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浜崎&五十嵐トラブル 編

俺、知ってるんですよねー

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「それで話ってなんだよ」

 目の前にいるイライラした浜崎を見て、俺はにっこり笑う。

 今、俺たちはE&Eフーズから一駅離れた場所にある、個室レストランにいた。
 浜崎が退社するのを見計らって「ちょっと話せませんか?」と声を掛け、ここに連れ込んだ。

「男二人で個室フレンチとか、ぞっとしねーんだけど」

「俺だって嫌ですよ。ただ、シェフに敬意を払って、話は食べ終わってからにしましょう」

 上質な国産牛フィレ肉も、浜崎が向かいに座ってだと、何を食べてるんだか分からないぐらい味気ない。
 そのあとに出たプレ・デセール、デセールも綺麗に食べ、コーヒーと小菓子が出されたタイミングで、俺は切り出した。

「婚約者さん、どんな人ですか?」

「え? ……まぁ、可愛い子だよ?」

「出会いはどんな感じでした?」

 奴は俺が結婚を羨ましがっていて、出会い方を教えてもらいたがっていると思ったのか、ニヤリと笑った。

「それがなー、運命だったんだよ。美奈代……あ、俺の彼女、美奈代って言うんだけど、美奈代とぶつかってさ。その途端にスカートがめくれてパンチラして、まー、それで悩殺されたっていったら単純だけど、可愛かったしお茶に誘ったらめちゃタイプで!」

「凄い偶然だったんですね」

「そーなんだよ。それで胸もでかいし可愛いだろ? エッチの相性も良くてヤりまくってたら、『生理きてないから、できちゃったかも……』なんて言われて。結婚するしかないかなー? って」

 ノリで結婚決めた感じっぽいな。

 祖父の遺産が入るから、当面は経済的に余裕があると思っているんだろうか。
 その遺産というのも、大した額ではないのに。

 自分が五十嵐の罠に嵌まったとも知らないで、気楽なもんだな。
 生理が遅れてるっていうのも、不特定多数の男と乱交しまくってたからだろ。
 托卵されてるかもしれないのに、よくもまあこんな脳天気でいられるな。

「彼女さん、浮気してたらどう思います?」

「え? ……ちょ、やめろよー。俺、これから結婚すんのに」

 興を削がれた顔をする浜崎に、俺はコーヒーを飲んでから言葉を続ける。

「俺、知ってるんですよねー」

「……え? 何を?」

 こちらを不安げに見る浜崎に、俺はバッグから出した封筒から、写真数枚をテーブルの上に置いた。

「…………っ」

〝それ〟を見て浜崎の目が驚愕に見開かれる。

 写真は、五十嵐が何人もの男を相手にして、アヘ顔をしている物だ。

「…………マジか……」

「マジみたいですね。俺の知っている情報だと、美奈代さん、浜崎さんと付き合う前から、ずっと〝遊び友達〟と仲良くしているみたいですよ。先日も俺の友人が、歌舞伎町で美奈代さんを見たって言ってましたが……」

 五十嵐美奈代がホスト通いしているのは、事実だ。
 どうでもいい男に股を開いて承認欲求を満たし、自分をチヤホヤしてくれる顔のいいホストに心を捧げ、生活は祖父の遺産が入る浜崎に頼る。

 ちょっと調べさせたら、すぐに分かる。

 いやあ、実に強かだ。
 女って怖いなー。

 心の中で棒読みで言いながら、俺は小さいマカロンを口に放り込む。

「しん……っじらんねぇ……。あのクソビッチ! 欲しいっていうから婚約指輪買ったのに……!」

 あー、もう金かけちゃったのか。

「あとこっち」

 俺はもう一枚、封筒を出して写真をテーブルにのせる。

「……今度は何だよ……」

 浜崎はうんざりして写真を手にし、ブレザー姿の女子学生を見て眉を寄せる。

「何? このブス」
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