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箱根クリスマス旅行 編

箱根へ

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「やっさしいねぇ」

「ホント、甘々だわ」

 二人からすれば、弁護士に任せて叩きのめして……ってできるんだろう。

 ……でも。

「勿論、これ以上何かするなら、私も許せないからプロに頼みたい。けど、話し合って気持ちは伝えられたし、理解してくれたと思ってる。すでに反省している人をさらに叩くのは、やり過ぎだよ」

「でもさぁ。今日会った奴らだけじゃないんだよ? 不特定多数の、顔も名前も知らない奴が優美ちゃんの事を好き放題に言ってる」

「けど掲示板って肥だめみたいな所でしょ? 私はわざわざ、汚いものを見るつもりはない。精神的に不健康だし時間が勿体ない。なーんにも生産的じゃない。勿論、訴える証拠にするなら見るかもだけど、まだ何も起こってないよね?」

「事件が起こってからじゃ遅いんだよ」

 慎也が少しムッとして言う。

「心配ありがとう。でも生きていく限り、足元の影や闇が発生するのは仕方ないよ。二人が私を好きでいてくれるからこそ、私は周りから羨望される。その輝きの分、影はとても濃くなる。世間から見れば、二人みたいなハイスペックイケメンに愛される私は、嫉妬されて当然なんだと思う」

 私だって、分かっていない訳じゃない。

「でもね、気にしたら負け。気にして陰口を叩く人と同じ舞台に立った時点で、こっちの負けなの。だから私は決して関わらない。有り余った時間を、他人の悪口を言って過ごす人の言葉を聞いてあげないし、見ない。私は二人を幸せにするのに忙しいし、仕事にトレーニングに、最高の友達と楽しく過ごすので手一杯なの」

 きっぱり言い切ったからか、彼らは諦めたように溜め息をついた。

「じゃあせめて、妥協案を採用して」

 正樹に言われ、私は頷く。
 私の意見ばかり聞いてもらうのは不平等だ。
 今回の被害者は私であっても、彼らにも怒る権利はある。

「雇った人に不穏な書き込みがないか確認してもらう。見つけ次第訴える。それに今日会った人たちが関わっていた場合、次は容赦しない」

「分かった、そうする」

 素直に頷くと、慎也が小指を差しだしてきた。

「指切り」

 可愛い〝約束〟に笑い、私は慎也と指切りげんまんをした。

「ねぇ、お腹空いた!」

 話題を変えると、「そうだね」と正樹が私にフードメニューを見せてくれる。

 そのあと、別の話題で楽しみながら夕食をとったのだった。



**



 クリスマスを含めた連休に、三人で箱根に向かった。

 どうやら二人は高級旅館を予約してくれたみたいだ。泊まりがけだとエッチするのが前提みたいで恥ずかしいけど、クリスマスならのっておかないと。

 二泊三日のうち、初めの一日はゆっくり温泉とご馳走を楽しみ、二日目は付近を散策。
 二日目夜から三日目のチェックアウトまで、のんびり……という予定らしい。

「楽しみだな、優美」

「うん」

 例により、車は運転手さんが運転している。
 彼の分も部屋を押さえているのだから、やはりお金持ちはやる事が凄い。

 今回は私が会社に土産物を買っていく事も考慮し、七人乗りの車を出していた。

 元麻布のマンションの他にも一軒家や別の物件を持っているらしく、ガレージには高級車が沢山あるそうだ。
 そこに行くのは週末とからしいけど、私と出会ってからは戻っていないみたいだ。

 今乗っている車で、後部座席の真ん中に私、左右に慎也と正樹が座り、両側から手を握っている状況だ。
 こうなるとスマホもいじれないし飲み物も飲めないので、やや不便だ。

 けれど二人は「少しでも長く触っていたい」という理由で、私の手を握っていた。

 途中、横浜に寄って中華街でランチをとり、観光をしてからのんびり旅館に向かった。
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