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浜崎&五十嵐トラブル 編
一緒に筋トレしよ!
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「大きな声、汚い言葉で威嚇するのは、自分が弱いのを隠しているから。そうしないと相手に言う事を聞かせられないって、暴露してるようなものだよ。他人の粗探しばっかりするのは、自分だけが不幸じゃないんだって思いたいから。人肌を求めるのは、不安で寂しいから。全部、自分の弱さを必死に隠して、認めてあげられていないからだよ」
私の言葉を聞いて、五十嵐さんが固まった。
ごめんね。正論言って。
自分を愛するなんて、キラキラした人が言う言葉っぽい。
でも、結局すべてはそこに尽きると思っている。
自分大好き! 自信満々! にならなくていい。
でも自分の事が大っ嫌いなら、世の中も楽しめないだろう。
私も自分が嫌だった時期はあったけれど、少しずつ内面も変えられた。
今も自分の駄目なところが目につくけど、ある程度の妥協はできて「悪くないんじゃない?」って思えてる。
だから、それを五十嵐さんにも伝えたい。
彼女はとても苦しそうだから。
「傷ついて自暴自棄になるのは分かるけど、あなたが自分を大切にしないと、いざという時に誰があなたを大事にするの?」
彼女は表情を歪ませたまま、唇を引き結んだ。
「どれだけ狡くても弱くてもいいから、『お疲れ様』って自分を労って、認めてあげなよ」
五十嵐さんの表情はさらに歪み、泣きそうになるのを堪えているように見えた。
「私はあなたの過去を知らない。どれだけ苦しんだのか分かってあげられない。でも想像はできる。……今まで頑張ったね」
私を睨みながら、五十嵐さんは目からボロッと大粒の涙を流した。
「コンプレックスばっかりなのに、自己肯定感上げて自分を好きになれなんて言っても、急には無理だと思う。でも一日仕事を頑張ったら自分を褒めるとか、ダンベル十回できたら『天才じゃん!』って言うとか、ハードル低くして自分を褒めるの、オススメするよ」
そうやって、私は少しずつ変われたから。
「それでもまだ気が晴れないなら、一緒に筋トレしよ!」
私は彼女に向かって、ぐっとサムズアップしてみせた。
同時に、正樹と慎也が「ぶふぅっ!」と噴きだした。
浜崎くんも拭きだしたのを俯いてごまかし、五十嵐さんの友人二名もクスクス笑ってる。
「まじめに筋トレしなよ。体動かして汗を掻いたらスッキリするし、体も温まって健康にいい。スタイル維持にも繋がるし、一石何鳥もあるよ。あと、肌荒れに悩んでそうだから、まずはよく寝たほうがいいと思う。眠れないなら、病院に行くのもいいんじゃないかな。そしてネットはほどほどに、常に情報入れると頭が疲れちゃう。瞑想とかもオススメ」
前向きに解決策を述べていくと、五十嵐さんが大きな溜め息をついた。
「…………アホらし」
そして立ち上がり、帰る支度をする。
「五十嵐さん。ここに来てもらった、当初の目的を忘れてもらったら困るんだが」
「正樹、もういいよ」
なおも謝罪させようとする彼を私は制する。
五十嵐さんは無言でコートを着てマフラーを巻いた。
そして私に向き直り、ペコッと頭を下げる。
「会社にクレームを入れたのは、やりすぎた。謝る。あんたをバカにしたのも、脳天気で幸せそうだからムカついたのは認める。……あとはもう、放っておいて。もうここにいる誰にも関わらないから」
そう言って彼女は個室を出ていった。
彼女の友人は、閉じた引き戸を見て溜め息をつく。
「……なんか、思っていたのと全然違ってびっくりした……。とにかく……ごめんなさい」
「私も、すみませんでした」
「どういたしまして」
私はすんなりと二人の謝罪を受け入れる。
「俺から一言」
それまで黙っていた慎也が手を上げ、女性二人に忠告する。
「自覚していると思うけど、誰かを批判する時、何も考えずに話を合わせる前に、自分でよく考えるのを勧める。人間関係の場合、一方が正しいなんてあり得ない。『誰かが言っているから自分も信じる』は、考える事を放棄した愚かな選択だ」
それに正樹も頷く。
「まったく同意だ。大人なら自分で考えて、行動にも言動にも責任を取れ」
女性二人はシュンとして謝る。
「……はい」
「申し訳ありませんでした」
確かに女性同士だと、話を合わせないとハブられるかもしれないとか、面倒臭い共感力が必要とされる事もある。
この二人も五十嵐さんに同意を求められて、友達だから共感してしまったんだろう。
私の言葉を聞いて、五十嵐さんが固まった。
ごめんね。正論言って。
自分を愛するなんて、キラキラした人が言う言葉っぽい。
でも、結局すべてはそこに尽きると思っている。
自分大好き! 自信満々! にならなくていい。
でも自分の事が大っ嫌いなら、世の中も楽しめないだろう。
私も自分が嫌だった時期はあったけれど、少しずつ内面も変えられた。
今も自分の駄目なところが目につくけど、ある程度の妥協はできて「悪くないんじゃない?」って思えてる。
だから、それを五十嵐さんにも伝えたい。
彼女はとても苦しそうだから。
「傷ついて自暴自棄になるのは分かるけど、あなたが自分を大切にしないと、いざという時に誰があなたを大事にするの?」
彼女は表情を歪ませたまま、唇を引き結んだ。
「どれだけ狡くても弱くてもいいから、『お疲れ様』って自分を労って、認めてあげなよ」
五十嵐さんの表情はさらに歪み、泣きそうになるのを堪えているように見えた。
「私はあなたの過去を知らない。どれだけ苦しんだのか分かってあげられない。でも想像はできる。……今まで頑張ったね」
私を睨みながら、五十嵐さんは目からボロッと大粒の涙を流した。
「コンプレックスばっかりなのに、自己肯定感上げて自分を好きになれなんて言っても、急には無理だと思う。でも一日仕事を頑張ったら自分を褒めるとか、ダンベル十回できたら『天才じゃん!』って言うとか、ハードル低くして自分を褒めるの、オススメするよ」
そうやって、私は少しずつ変われたから。
「それでもまだ気が晴れないなら、一緒に筋トレしよ!」
私は彼女に向かって、ぐっとサムズアップしてみせた。
同時に、正樹と慎也が「ぶふぅっ!」と噴きだした。
浜崎くんも拭きだしたのを俯いてごまかし、五十嵐さんの友人二名もクスクス笑ってる。
「まじめに筋トレしなよ。体動かして汗を掻いたらスッキリするし、体も温まって健康にいい。スタイル維持にも繋がるし、一石何鳥もあるよ。あと、肌荒れに悩んでそうだから、まずはよく寝たほうがいいと思う。眠れないなら、病院に行くのもいいんじゃないかな。そしてネットはほどほどに、常に情報入れると頭が疲れちゃう。瞑想とかもオススメ」
前向きに解決策を述べていくと、五十嵐さんが大きな溜め息をついた。
「…………アホらし」
そして立ち上がり、帰る支度をする。
「五十嵐さん。ここに来てもらった、当初の目的を忘れてもらったら困るんだが」
「正樹、もういいよ」
なおも謝罪させようとする彼を私は制する。
五十嵐さんは無言でコートを着てマフラーを巻いた。
そして私に向き直り、ペコッと頭を下げる。
「会社にクレームを入れたのは、やりすぎた。謝る。あんたをバカにしたのも、脳天気で幸せそうだからムカついたのは認める。……あとはもう、放っておいて。もうここにいる誰にも関わらないから」
そう言って彼女は個室を出ていった。
彼女の友人は、閉じた引き戸を見て溜め息をつく。
「……なんか、思っていたのと全然違ってびっくりした……。とにかく……ごめんなさい」
「私も、すみませんでした」
「どういたしまして」
私はすんなりと二人の謝罪を受け入れる。
「俺から一言」
それまで黙っていた慎也が手を上げ、女性二人に忠告する。
「自覚していると思うけど、誰かを批判する時、何も考えずに話を合わせる前に、自分でよく考えるのを勧める。人間関係の場合、一方が正しいなんてあり得ない。『誰かが言っているから自分も信じる』は、考える事を放棄した愚かな選択だ」
それに正樹も頷く。
「まったく同意だ。大人なら自分で考えて、行動にも言動にも責任を取れ」
女性二人はシュンとして謝る。
「……はい」
「申し訳ありませんでした」
確かに女性同士だと、話を合わせないとハブられるかもしれないとか、面倒臭い共感力が必要とされる事もある。
この二人も五十嵐さんに同意を求められて、友達だから共感してしまったんだろう。
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