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第2章
第12話 銀の街 後半 ⑤
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「み~つけた~」
ノエルが目から銀の水を垂らし、不気味に笑う。
いつの間にか戦っている内に白い炎が銀の水に触れてしまったようだ。
「変わって・・・変わって・・・」
ノエルが一歩歩いた時だった。
ノエルの腕に針のようなモノが刺さり、そのまま倒れる。
麻酔を使っている。もうジルが追い付いたと思いきや、アキセが走ってきた。
「逃げるぞ!」
アキセに腕を掴まれる。
あの麻酔はアキセが打ったのだろう。
ジルと同じようなことを。でも今怒るよりも逃げる方が先。
「行かないでよ・・・」
ノエルはふらつきながら、血走った目で目覚める。
麻酔で眠らされたにしても、薬が切れるのは早すぎる。
「あのロリコン司祭。どんな麻酔を使っているんだ?」
薬の抗体ができたということか。
「行かないでよ・・・私を殺してよ!」
銀の水が襲ってくる。
瞬時に避け、アキセの『なんでも遮断マント』で一緒にくるみ姿を消す。
「どこに行ったの!どこなのおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ノエルは、無造作に銀の水をまき散らす。周囲の花壇や木を溶かしていく。
「とりあえず、中庭から逃げるぞ!」
今はノエルが逃げるのか先決。
アキセに連れられ、教会の中へと走る。
その時だった。
目の前で銀の壁ができる。
「何!?」
別の道を探そうにも、教会に繋がる道はすべて銀の水の壁になる。
これでは逃げきれない。
すぐに木の影に隠れる。
「まさか、このまま隠れ住むつもり?」
「消耗切れまで待つにはいかないか」
「あの部屋で聞いているなら知っているでしょ。『光』が浴びている限り、切れないってことを」
今夜は快晴で月は照らしている。『光』の消耗切れはない。
転送もできない。跳べば、邪魔される。あの銀の水から逃げきれる気がない。
もうノエルを止めるしかない。彼女を止めるには。
アキセの手を見て思いつく。
「作戦がある」
「なんだ?」
「あの子から宝石心臓(セラフィム)の一つを奪って」
その一言でアキセもさすがに驚いている。
賭けに近いが、アキセの奪う魔力でなら。
「は!?作戦ってなんだと思えば・・・」
「だったら、転送も飛行もできずにあの銀の水から逃げきれるなら今すぐに言え!」
「確かに思いつかないけど、それだと俺が一番苦労するじゃないか。それにできたとしてもまとめて奪うことになるんだぞ」
「それはないと思う。拒絶反応が起きているなら。結合はしていないはず」
以前にそうだった。
「それにまだ契約期間中でしょ。それともあなたの力はそれだけの実力でしかないわけ」
「こんな時に煽るなよ。いくら抗体があるとはいえ、さすがに浄化されるかもしれないんだぞ」
「散々私から『光』を奪ってるくせに」
「それにお前の首輪を取るのにも結構集中したんだぞ」
「コルンの発明品とかでなんとかできないの」
「あのな・・・」
「お願い・・・」
こんな奴にすがりたくないが、今はアキセに頼るしかない。
「は・・・」
アキセは溜息を吐く。
「一応あるけど、死んでも俺の責任にするなよ」
アキセは呆れたように言う。
「そこまで責める気はないわよ。あんたは奪えばいいだけ。あとは私がやる」
「やるとしても『光』を抑え付けないとさすがに無理だ。だからこれを使う」
アキセの手には複雑な文字で書いてある長方形の紙だった。
「この札で一瞬だけ『光』を封じて、その隙に俺が聖女に近づく」
「札だけではいかないの」
こんな強力な者があるなら。
「時間制限付きなんだ。強力なんだか、1分しか持たない」
「コルンって適当に作ってない・・・」
「その場の思い付きだけなんだ。この札を張るにもあの聖女の動きを抑えないと」
「それなら・・・」
マントから出る。
「おい!」
アキセの声を気にすることなく、ノエルの前に立つ。
「み~つけた」
ノエルは目から銀の水を流しながら嬉しそうに言う。
銀の水に囲まれる。逃がさないつもりだ。
「私を・・・殺して・・・」
目が死にたがっている。
ノエルは手を伸ばす。救いを求めるように。
「あなたを死なせない」
ジャンヌは言う。
「え・・・」
その言葉にノエルは目を見開く。
その時、ノエルの額にあの札が付いている。
アキセの指輪の力でノエルの額に召喚したのだろう。
囲まれていた銀の水も壁として支えることなく、ただの水たまりのようになった。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ノエルが叫ぶ。
力を強制に押さえているためかノエルが苦しいんでいる。
ノエルが叫んでも、地面に散っている銀の水が全く反応しない。傷口から銀の水が途切れた。確実に力を封じている。
ノエルの背後からアキセが姿を現した。
アキセはノエルの肩に掴み、背中に触る。
奪う魔力が発動する。
アキセの顔が険しくなった。宝石心臓(セラフィム)は、最古の魔女でも怪我を負わせるほどの浄化を持っている。ノエルの力を封じているとはいえ、それでも苦戦するのだろう。
その時、アキセが手を大きく後ろへ払う。
それは光り輝く宝石。ノエルの中に入っていたもう一つの宝石心臓(セラフィム)だった。宝石心臓(セラフィム)は地面に触れた途端に割れて消えてしまった。
アキセがふらついている。アキセの右手が火傷のように負っている。
ノエルが倒れる。
ジャンヌが受け止めようとしたが、ノエルが持ちこたえる。
ノエルに張り付いた札が消えた。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ノエルの体の傷口が開き、銀の水を波のようにまき散らす。
白い炎で体を包み、銀の水を防ぐ。
そのままノエルに抱きつく。
「落ち着いて、もう大丈夫。これで『光』を操れる。あなたの力なんだから」
白い炎でノエルを包む。
「暖かい・・・」
傷口から銀の血が治まっていく。
ノエルはゆっくり目を閉じる。
「カリーナ・・・」
ノエルはジャンヌの胸の中で静かに眠った。
ノエルが目から銀の水を垂らし、不気味に笑う。
いつの間にか戦っている内に白い炎が銀の水に触れてしまったようだ。
「変わって・・・変わって・・・」
ノエルが一歩歩いた時だった。
ノエルの腕に針のようなモノが刺さり、そのまま倒れる。
麻酔を使っている。もうジルが追い付いたと思いきや、アキセが走ってきた。
「逃げるぞ!」
アキセに腕を掴まれる。
あの麻酔はアキセが打ったのだろう。
ジルと同じようなことを。でも今怒るよりも逃げる方が先。
「行かないでよ・・・」
ノエルはふらつきながら、血走った目で目覚める。
麻酔で眠らされたにしても、薬が切れるのは早すぎる。
「あのロリコン司祭。どんな麻酔を使っているんだ?」
薬の抗体ができたということか。
「行かないでよ・・・私を殺してよ!」
銀の水が襲ってくる。
瞬時に避け、アキセの『なんでも遮断マント』で一緒にくるみ姿を消す。
「どこに行ったの!どこなのおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ノエルは、無造作に銀の水をまき散らす。周囲の花壇や木を溶かしていく。
「とりあえず、中庭から逃げるぞ!」
今はノエルが逃げるのか先決。
アキセに連れられ、教会の中へと走る。
その時だった。
目の前で銀の壁ができる。
「何!?」
別の道を探そうにも、教会に繋がる道はすべて銀の水の壁になる。
これでは逃げきれない。
すぐに木の影に隠れる。
「まさか、このまま隠れ住むつもり?」
「消耗切れまで待つにはいかないか」
「あの部屋で聞いているなら知っているでしょ。『光』が浴びている限り、切れないってことを」
今夜は快晴で月は照らしている。『光』の消耗切れはない。
転送もできない。跳べば、邪魔される。あの銀の水から逃げきれる気がない。
もうノエルを止めるしかない。彼女を止めるには。
アキセの手を見て思いつく。
「作戦がある」
「なんだ?」
「あの子から宝石心臓(セラフィム)の一つを奪って」
その一言でアキセもさすがに驚いている。
賭けに近いが、アキセの奪う魔力でなら。
「は!?作戦ってなんだと思えば・・・」
「だったら、転送も飛行もできずにあの銀の水から逃げきれるなら今すぐに言え!」
「確かに思いつかないけど、それだと俺が一番苦労するじゃないか。それにできたとしてもまとめて奪うことになるんだぞ」
「それはないと思う。拒絶反応が起きているなら。結合はしていないはず」
以前にそうだった。
「それにまだ契約期間中でしょ。それともあなたの力はそれだけの実力でしかないわけ」
「こんな時に煽るなよ。いくら抗体があるとはいえ、さすがに浄化されるかもしれないんだぞ」
「散々私から『光』を奪ってるくせに」
「それにお前の首輪を取るのにも結構集中したんだぞ」
「コルンの発明品とかでなんとかできないの」
「あのな・・・」
「お願い・・・」
こんな奴にすがりたくないが、今はアキセに頼るしかない。
「は・・・」
アキセは溜息を吐く。
「一応あるけど、死んでも俺の責任にするなよ」
アキセは呆れたように言う。
「そこまで責める気はないわよ。あんたは奪えばいいだけ。あとは私がやる」
「やるとしても『光』を抑え付けないとさすがに無理だ。だからこれを使う」
アキセの手には複雑な文字で書いてある長方形の紙だった。
「この札で一瞬だけ『光』を封じて、その隙に俺が聖女に近づく」
「札だけではいかないの」
こんな強力な者があるなら。
「時間制限付きなんだ。強力なんだか、1分しか持たない」
「コルンって適当に作ってない・・・」
「その場の思い付きだけなんだ。この札を張るにもあの聖女の動きを抑えないと」
「それなら・・・」
マントから出る。
「おい!」
アキセの声を気にすることなく、ノエルの前に立つ。
「み~つけた」
ノエルは目から銀の水を流しながら嬉しそうに言う。
銀の水に囲まれる。逃がさないつもりだ。
「私を・・・殺して・・・」
目が死にたがっている。
ノエルは手を伸ばす。救いを求めるように。
「あなたを死なせない」
ジャンヌは言う。
「え・・・」
その言葉にノエルは目を見開く。
その時、ノエルの額にあの札が付いている。
アキセの指輪の力でノエルの額に召喚したのだろう。
囲まれていた銀の水も壁として支えることなく、ただの水たまりのようになった。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ノエルが叫ぶ。
力を強制に押さえているためかノエルが苦しいんでいる。
ノエルが叫んでも、地面に散っている銀の水が全く反応しない。傷口から銀の水が途切れた。確実に力を封じている。
ノエルの背後からアキセが姿を現した。
アキセはノエルの肩に掴み、背中に触る。
奪う魔力が発動する。
アキセの顔が険しくなった。宝石心臓(セラフィム)は、最古の魔女でも怪我を負わせるほどの浄化を持っている。ノエルの力を封じているとはいえ、それでも苦戦するのだろう。
その時、アキセが手を大きく後ろへ払う。
それは光り輝く宝石。ノエルの中に入っていたもう一つの宝石心臓(セラフィム)だった。宝石心臓(セラフィム)は地面に触れた途端に割れて消えてしまった。
アキセがふらついている。アキセの右手が火傷のように負っている。
ノエルが倒れる。
ジャンヌが受け止めようとしたが、ノエルが持ちこたえる。
ノエルに張り付いた札が消えた。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ノエルの体の傷口が開き、銀の水を波のようにまき散らす。
白い炎で体を包み、銀の水を防ぐ。
そのままノエルに抱きつく。
「落ち着いて、もう大丈夫。これで『光』を操れる。あなたの力なんだから」
白い炎でノエルを包む。
「暖かい・・・」
傷口から銀の血が治まっていく。
ノエルはゆっくり目を閉じる。
「カリーナ・・・」
ノエルはジャンヌの胸の中で静かに眠った。
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