上 下
8 / 539
ハプバー~同居開始 編

セックスって凄いです

しおりを挟む
「どーすんのよ、それ」

 私の目の前で、友人の文香ふみかが呆れきった顔をしている。

 半眼を通り越して白目になりかけている。
 いや、もう白い目で見てくれていい。

 私はそれだけの恥ずかしい事をしてしまった。




 ハプバーに行ったのが土曜日で、今日は日曜日だ。

 街はこれからハロウィンを迎えようとしていて、紫とオレンジに染まっている。
 私たちは女性に人気のある個室カフェに来て、ハロウィン限定のパフェをつついていた訳だけれど……。

「っていうか、偶然後輩に会ってシた挙げ句、ろくに話さず帰っちゃったって、やり逃げでね?」

「……デスヨネ……」

 もう、何も言い訳できない。

 彼だって楽しみに来たのに、あんな帰り方をされては、自分がまずい事をしたと不安になっただろう。
 性的な事があった場合、男性は冤罪になりやすい。
 ろくに説明もできず逃げるように、被害者のように去ってしまい、もしかしたら彼をとんでもなく不安にさせてしまったかもしれない。

「会社で彼に会ったら、こっそり謝っといたら?」

「……デスヨネ……。ソウシマス……」

「あんたってホント、バリキャリみたいな顔しといて、中身は抜けてるよね。そういうところが私は気に入ってるけど、二十八なんだからもうちょっとホントにあの……、頑張れよ?」

 文香は投資家、兼、美容インフルエンサーをしている。
 ハプバーには、社会経験のために彼氏と一緒に行ってみたらしい。
 会員になった上で紹介が必要なので、私は彼女に紹介してもらったのだけれど……。

「……見た目はS女でも、中身は高校生の私が、ハプバーに行こうとしたのが間違いでした……」

「反省もいいけど、ヤッちゃって好きになった?」

 艶のある綺麗なロングヘアに睫毛バシバシの文香は、まごう事なき美女だ。

 私も第三者からそういうタイプに見られているらしいので、周囲からは〝似た者同士の親友〟と言われている。
 といっても、文香が中身も堂々としているのに対し、私は半ば見かけ倒し。

 文香は知的好奇心を満たすために何でも体験するし、頭が良くてとても要領がいい。
 彼女はお嬢様育ちで、私と同じ大学出身だ。
 家業の会社に勤める気はなく、美容医療系で働いていたけれど、学生の頃から続けていた投資額が大台に乗ったのもあり、FIREして投資家となった。
 現在は幼馴染みの彼氏と結婚前提で付き合っていて、経済的な余裕がある。
 美容やコスメが好きなのもあって、趣味で化粧品の使用感などをSNSで発信していたら、今ではインフルエンサーだ。
 だから美容やお金情報に関してはとてもお世話になっている。

 彼女の彼氏は商社勤めのエリートで、結婚秒読みだ。
 それなのにハプバーに行っていいのかという話だけれど、彼女の場合は取材目的で、彼氏も同行した上での事だ。

 私のように本気で挑んでいなかったのである。

「……セックスって凄いです」

 深く溜め息をつきながら降参すると、文香が手を伸ばして「よしよし」と私の頭を撫でてきた。

「ホントにあんたは拗らせてるよね……。浜崎だっけ? ろくでもない奴にヤリマンなんて噂を流されたから、ムキになって筋肉に走っちゃって……」

「筋肉は裏切らない」

「いや、そうだけどさ。現実を見なよ」

 何かあるとすぐ筋肉に訴えようとするのは、私の悪い癖だ。
 昨日も家に帰ったあと、何も考えずにプロテインを作って思いきりシェイクし、ゴッゴッと飲んだあとに腹筋背筋スクワット、マウンテンクライマーに、ありとあらゆる室内向けのメニューに励んだ。

 そのあとはお風呂に入って寝た! ……のだけれど。

 翌日になって文香に報告する予定になっていたので、予約していたこのカフェでランチを取り、デザートをつついている流れになる。

「しかし、会社の後輩はちょっとやらかした感じでない? 口止めとかは大丈夫なの?」

「多分。向こうから積極的に誘ってきた感じだったし、お互い言いふらされるとまずいのは分かっていただろうし」

「それならいいんだけど……」

 頷いて、文香はパフェの上に乗っているパンプキンクッキーを囓る。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~

けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。 秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。 グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。 初恋こじらせオフィスラブ

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...