトと綿がメインだ。
遙か昔、中学生の家庭科で習ったシンプルな縫い方で作ったので、慣れていない事もありお世辞にも上手とは言えない仕上がりになった。
けれど文香は「ううん」と首を横に振る。
「作ってくれるっていう気持ちがプライスレスでしょ。あれって世界に一つだよ? 誰も持ってないバケ丸グッズだよ? サイコーじゃん」
「えへへ、なら良かった」
文香の好きな物をプレゼントしたいと思ったけど、デパコス類は当時の私には高かったし、どうせなら気持ちを込めた物かな……と思った。
勿論、そのマスコットの他にも、バスソルトとか精一杯お洒落な物はあげたんだけど。
「喜びのサイドチェスト」
照れ隠しに、そう言ってポーズを取ると、文香と和人くんが笑い崩れた。
「ちょ……っ、この店でやめ……」
「ラットスプレッド・フロント」
両肘を張ってむいっと背中の筋肉を強調したところで、調子に乗りすぎたのか、ブラウスの肩周りがミチッといったのでやめておいた。
「まぁ、そんな感じで私は〝本当の友達〟を見つけられたと思ってる。だから優美のダイエットや女磨きにも、知る限りの事を教えたし、自分でも勉強してアドバイスした。お陰で私も勉強になったよ」
笑って涙が滲んだのか、文香は指先で目元を拭う。
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