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ハプバー~同居開始 編
バカみたい
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「一回しかないなんて、そりゃあないでしょ。俺と付き合ってくれないの?」
「そっ、それは……。前向きに検討するけど……。でも、正樹、……さん、が混じるなんて、この部屋に一緒に住んでいるなら……」
「正樹でいいよ。あ、そうだ。名刺渡そうか」
ペントハウスはメゾネットになっていて、二階に上がる階段は二箇所あった。
覚えている限り、慎也と入ったベッドは、部屋に入って左側の階段から上がった場所にあった。
今のベッドは右手に壁がある。
二階部分はコの字型のフロアがある中心が吹き抜けになっていて、首を巡らせると反対側に恐らく最初に使っただろうベッドがあった。
「……ベッド、移動したの?」
「そう。俺のベッドはグチャグチャになったからね。シーツは取り替えたけど、また優美を移動させるより、このまま正樹のベッドで寝たほうがいいと思って」
「……お気遣い、ありがとう……」
二階はつや消しの黒い床になっていて、角にあるソファセットや照明はシンプルながらモダンなデザインだ。
それぞれのベッドの中間には、ブティックのように服が綺麗に陳列されたコーナーがある。
体型が似ているから、服を共有しているんだろうか。
戻って来た正樹は、私に「はい」と名刺を手渡した。
「ご丁寧にありがとうございます。私も名刺を……」
そう言ってバッグを探そうとするが、「いいよ」と正樹に言われる。
「弟んトコの営業部の折原優美ちゃん。前から話は聞いてたから知ってるよ」
「弟!?」
素っ頓狂な声を上げた私は、慌てて名刺を見る。
――え?
そこには『久賀城ホールディングス 代表取締役副社長 COO』と書かれてある。
はぁ……?
え……?
久賀城ホールディングスと言えば、ホテルや旅館、温泉旅館に旅行会社を手がけている大企業だ。
ぼんやりとした顔で正樹を見ると、彼は悪戯が成功したという顔で無邪気に笑う。
「仕事しやすいように都内にあちこち家を持っていてね。ここはメインで使っている家の一つなんだ。他にも国内海外、別荘や家は持っているけど」
とんでもない世界に、私はただ呆然とするしかない。
「……慎也……は……、苗字……」
「慎也は親父の後妻の子。僕の母さんは子供の頃に亡くなったんだ」
「あ……、それは……」
「全然気にしてないから、優美ちゃんが気遣う事はないの」
子供に言い含めるように言って、正樹は私の頭をポンポンと撫でてくる。
その左手の薬指に、指輪の痕があるのを見つけてしまった。
思わず食い入るように見ていたからか、正樹が笑う。
「あはっ、気付いた? 結婚してたんだ」
「……してた?」
「うん、してた。離婚したけどね」
軽く言われ、どう反応したらいいのか分からなくなる。
「それで……弟と同居?」
「まぁ、色々便利だし。服もサイズが近いから共有できる」
今度は後ろから私を抱き締めて、慎也が答えてきた。
その〝共有〟という言葉が心の奥にズンと響き、急に落ち込んでしまった。
「…………女性も二人で〝共有〟して遊んでるの?」
――バカみたい。
こんなハイスペックイケメンが、私みたいなのを相手にする訳がない。
ハプバーにも日常的に行っていて、イケメンで女性にモテるからセックスの相手に困っていない。
都内に沢山家があるから、どこに女性を連れ込んでもバレずにうまくやっているんだろう。
すぐに着替えを手配する手際の良さも納得できた。
きっと遊ぶだけ遊んで、別れる時は手切れ金を払ってスッパリ縁を切って、お嬢様とか有名人の奥さんをもらうんだ。
〝理解〟して気持ちが冷めた私は、上手に張り巡らされた罠に掛かった自分が情けなくて堪らなくなった。
結局、こじらせお一人様はこうなるんだ。
傷付いているのは私なのに、急に声のトーンを低くした慎也が脅すように言ってくる。
「……そうだって言ったらどうなんだよ。俺と付き合うのを〝前向きに検討〟してたんじゃないのか? さっき言ったばかりの事を反故にするのか?」
急に慎也の声のトーンが低くなった。
ギクリとして後ろを振り向くと、慎也が底冷えした目で私を見つめている。
怒らせた――のか分からない。
でも、私だって遊ばれるって分かって付き合うほど暇じゃない。
「そっ、それは……。前向きに検討するけど……。でも、正樹、……さん、が混じるなんて、この部屋に一緒に住んでいるなら……」
「正樹でいいよ。あ、そうだ。名刺渡そうか」
ペントハウスはメゾネットになっていて、二階に上がる階段は二箇所あった。
覚えている限り、慎也と入ったベッドは、部屋に入って左側の階段から上がった場所にあった。
今のベッドは右手に壁がある。
二階部分はコの字型のフロアがある中心が吹き抜けになっていて、首を巡らせると反対側に恐らく最初に使っただろうベッドがあった。
「……ベッド、移動したの?」
「そう。俺のベッドはグチャグチャになったからね。シーツは取り替えたけど、また優美を移動させるより、このまま正樹のベッドで寝たほうがいいと思って」
「……お気遣い、ありがとう……」
二階はつや消しの黒い床になっていて、角にあるソファセットや照明はシンプルながらモダンなデザインだ。
それぞれのベッドの中間には、ブティックのように服が綺麗に陳列されたコーナーがある。
体型が似ているから、服を共有しているんだろうか。
戻って来た正樹は、私に「はい」と名刺を手渡した。
「ご丁寧にありがとうございます。私も名刺を……」
そう言ってバッグを探そうとするが、「いいよ」と正樹に言われる。
「弟んトコの営業部の折原優美ちゃん。前から話は聞いてたから知ってるよ」
「弟!?」
素っ頓狂な声を上げた私は、慌てて名刺を見る。
――え?
そこには『久賀城ホールディングス 代表取締役副社長 COO』と書かれてある。
はぁ……?
え……?
久賀城ホールディングスと言えば、ホテルや旅館、温泉旅館に旅行会社を手がけている大企業だ。
ぼんやりとした顔で正樹を見ると、彼は悪戯が成功したという顔で無邪気に笑う。
「仕事しやすいように都内にあちこち家を持っていてね。ここはメインで使っている家の一つなんだ。他にも国内海外、別荘や家は持っているけど」
とんでもない世界に、私はただ呆然とするしかない。
「……慎也……は……、苗字……」
「慎也は親父の後妻の子。僕の母さんは子供の頃に亡くなったんだ」
「あ……、それは……」
「全然気にしてないから、優美ちゃんが気遣う事はないの」
子供に言い含めるように言って、正樹は私の頭をポンポンと撫でてくる。
その左手の薬指に、指輪の痕があるのを見つけてしまった。
思わず食い入るように見ていたからか、正樹が笑う。
「あはっ、気付いた? 結婚してたんだ」
「……してた?」
「うん、してた。離婚したけどね」
軽く言われ、どう反応したらいいのか分からなくなる。
「それで……弟と同居?」
「まぁ、色々便利だし。服もサイズが近いから共有できる」
今度は後ろから私を抱き締めて、慎也が答えてきた。
その〝共有〟という言葉が心の奥にズンと響き、急に落ち込んでしまった。
「…………女性も二人で〝共有〟して遊んでるの?」
――バカみたい。
こんなハイスペックイケメンが、私みたいなのを相手にする訳がない。
ハプバーにも日常的に行っていて、イケメンで女性にモテるからセックスの相手に困っていない。
都内に沢山家があるから、どこに女性を連れ込んでもバレずにうまくやっているんだろう。
すぐに着替えを手配する手際の良さも納得できた。
きっと遊ぶだけ遊んで、別れる時は手切れ金を払ってスッパリ縁を切って、お嬢様とか有名人の奥さんをもらうんだ。
〝理解〟して気持ちが冷めた私は、上手に張り巡らされた罠に掛かった自分が情けなくて堪らなくなった。
結局、こじらせお一人様はこうなるんだ。
傷付いているのは私なのに、急に声のトーンを低くした慎也が脅すように言ってくる。
「……そうだって言ったらどうなんだよ。俺と付き合うのを〝前向きに検討〟してたんじゃないのか? さっき言ったばかりの事を反故にするのか?」
急に慎也の声のトーンが低くなった。
ギクリとして後ろを振り向くと、慎也が底冷えした目で私を見つめている。
怒らせた――のか分からない。
でも、私だって遊ばれるって分かって付き合うほど暇じゃない。
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