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浜崎&五十嵐トラブル 編
一回でも俺に甘えてみせた事あったかよ
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「……関係ないでしょ。浜崎くんはこれから可愛い彼女と結婚するんだから、私の事なんて気にしなくて良くない?」
乱暴に彼の腕を振り払ったが、彼はさらに距離をつめてくる。
「お前の事は滅多に見ない美人だって認めてるんだよ。胸だってでかいし、ちょっと筋肉質だけどスタイルだっていい」
「外見だけの評価、どーも」
「内面の良さを俺が知らないのは、お前が俺の前で可愛い所を見せなかったからだろ? 一回でも俺に甘えてみせた事あったかよ」
言われて、浜崎くんと付き合っていた時、いつも「いい自分を見せないと」と思って本音で付き合えていなかったと思いだす。
図星だったからこそ、その言葉がやけに心に刺さった。
「…………私たち、もう終わってるんだよ。こんな話、蒸し返すほうがどうかしてる」
立ち上がろうとすると、手を引っ張られて座らされる。
「お前さえ可愛げのある態度だったら、俺だってもっときちんと向き合って付き合ってやったのに」
「だから何で、いちいち上から目線なの? 私は浜崎くんに『よりを戻してほしい』なんて頼んでない。今は今で、お互い別の道を進んでいるんだから、それでいいでしょ?」
私の言う事は間違えていない。
そのはずなのに、浜崎くんの言葉がグルグルと頭の中を回る。
『一回でも俺に甘えてみせた事あったかよ』
当時の私は、仕事と同じようにサバサバと〝強い女〟モードで浜崎くんに接していた。
彼が甘えてきた時も「よしよし」とペット扱いだったし、私が弱みを見せるなんて事はなかった。
私は悪くない。
そう思いたいけれど、改めて考えると確かに私にも非があった。
「お前の事を本気で好きだったのに。もっと腹を見せ合えれば、長続きしたかもしれないのに」
「もしもの話をしても仕方がないでしょう? 終わったの、私たちは」
「他の男になら甘えてるのかよ」
責められて、私はどうにもならず大きな溜め息をつく。
「私と浜崎くんの〝線〟は交じり合わなかったの。婚約者がいるんでしょ? お願いだからもうやめて」
少し離れた場所に座っている同僚たちは、私たちの様子を見て何かヒソヒソ言っている。
あぁ、もう。みっともないからホントやだ。
「なぁ。俺、資産家の爺さんが死んで遺産が転がり込んできたんだよ。だから優美が望むなら彼女に手切れ金渡して、もう一度お前と……」
ふざっけんな!
キレた私が立ち上がった瞬間、慎也の声がした。
「折原さん!」
毒気を抜かれて彼のほうを見ると、慎也がこちらに向かってジョッキを掲げた。
「最後ですから、飲み比べしません?」
慎也の提案を聞いて、男性たちがワッと沸いた。
女性社員たちは呆れて、「やめときなよ、もー」と笑っている。
何はともあれ、慎也が助けに入ってくれたのは確かだ。
「よーし! 受けて立つ! 私、大人げないから、有終の美を飾らせてあげないよ!」
私はわざと豪快に笑い、フロアにいるスタッフに「大ジョッキ二つお願いします!」と声を上げた。
誰かが「大ジョッキかよ!」と突っ込みを入れ、また笑いが起こる。
私はそのまま慎也の近くに移動した。
チラッと浜崎くんを振り向くと、つまらなさそうな顔でワインを飲んでいる。
あーあ。今後、彼と二人きりにならないよう、注意しないと。
面倒臭い。
そう思いながら、私は他の人たちと話し、運ばれてきた大ジョッキを手に慎也と勝負をしたのだった。
帰りは慎也と別行動で、同じ家に帰らなければいけない。
慎也はすぐにタクシーを拾って帰っていったけど、私は節約のために交通機関だ。
彼らと同棲し始めてから、「何に使ってもいいからね」と黒いカードと、やはり何に使ってもいいらしい新しい口座に、ゼロが沢山並んだお金をもらった。
でも怖くて手を出していない。
衣食住に関する事はすべて二人がそろえてくれるので、私の出費はごく些細な額になった。
それでも金銭感覚がセレブになった訳でもなく、今まで通りできるだけ節約して暮らしている。
駅に向かって歩いている時、後ろから「ゆーみ」と声を掛けられ、ドッと体重を掛けるように浜崎くんが肩を組んできた。
乱暴に彼の腕を振り払ったが、彼はさらに距離をつめてくる。
「お前の事は滅多に見ない美人だって認めてるんだよ。胸だってでかいし、ちょっと筋肉質だけどスタイルだっていい」
「外見だけの評価、どーも」
「内面の良さを俺が知らないのは、お前が俺の前で可愛い所を見せなかったからだろ? 一回でも俺に甘えてみせた事あったかよ」
言われて、浜崎くんと付き合っていた時、いつも「いい自分を見せないと」と思って本音で付き合えていなかったと思いだす。
図星だったからこそ、その言葉がやけに心に刺さった。
「…………私たち、もう終わってるんだよ。こんな話、蒸し返すほうがどうかしてる」
立ち上がろうとすると、手を引っ張られて座らされる。
「お前さえ可愛げのある態度だったら、俺だってもっときちんと向き合って付き合ってやったのに」
「だから何で、いちいち上から目線なの? 私は浜崎くんに『よりを戻してほしい』なんて頼んでない。今は今で、お互い別の道を進んでいるんだから、それでいいでしょ?」
私の言う事は間違えていない。
そのはずなのに、浜崎くんの言葉がグルグルと頭の中を回る。
『一回でも俺に甘えてみせた事あったかよ』
当時の私は、仕事と同じようにサバサバと〝強い女〟モードで浜崎くんに接していた。
彼が甘えてきた時も「よしよし」とペット扱いだったし、私が弱みを見せるなんて事はなかった。
私は悪くない。
そう思いたいけれど、改めて考えると確かに私にも非があった。
「お前の事を本気で好きだったのに。もっと腹を見せ合えれば、長続きしたかもしれないのに」
「もしもの話をしても仕方がないでしょう? 終わったの、私たちは」
「他の男になら甘えてるのかよ」
責められて、私はどうにもならず大きな溜め息をつく。
「私と浜崎くんの〝線〟は交じり合わなかったの。婚約者がいるんでしょ? お願いだからもうやめて」
少し離れた場所に座っている同僚たちは、私たちの様子を見て何かヒソヒソ言っている。
あぁ、もう。みっともないからホントやだ。
「なぁ。俺、資産家の爺さんが死んで遺産が転がり込んできたんだよ。だから優美が望むなら彼女に手切れ金渡して、もう一度お前と……」
ふざっけんな!
キレた私が立ち上がった瞬間、慎也の声がした。
「折原さん!」
毒気を抜かれて彼のほうを見ると、慎也がこちらに向かってジョッキを掲げた。
「最後ですから、飲み比べしません?」
慎也の提案を聞いて、男性たちがワッと沸いた。
女性社員たちは呆れて、「やめときなよ、もー」と笑っている。
何はともあれ、慎也が助けに入ってくれたのは確かだ。
「よーし! 受けて立つ! 私、大人げないから、有終の美を飾らせてあげないよ!」
私はわざと豪快に笑い、フロアにいるスタッフに「大ジョッキ二つお願いします!」と声を上げた。
誰かが「大ジョッキかよ!」と突っ込みを入れ、また笑いが起こる。
私はそのまま慎也の近くに移動した。
チラッと浜崎くんを振り向くと、つまらなさそうな顔でワインを飲んでいる。
あーあ。今後、彼と二人きりにならないよう、注意しないと。
面倒臭い。
そう思いながら、私は他の人たちと話し、運ばれてきた大ジョッキを手に慎也と勝負をしたのだった。
帰りは慎也と別行動で、同じ家に帰らなければいけない。
慎也はすぐにタクシーを拾って帰っていったけど、私は節約のために交通機関だ。
彼らと同棲し始めてから、「何に使ってもいいからね」と黒いカードと、やはり何に使ってもいいらしい新しい口座に、ゼロが沢山並んだお金をもらった。
でも怖くて手を出していない。
衣食住に関する事はすべて二人がそろえてくれるので、私の出費はごく些細な額になった。
それでも金銭感覚がセレブになった訳でもなく、今まで通りできるだけ節約して暮らしている。
駅に向かって歩いている時、後ろから「ゆーみ」と声を掛けられ、ドッと体重を掛けるように浜崎くんが肩を組んできた。
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