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ハプバー~同居開始 編

もっと深く知りたいって思ったんだ

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「習うより慣れろって言うし、やってみないと分からないんじゃない?」

「それはそうですけど……」

 まったく、正樹はどこまでも前向きだな。
 本人は「中身が残念」と言っているけれど、彼の生い立ちを知ると沢山悩んだ挙げ句、開き直っているように見える。

 やがて慎也が「できたよ」と言って、トマトソースのペンネを運んできた。

 うう、美味しそう……。

 トマトソースの赤色が食欲をそそるし、上にとろけたチーズとバジルが掛かっているのも堪らない。

「起きれる?」

 慎也は起き上がろうとする私を支え、背もたれに体を預けさせる。

「とりあえず、持ちやすいように小分けにしようか。おかわりの時は言って」

 一旦テーブルに大きめの皿に盛ったペンネを置き、あとはスプーンとフォークを片手で器用に扱って小皿に盛ってくれる。

「はいどうぞ、召し上がれ」

「い、頂きます……」

 見られたまま食事をするのは恥ずかしいけれど、お腹が空いているので頂く事にした。
 フォークでペンネを何本か刺し、口に入れる。
 途端にトマトソースの風味がジュワッと口内に広がり、一気に食欲が爆発した。

 気が付けば私はフォークを一生懸命動かし、ペンネを次々に口に運んでいく。
 小皿に盛られた分をペロッと食べると、二人がニコニコして見ているのにやっと気付いた。

「ごっ、……ごちそ――」

 恥ずかしくなってフィニッシュを言おうとしたが、被せるように言われる。

「まだ食べられるよね?」

 ニコニコした慎也は私の手から小皿を取り、問答無用で二杯目を盛った。

「慎也の飯、んまいでしょ。美味い物は美味いで、素直に食べなって」

 軽やかに笑った正樹は、「コーヒー淹れてこよーっと」と立ち上がった。

「優美ちゃん、コナコーヒー好き?」

「あ、はい」

 コナコーヒーはチョコレートやマカダミア、バニラなどの甘い香りがするので、スイーツを食べていなくても食べた気持ちになれるので大好きだ。

 ただし、お値段が張るので滅多に飲めないけれど。

 大人しくおかわりのペンネを食べていると、隣に座った慎也が話しかけてくる。

「正樹、副社長っていう肩書きに似合わず軽いだろ」

「そ、そうだね……」

 彼と話していると「明るくて脳天気だな」という印象を抱いてしまう。
 でも隠されたストレスを知ると、わざと明るく振る舞っているのも無理ないかと思う。

「風呂に入っている間、正樹と何を話してた?」

「んー、家庭事情とか、彼が3Pを好むようになった理由とか、慎也が〝そういう〟女性を探していた理由……とか」

 素直に打ち明けると、彼は溜め息をついて髪を掻き上げる。

「朝起きたら説明しようと思ってたんだ。けど、あの状況では聞き入れてくれなさそうだったし、バスタイムを挟んで丁度良かったのかな」

 結局、お風呂でもセックスしてしまったので、良かったのかどうかは置いておき……。

「慎也は私が3Pを受け入れてくれそうな感じだったから、声を掛けた? 近付こうとした?」

 一番気になっている事を尋ねると、彼は「そこは勘違いしないでほしいんだけど」とソファの上で胡座をかく。

「……どうせ正樹の事だから、俺が優美の事を前から好きだったとかもバラしたんだろ?」

 溜め息交じりに言う彼の顔をチラッと盗み見すると、どこか照れた表情をしている。

「ん……。大体は」

 肯定すると、彼は額をコリコリと掻く。

「俺が優美を好きになったのは、本当に純粋な気持ちからだ。昨日も言ったから被るけど、最初はカッコイイと思ったから。それから美人だと思ったし、仕事ができて尊敬できる。ずっと見てると、とても気が利く人だって分かってさらに魅力を感じた」

「……ありがと」

「ずっと見てるから、優美が〝強い女性〟って言われているのを表面上喜んでいながら、中身は本当の自分を見てほしいって渇望しているのも、何となく察した。その〝弱さ〟が垣間見えたから、近付いてもっと深く知りたいって思ったんだ」

 話している途中、私が全然慎也になびかないと、正樹に言われたのを思いだす。
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